第四十七話 熱水の洞窟〜グレイのチカラ〜
「おう。来たな。こっちだ。」
しばらく湿地帯を探索をしているとリオンに会った。
「大丈夫だったか? あの後なかなか来なかったから心配した。」
「すまん…」
「いいってことよ! 仲間なんだから…俺にとってはな」
オレはリオンの横に並んで歩いている。フーコ達もその後についてきている。
リオンの横顔は寂しげだったがすぐに元の表情に戻って口を開いた。
「みんなが待っている…急ごう。」
リオンの言葉にみんなが頷いて先へと進む。
少し進むと洞窟があり、そこの入口でサンセットやカレハとグレイ、ラクサス、ヴィント、ラルカ、レインが待っていた。
「あ! 来た来た。」
「待ちくたびれたでござる。」
本を読んでいたソウカが目を上げで言った。それに退屈そうな顔をしてホタチを磨いているシノハが言った。サンセットのメンバーの2人だ。
「待ってたの?」
「あたりまえだ。君たちが謎を解いたのだからな。最初に先に行く権利があるのは君たちだ。」
レインは頷いてそう言ってオレ達を先に行けと促した。
「何人かのチームに分けて行こう。」
「そうだな。どうするんだ? ショウは?」
「オレは…フーコとカイとグレイとカレハで。」
「カケルは?」
「ボク? ボクはチコとヒノ。それにラルカとヴィントと行くよ。」
「ラクサス。君はどうする?」
「僕かあ…リオンとモカとホルンとフィンと……マルと行くよ。」
「なんでボクの前に間を開けるの!?」
「では、私はソウカ、シノハ、シュエル、ジーナス。このメンバーで行こう」
マルは不満げな顔をして文句を言っていた。まあ、こんな感じでみんなと相談してメンバーを決めた。霧の湖で会おうと約束して…。
そして、メンバー別に熱が水蒸気となって出ている洞窟へと足を踏み入れるのだった。
この中はものすごく暑いんだろうな……そう思いながら…。
熱水の洞窟
「暑い熱い暑いアツイあつい……」
「まあまあ…」
洞窟に入るなりグレイがそう呟いている。カレハがなんとかなだめているが彼女は氷タイプ、暑いのは相当辛いはずだ。一緒にいれば涼しいとオレは思ったが、そうじゃなかったな。フーコも体毛のせいで暑そうだ。オレも暑い。この洞窟は水蒸気が絶え間無く出ていて暑いのだ。
「あんたにこの暑さがわかるわけない!」
「…………。」
2人が言い合いを始めた。オレとフーコは暑くてそれを止めることなく見守っている。グレイの言葉にカレハは少し黙るがすぐに口を開いた。
「昔、グレイだって私を逃げられないように押さえつけて凍える風を浴びせ続けたじゃないですか…」
カレハの言葉でグレイの動きが一瞬止まった。実際にあったのだろう。カレハは草タイプ。寒いのが苦手だ。
「その寒さがグレイにわかりますか!?」
カレハが珍しく大きな声を上げた。
「連続斬り!」
突如現れたコロトックが連続斬りで不意打ちをしてきた。攻撃の対象は暑さで動きが鈍っているグレイが狙いのようだ。
「シザークロス!」
カレハ連続斬りをシザークロスで受け止めた。コロトックとは鍔迫り合いになっている。カレハが若干押されているのか、少し後ろに下がっている。ふと、周りを見渡すとブビィやドンメルも近づいてきていることに気づいた。
「グレイ! フーコ! カイ! 敵が近いよ!」
「た、竜巻!」
「みずのはどう…」
カイの繰り出した竜巻は見事にドンメルとブビィに命中! グレイの水の波動は少し威力が小さくみえる。彼女はかなり無理をしているのだろう…それでもなんとか突破した。が、グレイは暑さでダウンしてしまった。
カレハもコロトックを倒したようで岩の影で休んでいる。そこにオレとフーコとカイでグレイを運んだ。
そろそろ行こうと言う時にグレイは起き上がらない。カレハは『多分氷タイプだから暑さにやられたのかも。だから、私が運ぶね。』とグレイのトレジャーバッグから縄を取り出してそれを自分とグレイの身体と結んだ。これで走ってもカレハの背中からグレイが落ちることはないだろう。
ん? でもどうしてグレイのトレジャーバッグには縄が?? まあ、今は考えないようにしよう。
その後も暑い洞窟の中を進んだ。もう少しで頂上なのかというところで…遭遇してしまったのだ。バルビートとイルミーゼの集団に……。
「ほたるび!」
「ま、眩しい!」
視界が遮られてしまう。そんな中バルビートとイルミーゼは攻撃を続ける。
「シグナルビーム!」
「シグナルビーム!」
「ぐわっ!」
シグナルビームが身体に当たり飛ばされる。やっとのことで目を開けるとグレイとカレハはおらず、オレとフーコとカイしかいなかった。
「オレたちで倒すよ!」
「そうやね…」
「わかったよ!」
「ほたるび!」
「まただ!」
「どうすればいいのよ!」
「眩しいっ……」
眩しさに目を細める。またシグナルビームが飛んでくる…! その時…。
「待ちなさい…」
どこからか透き通った声が聞こえてきた。
「なんだ!?」
「アイス・ポーン」
その声とともにバリーンと何かが割れた音がした。それが何回も続いた。
「よ、よくも…!」
「退きなさい……退けば危害は加えません。」
要約目を開けることができた。目を開けるとそこにはグレイがいた。さっき暑い暑いと言っていた時と大違いだ。
「うるさい! 獲物にてをだすんじゃない! シグナルビーム!」
「アイス・ルーク……守れ…」
グレイにシグナルビームが襲いかかる。しかし、地面から氷の塊がでてきてそれを防いだ。
「よかった…大丈夫だった?」
「ああ…ありがとな!」
カレハがオレたちの前にいきなり現れた。顔には無事でよかったという安堵の表情が浮かんでいる。
グレイにバルビート、イルミーゼが夢中になっている間にカレハが助けに来てくれたのだろう。
「ちっ! 蛍火!」
「…小癪な」
「虫のさざめき!」
「永雪詠唱……アイスハリケーン…散れ…」
冷気を纏う風にバルビート達は飛ばされてどこかへと消えた。
「グレイ! ありがとな!」
「……無事でよかったな…」
グレイの目を見るといつもの青い目ではなく灰色の目だった。無事でよかったの一言を言うとバタリと倒れた。
「グレイ!」
「たぶん無意識に能力を使いすぎたのでしょう。グレイは詠唱は使えませんでしたから…」
「グレイはウチが背負う! さあ先に進もうよ!」
「そうだな。」
グレイは詠唱に覚醒したのだろうか? カレハもかなり驚いていたみたいだ。フーコが小さな身体でグレイを背負いカレハがそれを追う。
「ショウ? 僕たちも行こうよ?」
「ああ!」
カイに促されてオレは足を進めた。この先はどうなっているのだろうか? それは誰にもわからないことだ。