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とにもかくにも、先に来ていたリッシュという女性の戦闘が始まる。三対三のシングルバトル、ポケモンの交換はチャレンジャーのみに認められ、ジムリーダーは交換不可といういつものバトルである。
まず、リッシュの一番手はムーランド。ふむ、コリー当たりの出身だろうか? それに対して繰り出されたポケモンはイワパレス。ふむ、虫タイプは炎や飛行に対して弱点を持つが、それを補う岩タイプとの複合タイプのポケモン。その上、高い耐久力で耐えてチャンスを伺い、殻を破るで一気に攻めるもよし、急所を隠してひたすら耐久にこだわるもよし。まぎれもなく強力なポケモンである。
「ジャック、すなあらし」
ムーランドはまず最初に砂嵐を繰り出す。なるほど、すなかきの特性なのだろう、これで彼は素早く動けるようになるが……それはイワパレスの特防を上げてしまうことも意味している。ライブキャスターでデータを見ると、ムーランドは特殊はあまり強くないポケモンで、物理主体だから問題と思うが……
何より厄介なのは、イワパレスが岩タイプだという事。ムーランドが得意とするノーマルタイプの技では効果が今一つ。ムーランドはノーマル技の他に、その他炎の牙や氷の牙などのサブウェポンもあるけれど、どれも決め手にかける。そうこうしているうちに、殻を破ったイワパレスに、ムーランドが『とっておき』で攻撃。すさまじい音がしたが、残念ながら効果はいまひとつである。
対するイワパレスの攻撃だけれど、特にひねりもなくシザークロス。だが、殻を破ったその攻撃の凄まじさたるや、筆舌に尽くしがたく一発でムーランドは倒れてしまう。
「くっ……ならばいけ、バット!」
次に繰り出されたのはエンブオー。イワパレスとの相性は悪くない……が、残念ながら今はすなあらし。彼のポテンシャルは十分に発揮できまい。
結局、エンブオーは岩雪崩の一撃で運悪く怯んでしまい、そのまま追撃によって倒れてしまう。最後の頼みの綱のファイアローは、ブレイブバードでイワパレスを倒したが、続く二番手のテッカニンに翻弄され、剣の舞を積まれた挙句にオッカの実を持ったハッサムにバトンタッチされ(技による交換はノーカンだとか)バレットパンチに顎を打ち抜かれて倒れてしまった。それで試合は終了、ジムリーダーの勝利である。
「ダメだな、君は全然ダメだ。前回からまるで成長していない」
勝負を終えた後のヘチマの物言いは非常にとげとげしく、きつい言い方だ。隣には先ほどケーキをよそってくれたスタッフが居るので、あの酷い態度の原因を思わず聞いてみる。
「あの、なんというかヘチマさんの態度……いくらなんでもひどすぎじゃないですかね? っていうか、貴方も態度もひどかったですよね? あの女性、何かしたんですか? このジム、さすがに印象が悪いですよ?」
「だよねー、このジムなんか感じが悪い」
あそこまで露骨に態度が悪いと、私もアンジェラも流石に気分が悪い。私達の気分まで害している事に気付いたのか、スタッフは気まずそうな顔で頭を掻いてため息をつく。