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と、いうわけで私達はメインディッシュに入る。アブソルであるシャドウにはブーピッグの内臓炙り焼き、フィラの実ソース仕立てを頼むことにして、次の皿が届くまで私達はおしゃべりをしながら待ち続けた。
メインディッシュの一皿めはサメハダーをガーリックとバジルでムニエルにしたものだ。サメハダーの切り身に塩コショウと小麦粉をまぶして、バターとニンニクで炒める。その後、オムスターソースをキノコや数種のハーブと一緒に炒めたソースを掛けられたものである。切り身はナイフを入れれば抵抗なくほぐれていき、数種のハーブと、オムスターソースとマッシュルーム、ブナシメジ、パラセクトのアレの香りで、サメハダーの臭みは上手く消されている。口に含めばジューシーな肉汁があふれて幸せが口中に広がって行く。全く厭味ったらしい味は感じないあたり、料理人の味付けセンスは的確だ。
何より特筆すべきはオーブンの火加減だろう。焼き過ぎても焼かな過ぎても台無しになってしまう繊細な焼き加減を腹の中でうまく調節して、まるでよ余熱が通る時間まで計算しているかのように客に出すというのは、よほど手慣れていないと出来る事ではあるまい。肉汁の豊かさが、ロトムの努力を物語っているようである。
ブロッコリー、カリフラワー、オレンの実など、色鮮やかな野菜も添えられ、見た目にも華やかで食欲をそそる。
メインディッシュにふさわしい味わい深さに、ドワイトもアンジェラも大満足だ。
料理を運んできてくれたギャルソン曰く、『本当はお酒と一緒にお出ししたかったのですが……大人になったらまた来てくださいね』とのこと。この料理に合うお酒はどんな味なのだろうか、想像が膨らむ。
それを食べている間に、シャドウのための食事も出される。最初こそシャドウは警戒してくんくんと匂いを嗅いでいたものの、私が一口とって食べると安心したのか一気にがっつき始めた。可愛い奴め。
ポケモンは美味しいものは味わうなんて面倒なことはせず、がっついて食べる。普段とは比べ物にならないくらいの食事のスピードで、よほどおいしかったのだろうあっという間にぺろりと平らげていた。満足げにキュウと鳴き声を上げるところも可愛らしく、頑張ってもらっただけのご褒美には十分だろう。
食事を終えたらお休みタイムなのか、ボールを構えると自分から入って行った。
魚料理を終えると、次に出て来るのは養殖アマカジのソルベ。アマカジの骨や眼球、臭みのある大腸や直腸などを取り、血抜きをしたのちにそれ以外の内臓や筋肉を氷で冷やした塩水で洗って、ペースト状にしたものに、ライムとレモンの皮を混ぜ込んでシャーベット状にしたものである。皮に含まれる苦みや渋み、酸味が、上手すっきりとした甘さを引き立てており、口の中がすっきりとリセットされて次の肉料理に臨む準備が出来るというものだ。
養殖と聞くとなんだか天然物よりも下のような印象だが、アマカジについては天然物よりも養殖の方がよっぽど味がよく、また食中毒リスクが非常に低くなるそうで、今ではよっぽど高級品である。その中でも最高クラスの育成環境で育ったものが、こうして一流レストランの食材にされるのだとか。
ソルベを食べ終えて、次に出るのは肉料理。メブキジカの肉をブーピッグのベーコンを塩とワイン、カシスやローレルなどの果物やハーブと一緒に一晩漬けこんだ後、メブキジカの肉をベーコンで巻いてオーブンで焼き、ワインなどの液体はそのまま煮詰めてソースにしたものだ。
焼き上げられたメブキシカの肉は、切り分けると中がまだ赤く、血の滴るようなレアな焼き加減。新鮮なメブキジカ肉の味を、劣化させることなく存分に楽しむことが出来る。ワインとカシスと塩コショウのソースで味付けられたメブキジカ肉は臭みがしっかり抜かれていて非常に後味がいい。その秘訣はメブキジカ自身の角に生えたハーブを刻んで振りかけられていることで、その味の相性の良さには感心する。粗挽きのの胡椒を振りかければ、その刺激的な味が上手くアクセントとなって肉のうまみを最大限まで引き立ててくれる。見え隠れするローズマリーの上品な香りも称賛ものだ。
傍らに添えられたマッシュポテトやニンジンのグラッセと相性もよく、もう満腹も近いというのにナイフとフォークが止らない。結局、勢いは食べきるまで収まることがなく、肉のうまみを存分に堪能して私達はメインディッシュの二皿を食べ終えた。