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森に着いた２人は、いつものように無言で黙々と山を登り続ける。

ワカバにある研究所から裏手に少し歩いた場所にあるこの森は、リクヒトとリオの修行の場であり、憩いの場所であり、

出会った場所でもある。

３、４０分ほど歩いたところ、見えてきた開けた場所。
周りは鬱蒼と茂った木々に囲まれているが、此処だけは立ち入らずに薄い苔と岩が２つ、静かに佇んでいるだけ。

２人は何も言わずに、
いつものように岩に座り目を閉じる。



リクの祖父は、住職。
つまり、祖父は寺に住んでいる。
幼い頃からたまに顔を出しては、祖父の真似をして座禅を組んでいた。

祖父はいつも、座禅を通して心を無にすることで己を高めることができると彼に言っていたが、実際はその真逆だった。

座禅を組むことで彼は、様々な事が頭を駆けめぐり、更にそれらを一つ一つ見つめる事が出来るのだ。
つまるところ、座禅によってかなり深い思索を行えるようになったのだ。同時にそれが高い集中力を生む。

まぁ、それが何だというのだが。
十年も続けていればなかなかの効果が出てくるわけで。
彼の場合は、それがポケモン達との意志疎通に現れた。

どこか遠くの土地には、殆ど完璧に心を通わせる事ができる者たちもいるから、それに比べればちっぽけなものだが、目の前のポケモンの伝えんとしていることはほぼ理解できるようになっていた。

それに、リオは座禅を組むことで日に日にたくましくなり、今ではリクヒトの（170前半はある）身長の２倍近くの岩を難無く割ることが出来るようになっている。


いつしか森のポケモンたちも彼らに警戒心を見せなくなり、強気なコラッタや好奇心の強いキレイハナなども共に目をつむるようにまでなっていた。