第四十五話 濃霧の森と石像の謎
オレは朝、テントの中で目を覚ますとカレハが寝ぼけ眼で起き上がろうとしていた。だけどお腹の上にあるグレイの頭のせいでなかなか起き上がれないみたい。
「ショウ…おはよー…」
「ああ…おはよ。冷えるなここは…」
「霧のせいで光が届かないから…ね。私の日課の光合成をしても身体がなかなか温まらないし…」
カレハはグレイの頭をどかして言った。
「それならフーコに頼んで温火をしてもらったらどうだ?」
「温火?」
「ああ。身体を温める優しい炎の技だ。
「お願いしようかな…」
カレハと話しているとフーコと寄り添って寝ていたシュエルが目を覚ましたようだ。
「おはよう…ショウ…」
「おはよ、シュエル。」
オレはそのあと寝ていたフーコを起こして、シュエルと3人で朝食を食べにテントの外へ出た。そのあと、カレハはグレイのせいで起き上がれずに、困り果てていたがすぐにグレイの脇腹をくすぐり起こしたそうだ。
料理長ハープの朝御飯を食べている時、カケル達も遅れてやってきた。チコ、ヒノやジーナス、マルがいる。続いてホルンにフィン、ヴィントにラルカ、レインや親方様にトリルが現れた。
そうしてワイワイ話しながら朝御飯を食べ、食休みをすこしとり、やがて濃霧の森へと入って行くギルドメンバー達を見た。
オレ達のチーム、ポケダンズ(このチーム名早く変えたい)はそれぞれ話し合いメンバーを決める。オレはフーコ、カケル、シュエル、チコ、ヒノと行くことにした。
ヴィント、ラルカ、レイン、ラクサスはしばらくここで親方様やトリルと話をしているようだ。
そろそろ行かないとな。霧の湖に行ってユクシーに会うんだ…そして、オレはここに来たのかを聞くんだ。前をゆくフーコ達の後ろ姿を見ながらそう思った。
「あれ? 」
「どうしたの?」
「こんなところに紅い石が…」
フーコの目の前に紅い石が落ちていた。誰かが落としたのだろうか…それとも偶然落ちていたのだろうか。
「わあ…この石暖かいよ! ウチにはちょうどやわ。もらってこ!」
「フーコ行くよー!」
「チコが呼んでる。行こうフーコ。」
「うん!」
オレとフーコは前にいるチコ達と合流した。そして、オレ達6人は濃い霧の立ちこめる森へと踏み込んだ。
濃霧の森
霧が濃い。そのせいでオレの得意とする電気タイプの技の威力が下がっている。そのせいでヨルノズクに苦戦をしている。氷技を使えるグレイやマルとは別行動をしている。
「催眠術!」
敵のヨルノズクが催眠術を繰り出す。それを必死に防ぐしか手だてがない。
「指をふる!」
カケルが指をふると…霧が少し晴れた。もしかして『霧払い』がでたのか? それなら…。
「電気ショック!」
「ぐわああーーーっ!!」
霧が晴れたことにより、電気タイプの技の威力も元通りになりヨルノズクを倒すことができた。
それでも奥に進むにつれて霧は濃くなるばかり。はぐれないようにそれぞれ仲間の手を取り先へ先へと進む。
「凄い! 水がところどころから滝のように流れてる!」
「ここがいちばん奥みたいですね。」
しばらく歩くと、広い場所に出た。ヒノが言うとおりここが森のいちばん奥みたいだ。フーコが言うように確かに、周りからは水が上から落ちるような音が聞こえてくる。ふと、オレは耳を澄ますと誰かが呼んでいる声がする。
「おーい! こっちだ! ヘイヘーイ!」
「ここですよショウ!」
透視を使って前方を見ると霧が少し薄くなり、ヘインとライムがオレ達を呼んでいる。
「なんか見つかったかい?」
「いや…何も……そっちは?」
「私たちも…何も見つかってないです。こんなところに像があること以外は…」
ライムが大きな石像を指差して言った。よく見るとその像の台座には『グラードン』と、いう文字が刻まれている。
「でっかい像やねー…」
フーコが石像を見て溜息をついた。ヒノやチコも石像を見ているので、オレも石像をよく見てみることにした。
あれ? よく見ると胸のところに窪みがある…何かを嵌め込むのか? あれに入りそうなのは…。
「なんかここに文字が書いてあるよ」
「お手柄よ! カケル! シュエル!」
カケルとシュエルがいるところは石像の側面。そこに銅板があり、何かが刻まれている。
「足型文字…読んでみるよ。『グラードンの生命灯しき時、空は日照り宝の道開くなり。』」
ヒノが読んだ。つまりはこの謎を解けば…霧の湖へ行ける、ってことなのか?
「宝の道だってぇ!?」
その声のする方を見るとマルが走ってきた。その後ろからはカレハ、グレイ、フィン、ホルン、ジーナス、カイ。そして、チームサンセットの4人。
「もしかしたら…」
フィンが声を出したのでみんな彼女の方を見た。
「霧の湖のお宝のことじゃないかなぁ…そして霧の湖へ行く方法が隠されているのかも。」
「なるほどー!」
「本当か!? それならがんばって謎を解こうぜ! ヘイヘーイ!」
「そうだね」
グラードンの石像の謎…どう解けばいいのか全くわからない。気がついたら、グレイがそっとオレの隣にきて耳元で囁いた。
「ショウ。石像に触ってみれば? もしかしたら…『時空の叫び』が、発動するかもよ?」
グレイに言われて思い出した。滝壺の洞窟の探検の後にグレイが時空の叫びについて言っていたことを。
「この石像の生命を灯せばいいんだよね。問題はどうやるか…グラードンはこの石像だし…」
「なあフーコ。」
「何? ショウ?」
「この石像に触ってみたいんだ。」
フーコは少し黙った。そのあと『時空の叫び』のことを思い出したようにショウに向き直り言った。
「なるほど! 何か見えるかも知れない! わかったよ!」
霧の湖へ行く道が…そして、自分の過去を紐解く鍵がこの石像にあるのなら…触れば何かわかるかもしれない。そう願い、オレは傾いているグラードンの石像に触れた。
するとやはり目眩に襲われる。きたか…。
『そうか…ここに…ここに____________があるのか! 』
今のは…今のは誰の声だ? 聞き取れないところが…!
えっ!? …またくるのか…連続で……。
『なるほど。グラードンの心臓に日照り石を嵌める。それで霧は晴れるのか! 流石だな! やっぱり俺のパートナーだ!』
今のはいったい…? 今まで見たものとは全然違う。今回は声だけ…しかも誰の声だったのかもわからなかった。あの声…あの声は誰なんだ? どんな声なのか印象すら残っていないけど…なんでだ? すごく気になる。
「どうしたの? もしかして、何か見えたの?」
「ああ…えっと…」
思い出すんだ…声が何と言っていたのかを。
「グラードンの心臓に日照り石を嵌めると霧が晴れる…と言っていた。」
「確かに石像の胸の辺りに窪みがあるよ!」
チコがグラードンの石像の胸のあたりを見て指さして言った。
日照り石…もしかして……フーコが入口で拾った石がそうだとしたら…
「フーコ。濃霧の森の入口で拾った石をこの石像にはめ込めば思ういいと。」
「本当!? それじゃやってみるよ? えいっ!」
フーコが日照り石を嵌めるとグラードンの目が光り、地面が揺れた。
「あぶない! 離れよう!」
グラードンの放つ光に襲われフーコ達は悲鳴を上げた。視界が回復すると霧など最初からなかったかのように消えていた。
「霧…晴れたね。日差しがまぶしいよ」
シュエルが静かに言って空を見上げる。するとシュエルは驚いた声をあげた。
「みんな! 上を見てください!」
「おお! あれは…」
「ラピュt「違うと思うよ…」
マルの言葉をカケルが即座に遮る。某ジブリ作品じゃないんだからな。
「大きいな…」
シュエルに言われてみんな上を見ると空には大きな何かが立っていてそこから滝のように水が流れている。
「靄が晴れてやっとわかったよ。霧の湖が今まで誰にも見つからなかったはずだよ。ウチらもここをウロウロするしかなかったんだから。」
フーコは納得したように言った。
「ヘイ! それってさ…まさか霧の湖はあの上にあるってことなのか? ヘイヘーイ!」
「うん。私はそう思う。きっとあそこのいちばん上に霧の湖があるんだよ。」
へインが驚いたように言った。
「そいつぁ凄い! 」
「私とヘインさんで親方様達に知らせてきます。サンセットとショウたちは先に進んでください。」
そう言うとへインとライムの2人はベースキャンプに戻っていった。
「俺らは先いくよ?」
「うん!」
サンセットとカレハ、グレイは先に進んでいった。
「ウチらも早く行こうか。霧の湖へ!」
「ああ!」
「待ちなっ!」
滝の音に紛れて紫色の三人組が現れた。公害トリオだった。