旅に出る
ウツギと卵とプレゼント 2
「お待たせ〜」
「すみません、いただきます」
研究の手伝いをしていた頃は、お茶を煎れてくれることなど滅多になかったが、

「…あの、博士」
「ん?」
「僕、旅に出ることにしました」
「うん、何だかそんな気がした」

やはりそうだった。
博士として、今まで幾多の人に初めのポケモンを渡して(…たまに奪われ)、その旅立ちを見てきたのだ。リクヒトの面持ちから何かを感じ取ったのだろう。お茶もそれでだろうか。

「自分で決めたの?」
「いえ、祖父から勧められました。祖父の手紙をエンジュまで届けるためでしたが」
「あっっ、ごめん…。お寺のことは気の毒に…。息子から聞いたよ。初めにそれを言うべきだったね…」
「いえ、大丈夫です」
「怪我した人もポケモンもいなかったみたいで幸いだ」

少し間をおいて、ウツギがまた口を開いた。

「それで…届けるため"でしたが"って言うのは?」
「よく…、よく考えてみたら、本当は僕は昔から冒険に出たかったんだと思います。でも…、何かが邪魔して、上手く決心がつかなかったんです。きっと」「うん、うん」

「だから、世間でいうポケモントレーナーになるのかと言うのは分からないんですが、出来れば、道中色々な場所に立ち寄って、様々なものを見てみたいと思いました」
「それが、君の旅立つ理由だね」
「はい」

ウツギはほっとため息をついて、今度はリオを見た。
「リオ君も同じみたいだね」

リオは頷く。

ウツギは席を立ち、部屋の奥に入っていき、一つの大きなケースを持ち戻ってきた。



類似 ( 2014/02/23(日) 19:17 )