2:アンジェラとの二人旅
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 そうして、空き地に移動してお互いポケモンを繰り出した。相手のポケモンは……ガバイト。 相性は良く無いが、問題なく倒せるだろう。どちらも砂嵐で輝くポケモンだが、相手はどうやらサメ肌の特性の様子。ゴツゴツメットをつけているからよくわかる。
「……何だよそのポケモン!」
「いや、育て屋さんから育ててもらったポケモンだけれど……いま六一レベルくらい」
「なんだってんだよもー! なんだよそれー! 育て屋に育ててもらうとか、俺は親父に頼らなかったって言うのに、贅沢な奴らだなー……旅のポケモンくらい自分で育てろよ!」
「いや、貴方みたいに半ば無理やり勝負挑んでくる人もいるしさー。女二人旅は物騒だから、強いポケモンを一匹くらい持っていたほうがいいって感じで、友達も言っていたし……ま、いいや。とにかくやるよ。ラル、剣の舞!」
「くっそ、やるしかない! ニドヘグ! 地震を起こせ!」
 相手のガバイトの攻撃は、鋼タイプを併せ持つドリュウズ相手には悪くない選択だ。だが、レベルが違いすぎる。ぴょん、と一歩で跳躍しつつ距離を詰め、アイアンクローを脳天へと叩きつける。固い衝撃に地面を舐めさせられたガバイトは、そのまま後頭部に爪を押し込まれ、いつでも殺せるぞとアピールされる。しかしながらラルも無傷ではない。彼の手からは鮮血が滴っており、どうやらゴツゴツメットとサメ肌の特性で大いに傷つけられてしまったらしい。ラルの血でガバイトの背中が赤く染まって行く。
 剣の舞という命令だったはずだけれど、それすら必要もないと言いたげなその戦いぶりに、苦笑しか漏れない。
「くっそー……どうしてお前ら自分で育てたポケモンで戦わないんだよ!?」
「いや、一番強いポケモンで来いって言われたから。とりあえず、一番強いポケモンを出しただけなんだけれど、何か間違ったかな?」
「お前なぁ、そこは空気読めよ!」
 ドワイトは喚く。しかし、その程度で怯むほどアンジェラは甘くない。
「いやだって、賞金渡したくないし……もうちょっと礼儀正しい相手なら、少しくらいは考えたんだけれど」
 正直にその気持ちを告げつつ、前に手を差し出す。賞金をよこせと言わんばかりに。
「そう言えば、私も前回の分の賞金貰っていないな……」
 私も思いだして口に出し、ドワイトの前に手を差し出す。年上二人から賞金を他駆られる経験など、そうそうあるものではなくドワイトは非常に戸惑っている。
「……えーい! 出せばいいんだろ出せば!! 畜生!!」
 けれど、彼も観念するしかないと悟り、財布から札を一枚ずつ出す。
「まぁ、年下からむしり取れるのはこんなもんか。ありがとねー」
「ありがとー。また私のアブソルと対戦してねー」
 アンジェラと私は、投げやりなお礼を言っていやらしく微笑んだ。
「アブソルともドリュウズとも対戦なんてしねーよ! 全く、覚えてろよ!」
 悔し気に捨て台詞を吐いたドワイトは、そのままどこへとも知れない方向へと逃げようとする。だが……
「ちょっと、待ちなさい。本来の目的忘れてるんじゃない!?」
 アンジェラの大声で、ドワイトは本来の目的を思いだし……
「い、良いぜ。交換進化、手伝ってやるよ」
「いや、別にデボラとやればいい事だし、私はやらなくてもいいんだけれどね……素直じゃないならやらなくっていいよ? 貴方のストライクはストライクのままね」
 アンジェラに冷たく言い放たれて、ドワイトは数秒、考える。
「すみません……し、進化させてください、お願いします」
 考えた末に、私達に従うしかないと確信して、彼は頭を下げるのだ。
「よろしい。親切な私は進化を手伝ってあげますよ」
 そうして、私達は傷ついたニドヘグやラルを治すついでに、ポケモンセンターへと向かうのであった。


Ring ( 2016/07/29(金) 23:15 )