マグナゲート短編集 - 短編
エピローグ
 俺がこっちの世界に帰ってくるとき、クロースは便宜を図ってニンゲンの世界を去った直後の時間移動させてくれた(もしかしたら、日食の日という事が関係があるのかもしれない)ために、俺は気絶していたところを熱中症の疑いで病院に運ばれたところで目が覚めた。
 ところが、検査をしても体に異常は見つからないので、そのまま退院していいよと医者に言われ、ボールを割ってもなお憑いてきてくれたヨノワールのヘルのために新しいボールを購入し、その日はホテルの中でずっと泣いていた。

 そうして時は経ち――
「パパ、今そっちの方にヘルちゃん送ったから」
「ありがとう。また機会があったらお願いするよ」
「いえいえ、どういたしまして」
 あれから約一年半ほど。俺とアイカは、インターネットを通じて改めて繋がり合い、現在は親子のような関係になっている。距離こそ離れているが、まぁ……テレビ電話があればそんな距離なんて縮まって思える。
 会えない時間に想いを募らせるような、そんな時間の使い方も趣があっていいが、やっぱり最新機器の便利さにはかなわない。
「今回はどうだったの?」
「あぁ、ちょっとした植物の病気さ。あいつら俺に頼りっきりでさ。でも、対処法とかいろいろ教えてやったら、みんなが文字を書けるようになった影響でな、住人がきちんとメモを取るようになったし、多分もう大丈夫だと思うけれど……」
「大変だねぇ、パパは。私の方は皆がしっかりやってくれていて、大助かりだよ。子供だけに頼ってられないってさ」
 まぁな、と俺は笑う。俺があの世界を去ってから数か月。アメヒメは、俺とどうしても再開したいがために『世界のへそ』というダンジョンの内部にある『銀河律の丘』という場所で、俺との再会を願った。その頃には俺もアイカに資金援助なんかをしたりして、悪い影響しか与えない両親から引きはがす形でトレーナーとして旅立たせており、順風満帆の生活を送っていた。
 そんな状況でアメヒメからコンタクトがあるとは意外な出来事で、突然3DSにあのゲームの画面が現れたことにはひどく驚いたものだ。
 アメヒメの願いは、『ティーダがこちら側の世界とニンゲンの世界を行き来できるようにしてほしい』というもの。アイカと一緒じゃなきゃ嫌だと、声をかけると、クロースがその言葉をアメヒメに伝えて、アイカも一緒に戻れるようになったわけだ。
 そうして、今は交代で時折、自主的に神隠しに遭いにいくという日々を過ごしている。あちらの世界で、俺はダイケンキとして、アイカはオノノクスとして、かつての仲間たちに訪ねに行くのだ。俺は体も大きくなってしまったため、アメヒメがライチュウに進化したところで、もうつがう事は出来ないだろう。クロースもまた、『そうしてくれると助かります』、と言っていた。恐らく、別世界の住人である俺の子供があちらの世界で生まれるといろいろまずいのだろうが……ミジュマルの時に何回かダンジョンへ出かけるついでに女を金で抱いたが、子供出来たりとかしてないよね……? クロースが何も言わないという事はきっと大丈夫なのだろう。

 結局、彼女いない歴イコール年齢というのは今でも変わらないが、娘のような存在も出来て、どちらの世界でも幸せな生活を送っている。宿場町の仲間達とたまに会う日も楽しみだし、なんというか長生きしたい。漠然とそう思える、幸せな日々だった。
「そうそう、パパ。今度私3つめのバッジに……エイセツシティジムに挑戦するんだけれどね……」
「お、3つめかぁ……って、俺がいない間に2つめ手に入れていたの? 早いな……やっぱり才能あるんじゃないかな、お前」
 実の娘ではないけれど、こうやって自分が見込んだ若い子が成長していく様子は、非常に嬉しいものだ。あちらの世界のヨーテリーも、顔を見せるたびに立派に成長していて、今はいつかダンジョニストになるために、毎日鍛錬をしているのだとか。アイカも……もっともっと、強くなってくれるといいな。
「うん、そうなんだけれど……ヒャッコクシティでエスパータイプのジムに挑んだ時、私のニダンギルがニャオニクスのシャドーボールで簡単に倒れちゃったんだよね……鋼タイプって、ゴーストタイプの攻撃今一つじゃなかったっけ? なんか、記憶がごっちゃで……ジムリーダーのゴジカさんも『これは歪み……乱された、この世の理』とか言っていたし……」
「いや、鋼にゴーストは等倍だろ……? ……あれ? いや、鋼タイプに対しては等倍のはずだが、なぜか猛烈にいまひとつだった気がする……なんでだろ?」
「そうなのよね……私も、頭では分かっているんだけれど、なぜだか心が認めないというかなんというか……まさか、私達が原因で世界にひずみが出来てたりとか……」
 おどけた口調で、アイカは笑う。
「ないない、ありえないって」
 俺も笑って返した。あれ、でも昔はフェアリータイプとかそんなもの存在していなかった気もするし……


 世界にひずみが生じているとか、そんな事はないよな?
 今度、クロースに聞いてみるか……?


Ring ( 2015/07/26(日) 21:57 )