若葉寺
ハヤトと分かれた後、3人は木々の合間を慣れた足どりで、更に奥へと進んでいった。
若葉寺は、ワカバタウンの横にある山の、丁度てっぺんにある、木々に囲まれた小さな寺である。
およそ100年前にリクヒトの祖父の祖父、言わばひいひい爺ちゃんが建てたものだ。
その三代目の当主が、先程の3人の師、ゼンギである。
ちゃんと名前があるのだが、ワカバタウンを中心に、彼はここら一帯では
"ソーナン僧正"と呼ばれている。
理由は2つ。
彼がいつも連れているポケモンがソーナンスだからと言うことと。
その連れソーナンスに顔が瓜二つだから、と言う事からだ。
リクヒトはゼンギに会う度いつもいつも
…顔、似なくて良かった
と安心するほど。
また、顔が似ているばかりでなく、和尚は性格もまるでソーナンスであった。
"穏和"の代名詞のような人である。
だが、そんな彼でも
バトルの際はめっぽう強い
たとえワタルでも、始まって五分ほどでワタルのポケモンの方がのされてしまうほど。
…爺ちゃんがチャンピオンになればいいじゃん
子どもながらリクヒトはそう思っていた。
と、
3人が10分程あるくと、急に木々が開け、四方10m程の寺が見えてきた。
若葉寺である。
構えは至ってシンプルで、正面入り口の上には小さな若葉の彫り物が施してあり、屋根の四方に小さなコイキングが立っている。
決して大きいとは言えないが、その作りはしっかりとしており、支えとなっている四方の柱は太く、なめらかな曲線を帯びて、見る者を包み込む優しさを備えている。
「変わっていないな」
「えぇ、…和尚は居ないみたいですけど」
「…本当だな、誰もいない。残念だ、久しぶりにご挨拶をしようと思ったのに」