*第六話*リーフVSズバット
ゼロと分かれ、リーフはズバットの前まで来た。
といっても、ゼロは少し離れたところで戦っているわけだが。
相変わらず、ズバットはリーフを見ながらニヤニヤと笑っている。
「へえ。俺の相手は弱虫君か?ヘヘッ、果たして俺に勝てるかな?」
「う……で、でも、あなた達みたいな悪いポケモンになんて負けないもん!」
「ふん…まぁいいか。エアスラッシュ!」
ズバットは自身の羽を使い、勢いよく風を起こし真空刃のようなものを作り出す。
それを一気にリーフの方へ打ちだしてきた。
「うわっ!」
不意打ちの攻撃だったため、避ける暇もなくリーフはまともに食らってしまう。
元々スピード勝負は苦手なので、避ける間もなかった。
飛行タイプの技である為、草タイプのリーフには効果抜群なのである。
ただし防御力は高いので、高威力であるエアスラッシュを喰らっても、簡単に倒れたりはしない。
「…は、葉っぱカッター!」
「うおっ!?」
完全に油断していたズバットは諸に攻撃を受けた。
だが、リーフが受けた攻撃とは違い、効果はあまりないので、この時点でリーフは不利ということになる。
元々、飛行タイプに対して有効な技など持っていない。
それでも、草タイプのリーフは毒タイプにも弱く、例えドガースと戦っていたとしても不利だった事に変わりはない。
おそらくゼロは、ドガースの方がズバットよりも強いと思い、ドガースの相手を自ら受けたのだろう。
「ほらほら!連続エアスラッシュ!」
これ以上受けるとさすがに危険なので、自然と防御態勢になっていく。
これでは攻撃に移れない。
その時、遠くから爆発音が聞こえてきた。
驚いて反射的にそちらを向いてしまうリーフ。
そのせいで一発の“エアスラッシュ”を受けた。
それが不幸を呼んだのか、残りのエアスラッシュが全て直撃した。
「うわあああ!!!」
瀕死寸前のリーフに対し、まだまだ体力が残っているズバット。
「ヘヘヘッ、やっぱり弱虫君は勇気も体力も力もないんだな」
「そんな事言われたって…私は負けられないもん……」
強気に言い返すリーフだが、実際のところもう既に動くのも辛くなってきている。
「……マジカルリーフ!!」
最後の悪あがきのつもりで撃ったマジカルリーフはその特性ゆえに全てズバットに命中した。
だが、既に瀕死寸前のリーフには勝機は無かった。
「テメェ……許せねぇ!これで最後だ!エアスラッシュ!」
(もう駄目なの……?やっぱり私じゃ勝てないの……?)
悔しかった。自分が情けなく感じる。
それでも。
(私は…負けたくない……!!)
「………え?あれ?」
エアスラッシュが決まれば、当然痛みを感じる…筈なのだが。
しかし、当たったような感覚…痛みが全く無いのだ。
リーフがゆっくりと目をあけてみると、彼女の目の前に立ちはだかり、エアスラッシュをはっけいで止めている者がいた。
「な、なんでお前がここにいるんだ!?ドガースは!?何してるんだ!?」
驚きのあまり、少しパニックになっているズバットに対し、彼自身は慌てることもなく、冷静に答える。
「……ドガース?…ああ、あいつの事か。…見りゃわかるだろ、吹っ飛ばしてきた」
そう、リーフの目の前で攻撃を止めていたのは、ドガースと対峙して、そして勝利したリオル、ゼロだった。
ゼロはリーフの方を向き、状況を把握した瞬間、ダッシュしたのだ。
ゼロとドガースが戦闘をしていた場所がこの場とさほど離れていなかったのと、ゼロの身体能力が並外れたものだったのがリーフにとっての幸運だったと言えるだろう。
それにしても、ゼロは格闘タイプなのに、苦手な飛行タイプの攻撃を受けて大丈夫なのか。
表情からするとかなり余裕そうだ。……元々無表情なのでわかりにくいが。
ゼロははっけいでエアスラッシュを打ち砕くと、リーフの方を見た。
「ゼロ!…っていうか、倒すの早いね?」
「……お前が遅いだけじゃないのか?」
「えぇ!?絶対ゼロが早いだけだよ!!」
「……そんな事を言われても、お前が遅いのに変わりはない」
何故か喧嘩に発展してしまった。ゼロの場合、喧嘩している自覚はないのだが。
「………おいコラ!俺の事忘れてるんじゃねー!!」
存在を忘れられているズバットが抗議するが……
「ちょっと黙っててよ!今忙しいんだよ!?マジカルリーフ!」
「……黙っておけ、波動弾」
二匹はズバットを黙らせるため、自身の技の中でも一番威力が高い技をズバットにぶつける。
因みに、二匹の撃った技はどちらも回避不能の技だったりする。
「ぎゃあああああ!!!」
ズバットもさすがにこの攻撃は効いたようで、力無く地面に落ち、戦闘不能になった。
「あ、そうだ……
ねぇ、私達が勝ったんだから、『遺跡の欠片』を返して!!」
倒れたズバットに対し、自分の宝物を返すよう催促するリーフ。
「……うぐっ……へへへ、俺は持ってないぜ。ドガースが今頃、持ち出してるんじゃねーのかな……」
「ええっ!?」
確かに今頃、気がついて逃げだしているかもしれない。
「ヘッ、まぐれで勝ったからっていい気になるなよ!」
悪党が逃げ出す時には大体付いてくる捨て台詞を残し、ズバットはふらふらとよろめきながら逃げていった。
「そんな…どうしよう……」
また瞳を潤ませ、泣きそうになるリーフ。
「……おい…その『遺跡の欠片』ってこれか?取られた時はよく分からなかったから、自信はないが」
懸命に涙を堪えていたリーフにゼロが見せた物は、間違いなくリーフが探していた『遺跡の欠片』に間違いなかった。
「え…?なんでゼロが持っているの?」
「……ドガースが落としたから拾っただけだ。……さっさとここから出るぞ」
「あ、うん!」
二匹は来た道を戻り、海岸へと歩いていった。