3:アンジェラとの二人旅、後編
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 結局、今回のジムはどちらも勝利で終わる。私は主にトワイライトの炎にお世話になり、素早さとレベルの高さで圧倒する。今のところはまだごり押しが効くレベルだが、トワイライト一頭では少々苦戦したので、これ以降はきちんと戦略も練らないといけないだろう。アンジェラはタフガイに岩タイプの技をきちんと覚えさせていたのが効いたようで、虫タイプの攻撃が今一つなのも相まって、何とかダメージを与えられた。続くラーラも、炎の技で圧倒し、新入りのマリル、モスボーも記念程度に参加して戦いに勝利する。
 私達はバッジを貰えたのだが、ポケモンセンターに戻ってポケモンの治療をしに行くと、先ほどジムで出会ったリッシュが暗い表情で俯いているのを見て、私達はそそくさと眼を逸らすしか出来なかった。バッジの数が違うとはいえ、ジムリーダーに勝った私達の顔を見せて、何か睨み返されるだけでも嫌だった。なのに……
「ちょっとそこの二人……話、いいかな?」
 何で私達は話しかけられてしまうのやら? 面倒くさい
「な、なんですか?」
「いや、ちょっとね。さっきジム戦で会った二人だよね、どうかな、私とバトルしない?」
 リッシュとかいう女性に話しかけられた内容がこれである。普通に考えれば、バッジ四つめに挑戦しに来た私達と、バッジ七つめに挑戦しに来たリッシュでは私達が負けるのは明白だ。いや、シャドウやラルを出せば余裕だろうけれど、そういうポケモンを持っていなかった場合は負けてみすみすお金を渡す羽目になるだろう。
 けれど、なんというかこのなりふり構わない様子、どうも嫌な感じだ。ドワイトに似たような感じで他駆られたことはあったけれど、大人になっても同じ事をするというのはちょっと大人げないような気がしてならない。
 なんというか、面倒な奴に絡まれちゃったなぁ……どうにかできないだろうか?
「よっす、アンジェラとデボラ。そっちの奴はなんだ、知り合いか?」
 そんなことを考えていたら、なぜか都合よくドワイトが居るのだ。同じジムを目指している以上、こうして出会うのはある程度仕方のないところもあるのかもしれないけれど。でも、今回は丁度いい。
「ねぇ、ドワイト。今日はジムに挑戦してきたの?」
 私が尋ねると、ドワイトは首を横に振って否定する。
「いや、まだだぜ。俺、今日この街についたばっかりなんだ。俺歩くの遅いもんでさ、ゆっくり来たんだけれど、お前らはもうジムに挑戦したのか?」
「そうだよ、私もアンジェラも、今はバッジ四つ。そうなるとドワイトは今二つかぁ」
「へへ、明日には三つになるし、すぐに追いつくさ。ところで、こっちの女は……」
 ドワイトはそう言って、リッシュの事を観察する。
「えっと、今こちらのお二方にバトルを申し込んだところです」
「でも、ちょっと今ウチの子と一緒にジム戦の反省会をやろうと思っていて……だからバトルはちょっとね……」
 リッシュのバトルの申し出を私はそう言って断る。
「そうそう、やっぱり、買っても負けてもきちんと反省しないといけないしね」
「ほー。いい心がけじゃねえか」
 アンジェラの言葉に、ドワイトは嬉しそうに声を上げる。
「そうなると、そっちのお姉さんは戦えないってことになるけれど、俺で良ければ遊んでやってもいいぜ?」
「本当? じゃ、じゃあさ……賞金は……」
 バッジ二つの相手が戦う気になったとあって、リッシュは少し興奮している。私の見たてじゃ、リッシュが勝てる可能性はよっぽどの隠し玉でもない限り、万に一つもなさそうだ。
「賞金は要らねえよ、無理する必要はないから。まー、俺は賞金欲しいなら別に一万でも二万でも構わないけれど……」
「わかった、やりましょ」
 賞金額を聞いて、リッシュは俄然やる気を出したようで、興奮した様子だった。ただ、結果が見えている私達は、少し悪い事をしただろうかと思いつつも、ジムの職員の話を思いだすと、少しくらい強いショックを与えたっていいだろうと考えた。


Ring ( 2016/09/13(火) 23:00 )