第四十二話 沿岸の岩場の戦い 後編
side ショウ
「そういえば名前はなんて言うんだ?」
「あ……言い忘れてた……。僕はカイだよ。」
「カイか。オレはショウだ。よろしくな。」
「あそこが入り口よ!」
ミニリュウはカイと名乗った。まだ傷は癒きってはいないが随分よくなったと思う。
そして船が泊まっている場所についた。そこにはまだ小さいラルトスがいた。
「ち、近づかないで!」
「君は…?」
「こ、これ以上近づくと…攻撃しますよ…は、離れて!」
「意地でも通してもらうわ! 火炎放射!」
「念力! お返しします! そこのリーフィアさんに!」
どういうことだ? こんな小さい子がなんで…? そうか……海賊が戦わせているんだな。
カレハに返した火炎放射が向かう。
「「よけて! カレハ!」」
フーコとグレイが同時に言ったがカレハは動かない。動けないのだろうか?
「はたきおとす!」
カレハは動けなかったのではなく、動かなかったのだ。高く飛んでカレハは念力で操っている火炎放射をはたき落とした。しかし体毛が少し焦げて前脚が赤くなっている。火傷したのだろう。
「まさか…はたき落としたというの!? それならサイコウェーブ!」
カレハが火炎放射をはたき落としたことにラルトスは驚きを隠せないようだがその後、サイコウェーブを連射してきた。一つ一つ大きさが違う。それをすり抜けてグレイがラルトスに突進する。
「電光石火ッ!」
「サイコキネシス!」
「なっ……」
グレイの電光石火がサイコキネシスで止められ宙に浮く。そしてラルトスはグレイを地面に叩きつけた。
「い、痛い…」
「グレイ!」
「あたしは平気…よ!」
グレイは辛そうな顔をしているが立ち上がった。カレハは心配している。かわいそうだけどこのラルトスにはここをどいてもらわないとな。
「そこを通すんだ。」
「ダメ。ここは通さない。」
「もう無理ですね…」
頑としてラルトスは動かない。カレハが呆れたように言うと草笛を吹きはじめた。するとラルトスは眠ってしまった。
「私とグレイがこの子を見張ってますから船内に進入してください。」
「サンキュー、カレハ!」
「がんばって!」
カレハとグレイの想いを受け取りオレとフーコとホルンとフィンは船の中へ。
海賊船 甲板
なんとかバレないで進入できたみたいだ。よし…七幹部の残り四人に注意しつつ頭領を倒そう。だいたいこのような集団はリーダーを倒したら壊滅するもんだ。
「…見つかってないとでも思っていたのか?」
はっとしてその声の方を見るとキリキザンが立っている。
「お前は…」
「俺は海賊七幹部。キリサメ。お前らの命をいただこう…」
それだけ言うキリサメはオレに不意に斬りかかってきた。もうだめだと思ったらそこには…なんとカケルがいた。
「ゆびをふる! まもる!」
「カケル!」
「兄ちゃん。大丈夫?」
「お前のおかげでな。」
「危ないとこだったね」
よく見るとカケルだけではなくラクサス、ジーナスにヒノもいた。マルにライムやハープ、ビータはチコ達の方に加勢に行ったらしい。
「ちっ! 仕留め損なったか…」
「あらあら…情けないわね。」
「ルテア!」
「キリサメ。早いとこ片付けするよ。私は七幹部の一人、ルテア。よろしくねっ! どくどく!」
挨拶代わりにどくどくをうってきた。
「アロマセラピーです!」
「厄介だねー」
「十万ボルト!」
「守る」
「…あのチルタリスの型が読めました。」
「本当か!?」
「えぇ。おそらくどくどく、守る…ハイパーボイスか龍の波動でしょうか。あと、あるとしたら身代わりですね」
「冷凍ビーム!」
油断していたルテアにマルの冷凍ビームが命中。間一髪翼で防いだが、表面が少し凍ったみたいだ。
「…やーめたやめた! 抜けるわ!」
ルテアはいきなりふざけたことを言い出した。キリサメも目を見開いて驚いている。
「え? おまえ…ボスが怖くないのか!?」
「ぜーんぜん。私は飽きたから帰るわ。キリサメ、あとはよろー!」
「ちょっと待てー!」
「待ちませんよ…火炎放射!」
逃げるルテアをキリサメが追う。その背後からチャンスとばかりヒノが火炎放射を食らわせてキリサメを倒した。火炎放射の勢いでキリサメはドアにぶつかった。
「なんだよ…うるせぇな。俺が気持ち良く寝ていたのに…」
船内から出てきたのはイラついた様子のシザリガー。赤いバンダナをつけ、背中に剣を2本持っている。
「ちっ! 雑魚どもが負けやがって! 使えねぇなあ!」
シザリガーはそう言うなりキリサメをハサミで持ち上げ海に放り投げた。キリサメはドボンと音を立てて海に沈んでゆく。それからオレ達を睨みつけ言った。
「こんなガキどもに負けやがったのか…おい!奴隷ども! 出てこい!」
そう言うとまだ小さいメリープやカラカラ、ワンリキーにサンド、ヒメグマとたくさんの奴隷が出てきた。
「ガキども…海賊を_______アルバン・トリエート様を舐めんなよ! 行け! 奴隷ども!」
「何故こんな小さな子を攫って行くんだ!」
オレは奴隷達の攻撃をかわしながらアルバンに尋ねた。
「そりゃあ…金持ちに奴隷として……売りつけるためさ!」
そうすると海賊の頭領、アルバン・トリエートは言う。なんてあくどい野郎だ…。
「許さねぇ! 電気ショック!」
「ボクにも任せて! 波乗り!」
オレの電気ショックとマルの波乗りで奴隷達を一掃した。するとアルバンはこう言った。
「部下なんて道具に過ぎない。どいつもこいつも役立たずばかり…」
なんてやつ…本当に許せない!
「電気ショッ…」
「待って! ここは僕にお任せを! ショウを死なせるわけにはいかないね。」
「ど、どういうこと?」
「アルバン・トリエート。やつは札付きのワルだ。部下を平気で殺す。だから元暗殺者の僕に任せて…ね?」
オレは頷いてラクサスに後を託した。
「水流二斬撃!」
「はいはい…っと」
アルバンの剣の連撃を余裕の表情で後ろに跳んで鮮やかにかわす。
「舐めんな! はたき落とす!」
「あ、剣が!」
ラクサスの右手首にアルバンの技が当たり、ラクサスは剣を落としてしまった。
「今だ! 龍舞斬撃!」
「アイアンテール!」
隙をついてアルバンはラクサスに攻撃するが読んでいたかのようにラクサスはアイアンテールで打ち返した。
「もう一発!」
「十万ボルト!」
ラクサスはもう一撃のアルバンの竜舞斬撃をかわして、十万ボルトを甲板に繰り出し、うまく身体を浮かせてよけた。甲板の板はバリバリと崩れた。それと同時にラクサスは黒雷の剣を拾った。
「お前みたいな悪人には容赦はいらないね! 黒雷乱舞!」
ラクサスは剣を振り回しアルバンに攻撃する。その威力にアルバンは剣を弾かれ剣は海へ落ちた。すると焦った表情に変わった。
「ち、畜生! 逃げる!」
「自然詠唱! 搦手の蔦草!」
どこからともなく聞こえてきた声と同時に船の底を突き破りツタが生えてきてそれがアルバンを絡め取った。
「大丈夫ですか?」
そこにやってきたのはカレハとグレイ。そしてあのラルトス。
「おい! ラルトス! 俺を助けろ!」
「もう無理ですよ…私は負けましたから…」
「道具の分際で俺に逆らうのか!」
「 ……私はあなたの道具じゃない。私自身の事は私が決めます。」
そう言うとラルトスは念力で木箱を持ち上げアルバンに投げつけた。アルバンは気絶しそのあとやってきたジバコイル保安官に無事逮捕された。一方、海に投げ捨てられたキリサメは出頭し、三猿は逮捕された。ルテアとかいうチルタリスはお尋ね者として指名手配されたそうだ。
「なあ、ラルトス。お前の名前なんて言うんだ?」
オレはラルトスの名前を聞いた。
「シュエル………シュエル・トワイライト。それが私の名前…」
「そうか。シュエル、オレ達と一緒に来ないか? いや…仲間になってくれ! 頼む!」
「は、はい! これからよろしくお願いします!」
シュエルは快く頷いた。
「よし! みんな行こう!」
「おー!!」
そしてオレ達はベースキャンプに向かって再出発した。
シュエルを仲間に加えて進むショウ達の前に次に立ちはだかるのはツノ山だった。
もう陽が沈みかけているので今夜はこの山の麓で休むことにした。
「ここでご飯にしようか」
「そうですね」
「俺に任せろ。」
そのあとテントを張り、ハープの作る美味しい夕食を食べて明日に備えてショウ達は休むのだった。