2つの転機
大火

…夜の森の中を、3つの影がかけていく。
リクヒト、ゼンギ和尚、リオ、の3人は、ソーナンスの知らせを受けて寺へと急いでいた。

五分前


「僕はカイリュウと一緒に先へ行っています」
「分かった。わしらもすぐに向かう、お前は状況をみて…わかっとるのぅ?」
「はい!寺の安否よりポケモンたちの安否を!」
「よし!急いでくれ!」


リクヒトの家の前からワタルとカイリュウが飛び立った後、残りの者は山を見上げた。確かに寺の辺りがほんのり赤く光っているのだ。

「これはまずいのう。急いで戻らねば」
「爺ちゃんの、ポケモンたちは…?」
「いや、それは心配ない。幸いウツギの所に預けとるからのぅ。じゃがそのせいで…走っていかねばならん…」
(そこ躊躇してる場合じゃないですよ!早く行かなきゃ!)
「お母さん!ソーナンスとソーナノ宜しくね!」
「分かった!気をつけてね!お義父さんも…!」

走りくたびれてソファーで沈没しているソーナンスを、ソーナノが心配そうにさすっている。3人を残して、リクヒト達は寺へと走り出した。


「一体誰がこんな事を…」
(あのオニドリルは飛行タイプだから出来ないはずだし、森の皆もそんな事するはずないし)「寺もわしも、恨まれる、はぁ、事なんて、ふぅ、しとらんからのぅ、ふぉぉ、ちょ、ちょっと早すぎやせんか…」
「何言ってんの、爺ちゃん。一刻を争うんだから!」



「…着いた」
「な、なんと!こりゃ酷い」

3人が寺に到着する頃には、火は既に消されていた。
火がでていることを知って駆けつけたワカバの人々も、ワタルとカイリュウに手を貸してくれていた。森の中には10数人の姿が見える。



だが 寺は無惨にも黒く焼け焦げて半分は倒壊してしまっていた。折れた柱が、夜の森の暗闇の中へと沈んでしまいそうになりながら…。

「そんな…」
(………)

リオもリクヒトも黙ったまま、ボロボロの寺に駆け寄った。リクヒトは静かに、真っ黒の柱の1つを眺めていた。
それは修業時代に、皆で自分の目標を書き込んだ柱…今は全てが黒く朽ちてしまった。



類似 ( 2014/02/11(火) 15:24 )