第四十九話 湖の番人
「こ、これは…あの時の石像と同じ…」
「おっきなサンドだね〜!!」
「誰が大きなサンドだ!」
「どう見ても違うでしょ……」
グラードンがいきなり動いてこう言った。マル、またやらかした。チコはもう訂正するのがめんどくさそうな声で言った。
「と、ところで、お前ら! ここに何しにきた!」
「オレ達は霧の湖に…」
「何ッ!? 霧の湖だと…!?」
オレが霧の湖を見にきたと言いおわる前にグラードンの形相が一変した。
「我の名はグラードン。霧の湖の番人だ。何人たりとも通しはせん! 帰れ!」
「グラードン。カイオーガと長い間戦って眠りについていた…。大地の化身とも呼ばれています。でも、なぜここに……もしかして!」
「マッドショット!」
グラードンは侵入者を追い出そうとカレハを狙ってマッドショットを飛ばした。
「ぐふっ……」
「カレハ!!」
カレハはマッドショットに当たってしまった。よけられたのだろうが後ろにヒノやジーナスがいたからよけなかったのだろう。痛みのせいか、顔が歪む。
「私は…一旦、グレイを安全な場所に置いてきます…」
「オレも行こう」
カレハにヴィントがついていき、戦線離脱。
「こ…怖い……」
「大丈夫か?」
「勇気を……勇気を出すんだ! ショウ! 頑張ろう!」
「ああ! 勿論だ!」
こうしてグラードンとオレたち総勢21人(現在18人)の戦いの火蓋が切って落とされた。
「はっけい!」
「グラスフィールド!」
「草結び!」
「ぬるいわ! そんなの痛くも痒くもないわ! じならし!」
「くっ…短期で決めたいね…それならこれはどう? 黒雷乱舞!」
「そんなの効くか! ふん!」
グラードンはポーズを決めて攻撃を受け止めた。
「ラクサス! ビルドアップですよ! 気をつけて!」
「わかったよ!」
「遅い! ドラゴンクロー!」
「危ない! 煙幕!」
ヒノがグラードンの前にでて煙幕をはりラクサスをドラゴンクローから守った。
「ラクサス、大丈夫!?」
「問題ないよ。掠っただけだからね」
ラクサスの頬からは薄っすらと血が流れている。
「数が多いな…それなら…岩雪崩!!」
「な、なんだ!?」
「ショウ! 上から岩が!!」
「みんな! よけろ!」
グラードンが地面を踏み鳴らすと頭上から岩が落ちてきた。上から岩が落ちてきている。これはよけないとぺしゃんこになってしまう。
ドスーン!!!!
岩が落ちてきた。みんなよけただろうか…? あれ?
「おーい! ショウ…聞こえるか?」
なんと岩の向こう側から声が聞こえる。この声は…レインの声だ。
「聞こえるよ! どうしたんだ?」
「どうやら入口側と湖側で分断されてしまったようだ。私たちは急いでこの岩を壊すから君たちはグラードンの体力を少しでも削ってくれ」
「わかったよ!」
「何をしている!」
グラードンがこっちを見ている。怒りの形相のグラードンはこちらを睨んでまた言った。
「これで思う存分侵入者を叩き潰せるな…紅色の珠よ…曇天の下に輝けっ!」
グラードンはそう唱えるとグラードンの身体と掌に乗せている紅色の珠が紅い輝きを放つ…すると洞窟の天井が崩れて空が見えた。天井が崩れたことで雲の隙間から覗く太陽が強い日差しが照りつけている。グラードン側にいるのはオレとフーコ、カイ、マル、カケルの5人だ。
赤い光から解放されたグラードンは身体がさらに大きくなっていた。
「断崖の剣ッ! 一掃してやる! くたばれ!」
もうダメだ! そう思った瞬間、誰かが前にすっと割って入り、断崖の剣を受け止めた。
「リーフブレード…」
「カレハ! どうやってここに!?」
なんと断崖の剣を受け止めたのはカレハだった。
だけど岩で塞がれていたここまでどうやって来たんだろうか。
「それは後で! それより…このグラードンを…」
「枯葉は消し飛べ! 大文字!」
日照りの下の大文字…これをカレハはまともにくらってしまった。それでカレハは燃えている。
「カレハ!! 」
「所詮、草タイプが炎タイプの技にあたったらおしまいなのだよ。」
グラードンがそう言い切った時、燃えていたカレハから『ぼふっ』という音がしてカレハが消えた。
「なっ…これは…みがわりかっ!」
「私はここです! リーフブレード!」
みがわりの人形が燃え尽きた。それと同時にカレハはグラードンの頭上からリーフブレードを叩き込んだ。
「みんな! 今だよっ!!」
「行くよ! フーコ、カケル、マル、カイ!」
「うん! 僕だって足手まといになりたくない! 守ってもらう側より守る側になりたいっ!」
カイはそう言った途端に彼の身体から白い光が発せられた。なんだ? この光は?
「し、進化!?」
「カイの身体が…!」
「ミニリュウから…ハクリューに進化した?」
「行くぞグラードン! 竜巻演舞!」
「ええい! マッドショット!」
竜巻を纏い激しく舞う…グラードンのマッドショットも跳ね返し強い一撃を食らわせた。
「隙ありです! リーフブレード!」
「うずしお!」
「しねんのずつき!」
カレハとマル、カケルも隙をついては攻撃している。
「暴風の舞!」
「鬱陶しいハクリューだ…マッドショット!」
グラードンはマッドショットで暴風を纏い舞うカイめがけて飛ばした…が、跳ね返された。
「なにっ!? またか!?」
「ドラゴンテール!」
カイの全身全霊のドラゴンテールでグラードンは轟音を立てて倒れた。
「はあっ…ど、どうだっ!」
「や、やったのか!?」
「まだ動くよ!」
「よくもやってくれたじゃないか…マッドショット! がんせきふうじ!」
疲れているカイめがけて二つの技が飛んでいく。もうだめだ! カイッ! 避けて!
オレの声は届かなかったのかカイは虚ろな目をしたまま動かない。
「カイさん! 」
「カ、カレハ! それにマルも!?」
なんとマルとカレハがカイを庇って技を全て受け止めた。
「大丈夫なんか!? カレハ!?」
「私のことは気にしないでっ! あと少しです! グラードンを…!」
フーコは心配そうな声でカレハに言った。カレハの言うとおり今はグラードンを倒すことに専念しよう。マルはカイと気絶してしまった。
「行くぞ! フーコ! みんな!」
「おおーーーーっ!!!」
その時…カイが進化する時に出ていた光がフーコから溢れ出ていた…。もしかして…フーコも!?
フーコは光をに包まれて…フォッコの姿から大きくなった…!? オレの背より高くなってる!?
「いくよっ! マジカルフレイム!」
「くっ…こんなの効かんぞ! 断崖の剣…あ、あれっ!? 原始回帰が元に…」
グラードンの
「そうや。ウチの特性はマジシャンと猛火。紅色の珠はいただいたで! かえんほうしゃ!」
いつの間にか紅色の珠がフーコの掌の上にあった。
「しねんのずつき! くらえっ!」
「とどめだ!! くらえっ! サンダーリング!」
「グオオオーーーーッ!!!」
大きな声を上げてグラードンは倒れた。オレのサンダーリングとカケルのしねんのずつきでなんとか倒した、という感じだろうか。
「や、やった…グラードンを…倒したぞ!」
「でも、本当に…」
カケルが何かを言う前にグラードンは光に包まれて消えた。
「なっ…どういうことだ? グラードンが消えた…?」
「おーい! やっと通れたよ。」
「カイ? フーコ? 」
「進化したのかっ!?」
「カレハっ…! 大丈夫!?」
「あれ!? グラードンは?」
グラードンが塞いだ岩をどかしてレインたちもこちらにやってきた。カイとフーコを見て進化してることに驚いているみたいだ。それに、カレハがボロボロなこととグラードンがいないことに…。
「あれは本物のグラードンではありません。あのグラードンは私が作り出した幻です。」
どこからともなく響いてくる声。誰だ?
「い、今の声は…?」
「私はここを護る者。この先を通すわけにはいきません。」
「ちょっと待った! オレたちは悪いことをしに来たんじゃない! ただ、確かめたいことがあって…」
「確かめたいこと?」
「うん! ほんとだよ! 」
「そりゃ、ウチらは探検隊だから…来たからにはお宝とかもらえた方が嬉しいけど…でも、それが悪いことになっちゃうのなら全然いらないよ!」
「それに僕はここまで来れたことが嬉しいんだ! ねぇ! 信じて!」
オレとフーコとカケルで信じてもらえるように叫んだ。
「わかりました。あなたたちを信じましょう。」
その声が聞こえるとグラードンが消えた時の光と同じ光に包まれ黄色い頭に二つにわかれた尻尾をもったポケモンが現れた。
「はじめまして。私はユクシー。霧の湖の番人です。」
「ええっ!? ユクシーだってっ!?」
ユクシー……この人がオレの過去を知っているかもしれないんだ……。
「はい。私は…霧の湖であるものを護っているのです。今からその霧の湖へ案内します。どうぞこちらへ…」