日課
今日もお母さんはご機嫌。
リクもご機嫌。
この家に来てから、そんな日を数えるようになった。
たぶん五年くらいかな。
僕の名はリオ。
リオルだから、リオらしい。
リクという人間に拾われてから、ここでずっと生活している。
本名はリクヒトと言うらしいけれど、大抵はリク。
拾ってくれた日のことは未だに忘れない。赤い夕焼け、映える黒雲、空を舞うヤミカラス。
でも
拾われる前のことは 分からない
辛うじて思い出せるのは、夕日、雨、そして薄暗い洞窟と、
何かの石。
いまでも朧にしか記憶にないけども、それでもリクの顔はしっかりと目に焼き付いている。
彼は僕の恩人。
その恩人に助けられて、その恩人の家に住み着いたってわけ。
ここの家族は元々4人らしかった。
リクの姉は旅に出かけて、父は未だにどこで何しているかが分からないそうだ。
ここで僕は、リクと共に働きながら、いろいろ学びながら、そして修行しながら過ごしている。
勿論、家の手伝いもきちんとしている。せめてもの恩返し。
と、朝食を終えたリクは席を立ち、部屋に向かう。
鏡のようなシンクへ皿を運び、僕も後を追う。
今日は"山"の日。
3日に一度はむかう、
家から少し離れた、
若葉寺の近くの、
そして、僕らが出会った
"ワカバタウン"のはずれ森に。