旅に出る
エンジュ行きの勧進帳 3

きっかけが欲しかったんだ。
小さくてもいいから、確かなきっかけが。

僕の悪い癖だ。
自分で決めることを決めないで、責任からいつも逃れようとして、挙げ句の果てにせっかくのチャンスを今、不意にしようとしている。

失いたくない。…ならば。


「爺ちゃん、」
「…にはそこの赤アフロ…、んっ?」

ありがとう、爺ちゃん

「僕行くよ」

爺ちゃんはその言葉を聞くと、安心したように笑った。

「そうかそうか、ではすぐに勧進帳を書き上げんとのぅ」

庭を出る爺ちゃんの背に向かって、もう一度感謝を述べる、

ありがとう、背中を押してくれて


「あぁ、そうじゃ。」

ふと立ち止まった爺ちゃんは、振り返り言った。

「今度はお前がきっかけを与える番じゃて」




類似 ( 2014/02/18(火) 21:25 )