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ジョセフさんへの黙とうを終え、俺達はその後もリンドシティで旅を満喫した。二人組推奨の観覧車であるリンドアイでは美しい夜景を見下ろしながら二人で見つめ合い、その時はデボラが俺に密着しての耳を舐めるという大胆な行動をしてくれた。『シャドウの真似だよ、舐められるの好きなんでしょ?』と微笑む彼女の顔をまともに見れないほど恥ずかしかったけれど、それで興奮して勃ってしまっただなんて、とても口には出来ない。
ただでさえ、雌どころか雄のポケモンにやられても感じてしまうことを、大好きなデボラにやられてしまえば、興奮が収まらなくなるのは当たり前だ。
その後話したことは恐らく当たり障りのない事だったと思うけれど、覚えていなかった。ただ、腕をデボラの胸に当てられていて、二人きりとはいえここまで大胆になって大丈夫なのだろうかと、大丈夫じゃない頭でそんなことを考えていた。
そのころ、アンジェラはといえば……
◇
「押忍! そこのお嬢さん、一人でありますか!!! 私は武者修行の最中の空手家、マキシムと申すものです!」
彼女は彼女で、リンドアイに一緒に乗る相手を探していた。この観覧車、リンドアイは一人で乗っても二人で乗っても同じ値段。カップルならば割り勘だったり奢りだったり、とりあえず一人でリンドアイに乗るのは負け組の証拠である。
一人でここに訪れた場合は、ポケモンバトルで負けたほうがお金を払うというのが恒例だ。それで、デボラとランパート君が二人でいちゃついている間、私は地上でボーっとしているのも辛いから、一緒に乗る相手を探していた時の事。
「あら、一人よ。お兄さん、乗りたいのかしら?」
私が捕まえたのは、空手王のお兄さんであった。打撃に特化し、引き締まった筋肉は一切の無駄がなく美しい。というか、こんなにクソ寒いというのに、道着一枚というまるで夏かと錯覚するほど薄着なのは驚嘆に値する。暑いを通り越して熱い男なのかしら?
「本音を言うと乗りたくない……でありますが、高いところが怖いせいで山籠もりが出来ない、情けなくて不甲斐ない自分と決別するため、高いところを恐れない誰かと一緒に夜景を見下ろしたいのであります! これも武者修行の一環であります!」
「うん、いいよ。あなたのその美しい腕と胸の筋肉に惚れたから、ぜひ。あ、申し遅れたけれど……私の名前はアンジェラ。友達と思い出作りの旅の途中なんです」
はきはきと答える空手王に微笑みかけ、私はモンスターボールに手を掛けた。
「それじゃあ、バトルと行きましょうか。タフガイ、貴方の出番よ」
「光栄であります! いざ、行かん! バウンド!」
さぁ、どんな格闘タイプのポケモンが出て来るのかと期待して、私は空気を読んでローブシンを繰り出す。だけれど、相手の空手王が繰り出したポケモンはなんとソーナンス。やられた、私のローブシンは積み技を持っていない! これじゃこのソーナンスに負けちゃう。
「え、えーと……ドレインパンチ!」
「カウンターだ、バウンド!!!」
以下略……
当然、私が負けた。いやね、こういう一対一のバトルでソーナンスはずるいと思うの。