エンジュ行きの勧進帳 3
きっかけが欲しかったんだ。
小さくてもいいから、確かなきっかけが。
僕の悪い癖だ。
自分で決めることを決めないで、責任からいつも逃れようとして、挙げ句の果てにせっかくのチャンスを今、不意にしようとしている。
失いたくない。…ならば。
「爺ちゃん、」
「…にはそこの赤アフロ…、んっ?」
ありがとう、爺ちゃん
「僕行くよ」
爺ちゃんはその言葉を聞くと、安心したように笑った。
「そうかそうか、ではすぐに勧進帳を書き上げんとのぅ」
庭を出る爺ちゃんの背に向かって、もう一度感謝を述べる、
ありがとう、背中を押してくれて
「あぁ、そうじゃ。」
ふと立ち止まった爺ちゃんは、振り返り言った。
「今度はお前がきっかけを与える番じゃて」