2
ところで、リンドシティにいる間、私達は安宿に泊まるのだが、初日互いに別々の宿に泊まったものの、二日目からは同室である。お金を節約するためだといって、料金は相手の奢りだったのだが、その日は全然眠れない。
彼の手持ちはマフォクシー、レントラー、ミルタンク、チョロネコ、ブイゼル、コジョフーなど陸上グループが多いのが特徴だ。彼曰くモフモフが好きなのだとかで、毎回どんな旅でも陸上グループの雌で統一しているらしい。マフォクシーとレントラーは長年の相棒で、旅の護衛であるという。そしてその他の四匹は今回リテンを旅するにあたって、事前にゲットしてきたポケモンで、この旅が終わったら売り払われるのだという。
彼は、旅をしてその際の体験記を本にすることと、ゲットしたポケモンを売ることで生計を立てているそうで、故郷には家もあるのだが、ずっと空き家ではすぐに劣化してしまうので、手入れをしてもらうことを条件に親戚に住まわせているそうだ。
グループなんてものはどうでもいいが、レベルも高いため、襲われでもしたら抵抗することは難しいだろう。幸いにも、ここは安宿。防音性は悪く、大声を出せば隣にも聞こえる。
声を出したら殺すだとか、ナイフやポケモンの爪をつきつけられたら不味いかもしれないが、叫び声を上げれば何とかなるかもしれない。まぁ、実際は……緊張しながらずっと寝返りばっか打っていた挙句に、隣部屋のバカップルの話し声がいつまでも途切れず、それのせいで安眠妨害されてしまったのだけれど。
シイさんは普通にさっさと眠っていた。家族以外の男の人と寝るのは、ウィル君以外では初めてなので緊張して眠れなかったのだが、見事にそれは空振りになってしまったというわけだ。
私の心配は一体何だったのだろうか? まぁ、襲ってくるような人だったらルカリオであるジェネラルならば容易に4それに気付いてくれるだろうから……ジェネラルが警戒しないということはそういう事なのだろう。
翌日、さわやかな目覚めとなったのはシイだけであった。旅慣れていることもあってか、彼は眠りたいときにすぐに眠れるくせがついているらしい。そして、驚くことに彼は全く私に性的な意味での興味を持っていなかった。私の身の上話はよく聞いてくれるし、父親との関係を心配してくれたりなど、精神的な面については程よい距離感だといってもいいのだけれど。
でも、私の事を女性として魅力に思うことは露ほどもないのだろうか、眠る時に私の方を見もしない。最初は、気遣っているのかもしれないと思ったが、一度だけ彼の前でトップスの着替えをして上半身をブラ一丁の大胆な格好になってみるが、彼は私を一瞥すると『男の前でそういう格好はやめたほうがいいよ』と、抑揚のない声で注意して、その後こちらの様子をうかがうこともなく日本のニュースを読みふけってた。
彼がそういう人だったというのは、女性として有難い事なんだけれど、それはそれで何となく女として魅力がないようで、私は少しだけショックだった。なので、ちゃんと着替えて聞いてみた。
「
シイさんは、女性に興味がないのですか?」
「
あるよ。でも、私にとっては女性っていうのは……ううん、やっぱり止めておこう」
シイさんは言いかけて口をつぐむ。
「
なんですか? 私は気になります」
気になってさらに踏み込んで聞こうとすると……
「子供は知らないほうがいいよ」
さらに突っ込んで聞こうとすれば、『子供は知らないほうがいい』と、彼は私達の言葉で言う。一体、何を知らないほうがいいと言うのか、もしや私より幼い子供でないと興奮しないのか、もしくは私が子供すぎるのか。
いや、それならば、君より年上が好みなんだ、といっておけば特に当たり障りもない。ただ、想像するにろくでもない理由であり、そして彼はろくでもないということを理解しているのだろう。うーん、変態的な趣味だからとても言えない、とかなら私がターゲットにならないわけだからいいけれど……ジェネラルが警戒しないということは、危険な理由ではないということなのだろう。