第四十八話 中間地点
なんとかバルビートとイルミーゼの集団を突破して広い場所に出た。真ん中にはトレジャータウンのガルーラおばちゃんを思わせる石像が置いてある。
「なんとか……切り抜けましたね…ようやく中継地点です。」
「そうやな…グレイにあんな力があるなんてな…」
フーコはバルビート・イルミーゼ軍団との戦いを思い出して、カレハの背中の上で寝ているグレイに目をやった。
オレも驚いた。グレイもカレハと同じように詠唱技を使うのとができるんだな。
「でも…まだ意識的には使えないみたいです」
「え? そうなのか?」
「ええ。口調が違ったでしょ? 自分の意識があってこそ詠唱技が使いこなせるんです。」
「へぇ〜…」
カレハはそう言うがオレにはよくわからないことだらけだ。そもそもなぜ自然が操れるのだろうか。
そう思っているのを見透かしたようにカレハが口を開いた。
「昔のこと創造神アルセウスが詠唱技を幾つかに分けて幾つかの種族に教えました。分ける前の詠唱技は自然をもとに森羅万象を操れます。分けられた種族ごとに詠唱技は受け継がれるはずでした……。しかし、その種族は死に絶えて渋々アルセウスは潜在能力のある者の夢の中に現れて教えるようになったそうです。私の場合もそうでした。」
「詠唱技って…どんなのがあるの?」
カイが気にしたように聞いた。
「私が使える自然詠唱をもとに冷気を操る永雪、地を揺るがす大地、草木を操る草樹、風と音を操る風音、水を操る蒼海、炎を操る業炎、いちばん厄介なのは天雲。雲などを操り天候を自由に操る。まあ、こんな風に詠唱技があるんですよ。」
「へぇ…なんだか凄いや」
カイが感心したように頷いた。
そうだ! フーコにここに来てから感じことをまだ話してなかったな。
「なあ、フーコ…話があるんだ。」
「な、なんや? 」
フーコは驚いたようにオレの方を向いた。カイはまだカレハと喋っている。
オレは濃霧の森に来てから感じたことをフーコに伝えた。濃霧の森を知っているような感覚…そして、そこから考えて自分はここに来てユクシーに記憶を消されたんじゃないか、と言うことを……。
「それならショウ! なおさらこの先を進まないと! ユクシーに会って聞いてみよう。あんたがここに来たことがあるのかを!」
「フーコ…うん! そうだな!」
オレとフーコが話を終えると誰かが中継地点にやってきた。あれは……。
「兄ちゃん! 追いついたよ!」
「やっとだな……はぁ〜…疲れた!」
「休もう…」
やってきたのはカケル達のチームだ。ラルカは疲れたと言っているが、表情にはまだまだ余裕が残っている。ヴィントもだ。チコは少し疲れた様子でヒノに寄りかかった。
「もうしばらく休みましょうか。他の方も来るかもしれませんし……グレイも起きてないですから……」
「そうだね」
「ねぇ、ショウ。ちょっといい? 話があるんだ。」
「ん? ああ、構わねぇよ」
カレハの提案でもうしばらくここで休むことになった。カケルが話があると言った。たぶん…『濃霧の森に来たことがある』ような気がすると言うことだろう。
「実は_____」
内容は思った通り、濃霧の森に来てから感じたことだった。
「やっぱりか……やっぱりカケルもそう思っていたのか。」
「え? ショウも!?」
「ああ。」
カケルは驚いた顔になったがすぐに元に戻って言った。
「この先も頑張って突破しよう!」
「当たり前だ!」
カケルの言葉にそう言って頷いた。オレ達の冒険はこれからだ!
熱水の洞窟 奥地
熱気が占めているダンジョン内。あれからしばらく中継地点にいたがマル達はやってこなかったから先へ進んだ。暑すぎるのか誰も何も言わない。グレイは起きなかったため、カレハが背負っている。
ダンジョンの敵ポケモンも強い奴らが多くて苦戦した。例えば、ブーバー。ただでさえ暑苦しいのに火炎放射を使ってくる。コロトックやバルビート、イルミーゼは引き続き不意打ちをしてくる。フーコやヒノのおかげでなんとか倒してきた。
そしてみんなつらい表情ながらもなんとか広いところに出た。その時…
「追いついたー!!」
「マル! それにリオン、モカ、ラクサス。それにホルンにフィンも!!」
後ろから声がした。振り返るとマル達が走ってきているところだった。
「拙者らも居るでごさる」
「シノハ達も!」
シノハの声とともにソウカ、レイン、シュエル、ジーナスもやってきた。
シュエルやフィン、ホルンには疲れの色が見えているがラクサスやレインは余裕の表情だ。暗殺者や元兵士なだけあってやはり手練れているんだろう。
「おーい! みんなー!!」
そんな中マルが呼ぶ声がする。
「なんだよー!」
そう言ってマルがいる場所までくるとそこには濃霧の森の奥地で見た石像と同じポケモン______グラードンが立っていた。