第四十一話 沿岸の岩場の戦い 前編
side ショウ
オレ達沿岸の岩場を通るフーコ、チコ、フィン、ホルン、ヴィント、ラルカ、グレイ、カレハ、レインの10人はデコボコしている岩場を通っている…が、敵ポケモンが少ない。
ショウの頭の中には情報屋ザッタの言葉が思い出された。彼の情報によるとここら辺には海賊がよく現れ港町を襲うらしい。しかも女子供を奴隷にして容赦せず戦わせるという話だ。出会いたくない…そう思っていると出会ってしまうものだ。だから考えないようにしよう。
ショウはそう思って歩いているとフーコが声を上げた。
「ショウ! あそこに誰か倒れてる!」
フーコの視線の先を追うとそこにはミニリュウが倒れていた。
「本当だ! おい! 大丈夫か!?」
「ん? 君は…? いや! それより早く逃げて…」
「え? 」
「海賊…アルバン・トリエートが僕の村を襲撃……した。」
ミニリュウは息苦しそうに言う。身体のあちこち傷だらけだ。なんとかしないと…。
「ヴィント!」
「わかってる! 今、薬を作る! 」
ヴィントはどこからか木の実を取り出しすりつぶし薬を作り始めた。
それにしても…ザッタの言っていた情報は正しかったんだな。
あ、あれ…? …目がおかしくなってきた…あれ? 岩が透けてる? あれバンダナをしたコマタナが見える!? 少しずつこっちに近づいてきている。後ろにあった岩の方を見るとやはりバンダナをつけた軍団がいた。
「ショウ、どうしたの? 目の色が…金色に……」
「金色?」
「レントラーとその進化系が持つ能力…透視じゃねぇのか? 透視をする時は目が金色に輝くらしいぜ?」
ラルカはそう言った。
なるほど…透視か。だから岩の後ろにいる奴らが見えたのか。…ってそんなこと言っている場合じゃない。頭をぶんぶんと横に振ると透視は解けたのか元の景色に戻る。
「海賊に周りを囲まれてる! 」
「な、なんだと!?」
「…警戒するしかないわね」
チコは言った。でも、どうやって?
フィンやホルンは不安そうな顔をしている。このメンバーの中でレインがいちばん落ち着いている。流石は元軍人でそれに指南役と言ったところだろうか。
「みんな、気を引き締めるんだ。気配は近い。ヴィントとミニリュウを護る者と海賊を相手する者とで別れるんだ。」
戦い慣れしているレインが的確な指示を出す。とりあえず今はレインの指示に従おう。
「それじゃ、ラル、ホルン、フィン、カレハはヴィントとミニリュウを護る方、オレとフーコ、チコとレインとグレイは敵と戦うよ。」
「了解。」
「わかったよ」
「ショウは透視して敵の位置の確認。」
「よし。えいっ!」
目をつぶりまた開くと透視していた。海賊軍のコマタナやヘイガニが来た!
「来たよ! みんな!」
「攻撃用意! 」
そこにコマタナとヘイガニが入ってきた。
「お、あの村の子供がこんなところにいるとはな…って…ええええ!?」
コマタナはミニリュウを見つけたがショウ達がいて唖然とした。その隙をついてショウ達が攻撃する。
「今だ! 電気ショック!」
「だいもんじ!」
「葉っぱカッター乱舞!」
「火炎放射!」
コマタナとヘイガニは技をまともに食らったな。有効だったみたいだ。
「あっちち!」
「あつひ!」
「それなら……冷やしてあげる! 吹雪!」
グレイが放つ吹雪がコマタナとヘイガニを凍らせた。その後ろから新手が来た。そのときヴィントが声を上げた。
「こっちの治療は終わったぞ!」
ヴィントがミニリュウの治療を終えたみたいだ。
「…いけない。急いでここを離れましょう!」
「なんでだ?」
「いいから! 追い風・強!」
カレハに言われるままこの場を離れる。チコとグレイを先頭にフィンを乗せたホルン、ミニリュウを担いだラルカとヴィント。それにオレとレイン、フーコ、最後にカレハとつづく。数十秒後さっきまでいた岩場が爆発した。
「カレハ。どうしてわかったの?」
「遠くの方に破壊光線を溜めている人が見えましたから…」
フーコが疑問に思って聞くとカレハはそう答えた。
カレハの観察力のおかげで無事に破壊光線をよけることができた。
しかし…あの海賊……許せない。村を襲い壊滅させた上、ミニリュウをこんな目に遭わせるなんて……。
「みんな。聞いてくれ。」
「どうしたん? ショウ」
「オレは今からあの海賊船に乗り込んでリーダーを倒してくる。」
「む、無茶だよ! 他のルートを安全に…」
「ここで放っておいたらトレジャータウンの海岸にまで被害が及ぶかもしれない。だから海賊の頭領を倒して保安官に引き渡す。だから、みんな…協力してくれ!」
「………」
少しの間みんな沈黙した。そして誰かが口を開いた。
「私は…協力します!」
なんと口を開いたのはカレハだった。
「ぼ、僕も……」
そう答えたのはなんとミニリュウだった。傷が少し回復し自分で動けるようになったようだ。
「ウチもいくよ! ショウ!」
「カレハがいくならあたしも!」
「まあ待て…次々そうやるのならいっそのこと全員で乗り込むぞ」
フーコとグレイが名乗りを上げたが、レインが全員で行こうと言った。
「みんな行こう!」
「どこに行こうと言うんだい? お前達はここでくたばるんだよ。」
「誰だ!?」
ショウが行こうと言うとどこからともなく声が聞こえてきた。
「久しぶりね、ショウ。それにフーコ。私は海賊七幹部の一人…冷徹のアマギよ。」
「お前は…あの時の!」
オレはあのアマギというヒヤッキーの女幹部に見覚えがあった。確かお尋ね者で西の山岳地帯でオレが捕まえたはず…。隣ではフーコが目を見開いている。
「ということは…!」
「そう! 俺、疾風の炎のゴウカ!」
「…それとイバラだ。」
穴を掘ってやってきたのか地面からバオッキーとヤナッキーが出てきた。
「七幹部の内の三幹部を相手にこの軍勢に勝てるかな?」
3人の後ろにはコマタナやヘイガニ、キバニアが主にいる。ざっとみて合わせて100人はいるだろうか。
「ここは私が抑えよう。」
「オレも残るぜ!」
「俺もだ。ショウ、先へ行け!」
「アタシも残る!」
「頼んだ! レイン、ヴィント、ラルカ、チコ!」
「任せなさい。」
「こんな猿の一匹や二匹……」
「簡単に蹴散らしてやるぜ!」
「大きく出たわね。私達のコンビネーションはすごいのよ? 思い知らせてあげるわ」
ショウ達が船の方へ行った後、アマギは不敵な笑みを浮かべ自信満々に言うのだった。
side チコ
ショウ達が行ってしまってからアタシはレイン、ヴィント、ラルカとともに三猿と戦っている。雑魚は大半倒してあとはアマギ、ゴウカ、イバラだけね。
アマギはヴィント、ゴウカはラルカ、イバラはレインと相性は良いはずなのにそれでも三猿相手に少し手こずっているみたい。三猿の特性は食いしん坊木の実を早めにたべるという特性。
「ちっ! なかなか倒れないな…」
「あっはは! 私に勝てないの? 相性は良いのにねぇ…美味しい。」
アマギは木の実を食べながらヴィントを挑発している。
その時、アマギの前を黒い影が通り過ぎる。しかし彼女は気にする様子もない。そしてこう言った。
「ゴウカ、イバラ! とどめをさすわよ!」
「はいよっと」
ヴィントの前に三猿が集まってくる。ラルカとレイン、そしてアタシはヴィントの援護に向かう。
「行くわよ! 三位一体アクロバット!」
「守りの渦潮…」
ヴィントの前に誰かが飛び出した。よく見るとそれは別行動のはずのマルだった。
「なっ…マルがどうしてここに!?」
「ヴィント。奴らが持っていた木の実をスってきた。」
そしてどこからともなく現れたハープ。ライムとビータもいる。
「ヒノやカケルのおかげでなんとか間に合ったでゲスね」
「そうですね。危ないところでした。」
「冷凍ビーム!」
マルが冷凍ビームでイバラを凍らせた。それを解かそうとしたゴウカはマルの渦潮にとらえられた。アマギは逃げようとしたが保安官の電磁砲をくらい、捕まった。あとはショウの方だね。大丈夫だよね…?