ポケモン 不思議のダンジョン 〜光の煌き 闇の誘い〜






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*第五章*Sign of disorder
第五十六話*方向音痴は直らない
「だいぶ奥まで来たなぁ……」

鬱蒼とした森の中を歩く一匹のクルマユ――アルカは辺りを見回しつつ、ぼそりと呟いた。
進むペースを崩さず歩き続けると、広い場所に出てきた。アルカは周りを見回すと満足そうに頷く。

「うん、ここなら何か見つかるかもしれない。何か良い物あるかなぁ…探してみよっと。
……あれ?」

ゆっくりと辺りを歩き回りながら見回していると、アルカは妙なものに気づいた。
近づいてみると、そこには妙に盛り上がった地面があった。その跡を見るに、どうやら自然にできたものではなく人工的につくられたもののようだ。

「何か埋まってるみたいだ。掘り返してみよ……っと」

アルカはゴソゴソとその地面を掘り返す。すると、美しく輝く赤い石と不可思議な模様が描かれたカードのようなものが出てきた。
アルカはその中の赤く輝く石に目を付けた。

「わぁ…綺麗な赤い色の石! なんて綺麗なんだろう……!
コレ、持って帰ったら喜ぶかなぁ……」

アルカは赤い石を眺めながらそう呟く。その後ろから近づく何かがいた。


「はぁっ、はぁっ……!――ッ!?」

その者は草むらを掻き分けて進んでいたが、アルカの存在に気づくと驚いたように足を止め、ジッと様子を窺う。しかしアルカの方は赤い石に目を奪われているからか、全く気付く様子を見せない。
その者は意を決したようにアルカにそっと近づく。

「あっ……!」

アルカはそのポケモンが背後に立ってからようやくその存在に気付き、驚きに目を見張った――













「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

ウォーグルのつばめがえしに、パニックを起こしたクローネは思わず目を瞑った。そしてその時確かに聞いた。「――世話が焼けるなぁ」と。

「リーフブレード」

ザシュッと何かを一閃するような音がした。次の瞬間にはウォーグルの悲鳴が響く。
攻撃が届かなかったクローネはそっと目を開く。
目の前には緑色の姿をしたクローネとほぼ身長の変わらないポケモン。そして吹っ飛ばされたのか少し離れたところで、目に見えて怯えの色を見せているウォーグル。

目の前に立つポケモン――ツタージャは既にその周りに虹色に輝く葉を浮遊させ、臨戦態勢を整えている。

「…マジカルリーフ」

ツタージャは虹色の葉を飛ばし、ウォーグルにとどめをさす。
戦闘を早々に終わらせ、ツタージャは「ん〜っ」と伸びなどしている。クローネはぽかんとそれを見ていた。そしてどこかで見たような戦闘スタイルに、首を傾げる。
と、ツタージャはくるっと振り返り、そして何故か、

「コラッ!」

とクローネを叱りつけた。

「こんなところでウォーグルと出会ったらさっさと逃げなきゃダメだろ!!ウォーグルはこのダンジョンのポケモンよりはるかに強いんだぞ、わかってるのか!?」

何故か子供を叱るように説教を始めたツタージャを見て、クローネはまたもぽかんとした。なぜならそのエメラルド色に輝く瞳には見覚えがあったからだ。

「…メルス?」

「そもそもだな――って、ん?」

説教を続けていたメルスはふと名前を呼ばれたことに気づき、口を止める。そしてクローネの顔をじぃっと見つめると、不意に手をポンと打った。

「お!もしかしてお前クローネか!」

「うん!やっぱりメルスだったんだね!」

相手がクローネであると認識し、にこりと精悍な笑顔を見せるツタージャ――メルス。
クローネも相手が顔見知りで会ったことに安堵し、笑顔になる。

「しっかし、こんなところで何やってんだ?また迷子か?」

「今は迷子探してるの!」

「で、迷子を捜してるうちに迷子になったんだろ?」

「う…」

「ぷっ…クククッ、お前本当に嘘が付けない奴だなぁ、ハハハ!」

「だからなんで笑うのさー!?」

「あははははっ!!」

「なんでさらに笑ってるの!?」

頬を膨らませるクローネと、ケラケラと笑い続けるメルス。どうやら彼の笑い上戸は健在のようである。
しばらく笑い続け、やっと笑いが収まったらしいメルスは「ふぅ…」と息を吐く。

「あー落ち着いた落ち着いた…危うく笑い死にするところだった!」

「もー…そんなに笑うことないのに…」

「いやークローネ面白いからつい、な?」

「ボクそんなに面白いこと言ったつもりないんだけど!?」

「プッククク…ダメだ思い出し笑いしそう……!!」

再び笑い出しそうになるメルスに、「そういえば」とクローネが疑問を口にする。

「メルスはどうしてここに?」

「んー?あぁ、フラフラしてたら此処に来てな、どうせなら、と思って脇道攻略に来た」

「脇道に?」

「そ。あそこ、宝箱があるからな。それに此処の脇道、草タイプと赤い鍵が必要なんだけど、ウチは草タイプで赤い鍵も持ってるし、ちょうどいいと思ったわけ。でも攻略中に中に住んでたウォーグルが外に出ちまってな、仕方ないから追っかけてたらちょうどクローネと出くわしたってわけだ」

「ふーん…って、え?」

クローネは納得したように頷いたが、ある点で引っかかり首を傾げる。

「ってことは…ボクが襲われたのメルスのせいなの!?」

「ま、そうとも言える!」

「なんでそこで胸を張るの!?」

「ハッハッハ!!…ハハハハハ!!」

「なんかまた笑い出した!?」

なんとも妙な会話である。
メルスは一通り笑い終えると「で?」と尋ねる。

「迷子を捜してるんだっけ?どんな奴?」

「あ、そうだった!えっとね、クルマユのアルカっていうんだけど…見なかった?」

「クルマユ…ねぇ。んー…ウチは見てねぇな」

「そっかぁ…残念」

落ち込むクローネ。しかしすぐに顔を上げると、

「じゃあボク探しに戻らなきゃ!」

と意気込む。それをジッと見ていたメルスは、その様子を見てフッと笑うと「よっしゃ」と声を上げる。

「ならウチも探すの手伝うぜ!」

「本当に!?」

メルスの実力は折り紙つきである。そのメルスが一緒に探してくれるのだから心強い。さらに付け加えて言うのであれば、迷子にならないという理由もあったりするのだが。

「じゃあ行こう!」

「おう」

駆け出すクローネの後を追いかけるメルス。
二匹はアルカを探しながら奥へと進んでいった――




■筆者メッセージ
結局クローネの方向音痴は直りませんでしたとさ←

メルスさん、再登場です。
今のところ味方っぽいですがはてさてこれからどうなるのやら←

センターが終わりましたので、前ほど更新率は落ちない…と、思いたいです(((((
レイン ( 2016/01/19(火) 21:28 )