若葉寺 2
「また、日を改めますか?今日は家にでも泊まっていけば」
(そうしてください!お母さんも喜びますよ)
「はっはっは。君が喋るのを聞くのも久しぶりだな、リオ君。それではお言葉に甘えさせて頂こうかな…」
リオが喋ることを知っている者は、数少ない。
別にひた隠しにしているわけではないのだが、リクヒトと2人で話した結論、あまり人前でベラベラと話すのもどうか、と言うことで特定の人の前では目線でコンタクトをとるようにしていた。
知っているのは本人とリクヒト、母と祖父、兄弟子の2人、そしてあと2人。
彼女らは後で出てくるので、今は明かさないでおく。
和尚がいないとなれば、寺にいてもしょうがない。ひとまず、リクヒトの家に行くことになった。
が
「りっくん」
「はい?」
突然、 ワタルが足を止めた。
まだ森と家の真ん中にも達しておらず、周りはまだ朝の日差しで露が所々輝いているなか。
「久しぶりに、勝負してみようか」
ワタルは急に切りだした。
「…」
リクヒトは黙ったまま少し目を逸らして、そしてリオを見た。
リオは少し驚いた眉を戻し、口の端を僅かに上げて、耳を2度振った。
2人とも、ワタルが帰ってきたということから予感はしていた。
迷うことはない。
「…お金取らないなら、良いですよ」
「えっ?いや、取らないよ!」「分かりました、宜しくお願いします」
ワタルは頷いた。
腰からボールを1つ取る。
「どれだけ強くなったか、楽しみだ!」
リクヒトは目をつぶり、そっと、力強くいう。
「いくよ、リオ」