森の盗賊グラエナ
「もうすぐ森に着くはず、二匹が無事だといいんだけど・・・見えた!」
森の中は昼でも薄暗く静かで不気味な雰囲気が漂っていた。
「おーーい!ワンリキー!居たら返事してー!」
リアの声が響いただけで誰もリアの呼びかけに答えることはなかった。
「誰もいないのかな?・・・あっ!」
リアの視界に入ったのはワンリキーのつけていたスカーフだった。スカーフを手に取ろうとしたリアは後ろに何かを感じ、素早く後ろに振り向いた。
「こんな森に何の用かな?小さな隊員君、身ぐるみ全部おいて行きな」
「グラエナ!お前の言うことを聞くつもりはない」
(いつの間に後ろに居たんだ!?)
「この俺も舐められたもんだ、こんな子供を送ってくるとは!」
次の瞬間グラエナの姿がリアの視界から消えた。
「え?・・・どこに消えた!?・・・!!」
グラエナがリアの背後から思い切り殴りつけリアを地面に叩き付けた。
「うぐ・・・このっ!」
リアも負けじとはっけいを繰り出そうとしたが再びグラエナの姿が消えていた。
「後ろががら空きだぞ!」
また同じように殴りつけられリアは意識を失ってしまった。
「ふう、やはり子供相手じゃ面白くもないな・・・まだ仲間がいたのか」
グラエナは木の後ろに隠れている何者かに気が付き攻撃の姿勢をとった。
「あ・・・リアから・・・離れて」
木の裏から震えながら出てきたのはブイだった。ブイはリアが出発した後リアを追いかけてここまでやってきた。
「うっ!女の子か・・・この場はみのがしてやるっ!」
グラエナは素早く森の中に姿を消していった。実はこのグラエナ女の子の前だと緊張する癖があった。なのでブイには攻撃もできず逃げて行ったという訳だ。
「あ・・・そうだ、リアを回復させてあげないと」
ブイは気絶しているリアを急いで手当した。
「リア、もう大丈夫だよ。グラエナもどこかに行っちゃった」
「ブイ・・・なんでここに!?ごめん、二匹を見つけることさえできなかった」
リアはなんとも悔しそうな表情をしながらブイに謝った。
「そんな、わたしも・・・何もできなかった」
「僕はもう一度グラエナを探す、今度は負けない」
そう言ったリアはさらに森の奥を目指すことにした。
森の最深部はかなり暗くこの暗闇の中でグラエナを見つけ出すのは困難だった。しかしリアにはグラエナを見つけ出すための秘策があった。
「グラエナー!僕はまだぴんぴんしてるぞ!出てこーい!」
グラエナは自分の強さに自信を持っている。こんな子供に馬鹿にされたら再び現れるはずだ。
「そんな大声だして、また俺においてして欲しいのか?いいだろう」
「今度はさっきみたいに負けないぞ、はあっ!」
「っ!!があっ!」
リアはグラエナの目の前に迫るとはっけいを繰り出した、相性的にもかなり効いているらしく足元をふらつかせている。
「まだ、勝ったと思うなよ!かげぶんしん!」
リアの周りに無数のグラエナの分身が現れた。
「はははっ!どれが本物か分かるかな?」
次の瞬間すべてのグラエナがリアに向かって飛び掛かった。
「リア!これでお前も終わりだ!・・・っ!!」
「捕まえたぞ、本物のお前を!」
リアは無数のグラエナの中から本物のグラエナを見つけ捕まえたのだ。
「くっ、はっはなせ!」
「ワンリキー達はどこだ!教えろ!」
「くっ!そこにある落とし穴の中にいる。教えたんだから離せ!」
リアは落とし穴の中を見てワンリキー達がいるのを確認すると手を離した。グラエナはリアが手を離した瞬間に逃げだしていった。
「さてこの二匹どうやって助け出そうかな?」
「リアー!グラエナは?」
声の方に振り向くとブイとなんとサーナイトが居た。
「いっ!?なんでサーナイトさんがここに!?」
「ふふ、まさか誰もにもばれてないって思ってた?」
自分達以外にこの事を知っている者はいないと思っていたが、サーナイトにはばれていたようだ。
「グラエナに勝った事は素晴らしいことです。しかしこの行動は正しいとは言えませんね」
「ごめんなさい・・・」
リアが謝るとサーナイトはなぜか嬉しそうな表情をしていた。
「さ、この子達が気絶している間に帰りましょう」
ギルドに帰るとガバイトさん達に怒られてしまった。でも仲間を助けようとする気持ちは素晴らしいと褒めてもくれた。
あの後グラエナを捕まえるために他のポケモン達が出発したがいくら探しても見つからなかったらしい。
多分グラエナはまた現れると思う。その時はまた勝負しようと思う。