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「ドワイトは大変だよね。学校でそんな雰囲気じゃ、貴方と仲良くなりたくっても仲間外れが怖くってどうにもならなそう。貴方も素直じゃないから、貴方とはより分厚い壁が出来ちゃって……」
「まあ、な……」
私が彼の境遇をそうぞして口にしてみると、ドワイトは否定をせずに頷いた。
「貴方は、もしかして友達が欲しくって旅に出たとか?」
「……そう、かもな。大人たちは俺のこと評価してくれるけれど、なんだか大人の言葉は全部社交辞令ないんじゃないかとか思ったりして、どうにも疑う心が働いちゃって。でも、同年代だったらどうかなとかって、考えたんだ。でも、俺って人とどう接すればいいか分からないからさ。出たとこ勝負でお前達に話しかけて……まー、偉そうな態度だったよな。でも、そんな俺でも、偶然二回目にあった時は色々と会話もしてくれて……
実は三回目からは、匂いと音でポケモンに探知させてお前達を探していかにも偶然出会ったふうに話しかけてたんだ。それで、まぁ、どうしてそんなことをしたのかって言うと……」
「あんた本当に素直じゃないね……というか、回りくどいよ。友達が欲しくって、私に友達になって欲しいとかそういうことでしょ、どうせ?」
なんだかじれったくって、ドワイトが求めているであろうことを先んじて言う。ドワイトも、大きな声で口にされると非常に恥ずかしいのか、顔を俯かせながら頷いて、顔を上げようとはしなかった。
「いやさぁ、貴方のいないところで、私とデボラの二人でさんざん言ってたのよ。『あいつ友達いないんだろうねー』って」
「お前ら酷いな……事実だけれどさー」
「でも、根は悪い子じゃないんだろうなとは思っていたんだ。ポケモンに懐かれてるってのが何よりの証拠でしょ、特にタブンネなんて人の気持ちに敏感なポケモンが懐いているんだし、変わり者だけれど話せばわかる奴だって思ってた。
けれど、なんだ。あんたこうして旅に同行するってすり寄ったらたった一日で自分の気持ちを暴露するとはなぁ……君はよほど友達が欲しかったと見える」
私は、俯いた彼の顔を見てからかうように笑う。
「うるさいなぁ。俺だって、普通の皆みたいな事に憧れることだってあるんだよぉ! それで、そこまで分かってるならだ。俺と友達になってくれるのかよ?」
「あのさぁ……その、そういう言い方は止めようよ? そんな上から目線じゃなくって、ほら。素直に、下手に出る勇気も貴方には必要だと思うよ」
私は苦笑しつつドワイトにもう一度やり直すことを促す。するとドワイトも恥ずかしそうに、困ったように頭を掻いて仕切り直す。
「俺と、友達になって欲しい」
「うん、いいよ。一緒に旅を楽しもう」
どうやらドワイトはものすごく照れているようで。私が彼の頼みを了承したというのに、顔を背けてしまっている。
「あんた本当に友達がいなかったんだね……」
「っていうか、同年代の女性と話したのもかなり久しぶりで。っていうか、俺の態度が悪くなってきたら威勢どころか同性まで全然話しかけてくれなくなっちまったな」
「これは重症ねぇ。そりゃ、初対面の時の態度だったら、友達も出来ないわけだ」
まったく、言葉通り重症で、どこから手を付けていいものやら分からない。いいさ、ゆっくりとやって行けば、きっともっと人当たりも良くなるでしょ。