ウツギと卵とプレゼント
リクヒト達は、ポケモン研究所の前に立っていた。
リクヒトは、深緑にチェック模様が入ったバッグ、紺色の新しいシューズ、黒と赤の帽子を被り、リオは右手首に白いブレスレットを着けている。
シューズとブレスレットは、アズミからのプレゼントだ。
2人が出発を決めた日の夕方、
「お母さん」
「なーに?」
「…突然で申し訳ないんだけど、僕、旅に出ようと思うんだ」
「…うん」
「爺ちゃんの使いとしてエンジュまで行くつもりなんだけど、途中途中の街にも寄って行きたいって考えてる」
「…そう」
「…だから、旅に出るの、許してもらいたいんだ」
「リオちゃんはどうなの?」
(僕もリクと一緒に行きたいです。)
「お母さんを1人にさせるのは心残りだけど、僕…」
「いいわよ」
とうとうこの日が来た、というような顔をして席を立ち、彼女は部屋の奥へと行き、大と小の2つの箱を持ってきた。
「お義父さんから話は聞いていたし、それに…」
彼女は2人の顔を覗き込み、
「あなた達若いんだから、旅でもしないと勿体無いわよね」
箱の蓋を開けた。
片方にはランニングシューズ。もう片方には白いブレスレットが入っていた。
「私からのお祝いよ」
「…母さん」
「本当は誕生日用だったんだけどね。シューズがリクに、ブレスレットがリオちゃんに」
「ありがとう。大事にする」
(ありがとう、お母さん)
「いいのよ、それより…、」
体に気をつけるのよ。
言葉少なめにアズミは2人を見送った。
がちゃっ
「…あっ、りっくん!それにリオ君も!」
「ご無沙汰してます、博士」
研究所の中にいたのは、数人の研究員と、ウツギ博士。
「いやいや、リオ君進化したのか!おめでとう。ちょっと待ってて。今お茶煎れるから」
「ありがとうございます」
以前からこの研究所には、博士の研究を手伝うためによく顔を出していた。
もちろんそれは、自分の知りたいことを、直接その目で見てみたいという思いからでもあったし、案の定リクヒトのポケモンに関する知識の大半は、この研究所で得たものであった。
2人は、色々な研究器具が並べられた部屋の端にある机と椅子に座った。プラスチック製のかなりシンプルな外見で、いかにも申し訳程度に置かれているのは、研究熱心なウツギ博士の性格を窺わせている。