*第四話*争奪戦、開始
先ほどポケモン達と戦ったところから少し進んだ頃………
「あ、あそこが奥地じゃないかな?」
確かにリーフの言うとおり、奥の方は今までより明るくなっている。
「…行くぞ」
「うん!」
【海岸の洞窟 奥地】
奥へ行くと、あの2匹が何やらぶつぶつと相談をしているのが見えた。
ゼロはリーフに視線を向け、促す。
リーフは少し緊張したように頷き、2匹の後ろに立つと、深呼吸して勇気を振り絞り、2匹に話しかけた。
「……ね、ねえ!」
「「ん?」」
ドガースとズバットが同時にリーフの方を向き、リーフは一瞬怯んだが、恐怖を振り払うように頭を振り、キッと2匹を睨みつけ話しかけ続けた。
「…ぬ、盗んだ宝物を返してよ!あれは私にとって大切な宝物なんだ!」
言い終わると同時にゼロは何故か溜息をつき、2匹はニヤリと笑ったのがわかった。
「ほ〜う…宝物ねえ…」
「へへっ、どっかに売り飛ばせば高く売れるかもしれないぜ」
「ふん、余計返せなくなったな」
「ええっ!?な、なんで!?酷いよ!!」
「…バカ、言い方が悪いんだ」
「えっ…えぇ!?どこかダメだった!?」
「宝物欲しがってる奴にわざわざ宝だなんて言うか?普通」
「あぅ…」
表情一つ変えず淡々と述べるゼロに、正論だったために言葉を返せないリーフ。
「返してほしければ、力ずくで取り返してみな!」
ドガースとズバットの二匹はサッと身構え、戦闘姿勢をとった。
「……それで?どうするんだ?」
ゼロは溜息付きで一応聞いてみた。
リーフが何と言うかは予想がついていたが。
「…ちょっと怖いけど戦うよ!勝って“遺跡のかけら”を取り返さなきゃ!」
「……わかった。俺があのドガースを倒す。お前がズバット。分かったか?」
「うん!」
リーフと分かれ、ドガースの目の前に立ちふさがったゼロを見て、ドガースはニヤリと笑う。
「ほう、俺の相手はお前か?」
「……ああ、(不幸な事に)俺が相手だ」
かっこの中の言葉を素早く心の中で言うゼロ。
中々に失礼な内容である。
「ふん。しょうがない。(やる気が無さそうな奴の相手は初めてだが)やるか」
こちらもかっこの中の言葉を心の中で言うドガース。
こちらも中々に失礼な内容である。
「始めるか。ヘドロ爆弾!」
手始めに自身の持ち技の中でも高威力であるヘドロ爆弾を打つドガース。
しかし、ゼロはヒョイと右へと避け、ヘドロ爆弾を回避した。
正直、このくらいの技のスピードなら、彼は簡単に避けられるのである。
そしてゼロが着地すると、踏んだところから何故かカチッと音がした。
( ……なんだ…?)
その瞬間、トゲトゲした“何か”が大量に落ちてきた。
幸い、ゼロは余裕の動きで後ろの方へジャンプし、“何か”は当たらなかった。
跳びながらゼロは“何か”が何なのか確認した。
それは罠でたまに見かける、イガグリだった。
(ここには罠があるのか?…いや、多分あのドガースだな。「罠珠」か何かを使ったんだろう)
着地すると、瞬間ドガースに向かってダッシュし、技ではなく、回し蹴りでドガースを蹴りとばす。
「ぐふっ!?」
ドガースは回し蹴りを諸に受け、軽く2〜3mはふっ飛ぶ。
「やりやがったな、テメェ!」
「…罠を仕掛けるような奴が何言ってるんだか」
「これが俺のやり方だ!!」
別に威張ることでもないのだが、はっきりと言い切ったドガースを呆れきったような目で見るゼロ。
「…この上なくどうでもいいことを威張り散らすな」
「うるせぇ!!体当たり!!」
ドガースが勢いよくゼロに突進するが、ゼロは右にヒョイと避け、体当たりを実に軽々と避けた。
更に怒りに火がついたのか、
「調子に乗ってんじゃねえぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
などと叫ぶと、ヘドロ爆弾を連射する。
が、ゼロが軽々と攻撃をかわして、一発も当たっていない。
「避けるなぁぁぁぁぁあ!!」
「無理だ」
ドガースの言葉をさらりと流し、飛んできたヘドロ爆弾を軽々しく避ける。
最後の一発を避け、着地した時だった。
その瞬間、ゼロはドガースがニヤリと笑ったような気がした。
(……まさか、な…)
そう思いつつ、変な音を聞いたような気がして下を見た。
ゼロが立っている下には、ビリリダマと呼ばれる種族の模様があった。
因みに、ゼロが聞こえたような気がした変な音とは、「カチッ」…という音である。
……簡単に説明をすれば、爆破スイッチだった。
刹那、ゼロの周りが爆発した。
ドガースはその光景を見て、ニヤリと笑った。
これは、自分自身の勝利であると確信した為だった。
「ふん、ずいぶんと呆気なかったな」