*プロローグ*
ある嵐の夜のことだった………
雷鳴が轟き、激しく地面を叩きつける雨。
そんな中、とある海岸の近くに雷が落ち、不思議な穴から出ようとする二つの影を照らす。
「着いたぞ、ここが……!」
嬉しそうに響く、男の声がした。
「…はしゃぐな、何が起こるかわからない。それにこの天気だ、気を抜くな」
「ああ、わかってるよ」
男の声に対し、冷静に忠告する凛と響く声。
どうやらまだ青年らしく、それに似合った声をしている。
「そろそろだな」
「…せっかち」
「ん?なんか言ったか?」
「…別に」
次の瞬間だった。青年の方がいち早く何かを察した。
「……っ!?」
その瞬間、青年は男に体当たりした。
刹那、大きな漆黒の球体が三発、男のいたところ、つまりは青年のいるところへ飛んできた。
「……っ!?」
「お、おい!?」
「平気だ、離れてろっ!!」
青年の鋭い叱声に、思わず男は身を引く。
青年は腕に漆黒の力をまとわせ、かぎ爪状にする。
瞬間、飛んできた球体を切り裂いたが、体制がぐらりと揺れた。
そのまま青年は後ろに倒れそうになった。つまり、落ちそうになった。
男は咄嗟に穴の端に手をかけ、落ちそうになった青年の腕を掴んだ。
「おい!大丈夫か!?」
「…ああ、なんとかな…」
男の胸に希望が灯った。
――よかった!!俺のパートナーはまだ無事だ!!――
だが、男の希望の灯火を消すかの如く、無情にも雷が彼らを直撃した。
「ぐあああぁぁぁぁ!!!」
「…ぐっ…!?」
「!?お、おい!?大丈夫か?」
「………っ」
返事は声にならない声で返ってきた。
「もう少し…なんとか頑張るんだ!」
男の声に、青年は静かに首を振った。
「…もういい、俺の手を離せ」
「なっ!?」
男は衝撃を受けた。
「何バカなこと言ってんだ!?」
「…時間がない、急げ。せめて、お前だけは……」
「ふざけるなっ!!」
男は青年を叱咤するが、青年は話せ、と言って聞かない。
「…早くしろっ!俺のことなど気にしている場合かっ!!」
青年が男を叱咤した瞬間、痺れを切らしたかのように雷が二人を直撃した。
『うわあああぁぁぁぁーーーーー!!!』
男が気を失う前に最後に見たのは、青と銀に輝く青年の瞳だった――