第十二話 カクレオン商店でアルバイト?前編
西の山岳地帯の遭難者を助けたあとオレたちのチームのランクがアップしてシルバーランクになった。助けたキルリアのワラルだがあれからもとの住処に無事に帰れたらしい。あと三猿はジバコイル保安官に引き渡した。Sランクのお尋ね者でトリルも「お前たちなかなかやるじゃないか♪」と、珍しく褒めてくれた。
そんなある日…
「えー…朝礼は以上で終わりだが…今日は風が強いから依頼の際にはくれぐれも気をつけてくれよ」
「わかりましたわ!」
「それじゃ解散!」
持ち場についたり依頼をこなしに行ったりするために散っていく。風が強いと軽いポケモンは飛ばされてしまう。風の強い日は探検家の死亡事故が案外多いらしい。ダンジョン内で同じフロアにとどまり続けると最終的に強風に吹き飛ばされることがある。風が強い日はそれが早まるらしいのだ。
「私たちも依頼の仕事を…」
「あー…お前たちはこっちにこい」
「なんだなんだ?」
「お前たちにはすまないが少し頼みがある。」
「どないしたんトリル?」
「カクレオンさんから頼まれてな…何人かアルバイトに来て欲しいとのことだ。」
「構わないけど…新人のオレらで大丈夫か?」
「他のメンツは依頼で忙しいからな。新人の内に社会経験を…と思ってな。それじゃ頼んだからな!」
トリルはそう言うとそそくさとどこかへと去っていった。
「なーんか押し付けられたというか…うまく丸め込まれたというか…」
「確かに…」
「それにしてもショウ。アルバイトって何をするんだろ?」
「さあな…オレに聞くなよ。とりあえず行くぞ」
「はーい」
まあうだうだ言っても始まらないし店まで行くしかないよな。
トレジャータウン カクレオン商店前
強風が吹き荒れる中、トレジャータウンのカクレオン商店まで来ると既にカクレオン兄が待っているようだ。
「あっ!待ってましたよ!ショウさん達がアルバイトに行くからよろしくとトリルさんから聞きまして…」
「は、はあ…」
強風の中なのにこの人の声はよく通る。流石は商売人だ。
「早速品出しをお願いします」
「いきなりか?」
「はい!商売は厳しいですから〜」
「えーめんどくさー」
マルはやる気がないな…カクレオン兄は若干呆れている。しばらくして突然カクレオン兄が目をキラリと輝かせてこう言った。
「働き具合によっては何かいいものをバイト代につけますよ〜」
「喜んでやらせていただきます!!」
カクレオン兄の言葉を聞くや否やマルのやる気スイッチはオンになったようだ。まったく…なんてやつだ。
「それじゃ、フーコさんとチコさんは掃除お願いしますね〜。ロッカーにいろいろと用具はありますよ。ショウさんマルさんは私の方を、弟の方にはカケルさんとヒノさん。手伝ってください。弟の方には技マシンとふしぎだまを。私の方には木の実、タネ、装備品を持ってきてくださいね〜!さあ、商品をもってきてください!はい、品出しリストです。これを見てね」
「それじゃやるか!頑張るぞマル!」
「おー!」
「私たちも」
「うん。がんばろヒノ」
「それじゃ頑張れよ2人とも!行くぞマル!」
「チコ!ウチらも!」
「そうね!がんばろ!」
リストを受けとりショウはマルを連れて品出しする為に店の倉庫に向かい、カケルはヒノと一緒に別の倉庫に向かい、フーコとチコは掃除をする為に店の中へ入った。
side ショウ
視点は変わらずオレだぜ!早速品出しをするとこだが…マルがいない。
「おーいマル!」
「美味しそうなリンゴ…」
マルを見つけたかと思えば商品のリンゴを目の前にしてよだれを垂らしていた。まったく…やる気あるのか?
「マル!」
「ショウ!どうしたの?」
「勝手に消えるなよ…あと品出しリストにリンゴはないぞ」
「ナ、ナンダッテ〜!!」
「リストにはしばられのタネ、復活のタネ、青いグミ、モモンスカーフ。不眠スコープに爆音ハチマキを3個ずつって書いてある。」
「じゃあ探そー!」
「爆音ハチマキと不眠スコープは3個ずつ見つけたから。あとはグミとタネとスカーフだけだ。」
「ショウ早いね見つけるの」
「お前がリンゴの前でよだれを垂らしてる間に見つけたんだよ。このままじゃマル、お前いいものもらえないぞ」
「そ、それはダメッ!ボク、モモンスカーフ探してくるね!」
「間違えるなよー」
不安だなあ…間違えそうで。
そういやカケルやフーコの方は大丈夫かな?
side カケル
「うわあ〜〜…いっぱいありますね…」
「技マシンってこんなにあったんだね〜…」
ボクは技マシンを初めてみたけどその量に圧倒されている。ヒノが言うには100種類以上あるんだとか。
「ところでリストには何て書いてあるの?」
「えっと…おんがえしとやつあたりを1個。はかいこうせんを2個。ギガドレインを2個。それに敵縛り玉を7個。変幻の玉を2個。雨玉を1個_____たくさんありすぎる…」
「そ、そんなにですか!?まずは玉からやりますか?それとも技マシンから?」
「技マシンの方が辛そうだから玉からやろう」
技マシンは100種類を超えるみたいだし玉の方が楽かな。
「そうしますか…」
探すこと数十分後________
「ありました。雨玉と変幻の玉」
「ヒノ見つけるの早いね」
「ありがとうカケル。あっ!カケル!」
「何?」
「そこの棚に敵縛り玉が!」
「おおっ!ナイスだよヒノ!」
「次は技マシンだね」
「うん。」
さらに探すこと数十分後________
「あった!ギガドレイン!これを2個…っと」
「カケルー!こっちもおんがえしとやつあたりを見つけましたよ!後ははかいこうせんだけですよ!」
さらに探すこと数十分____
「…見つかりましたか?」
「いや…ないよ。はかいこうせんだけ見つからない…」
「どうしましょう…」
「もう一回探そう。」
「どこにあるんでしょうか…」
はかいこうせんだけ見つからない!どうしよう!いざとなったらカクレオンさんに聞こう…。今頃兄ちゃんたちはどうしてるかな…。
side チコ
お店のお掃除って大変ね!店のショーケースや店先の掃除をいつもカクレオン兄弟2人でこなしてるのねー…すごいわ本当に…今、アタシはフーコと一緒に店内の掃除をしている。今までバイトも雇わず2人でやってきたのね。ハタキで高いところの埃を落としたりするのはチコリータのアタシやフォッコのフーコには小さいから大変。高いところになかなか手が届かない。
「2人とも!そのくらいでいいですよー!」
「はーい!」
そこにカクレオン弟がやってきた。
「フーコさんとチコさんはこれで終わりですよ。はい。アルバイト料の2500ポケ。それと…物変え玉と光の玉をどうぞ!」
「ありがとう!」
「いや〜またお願いしたいですね」
「さて、ギルドに戻ろうよ」
「そうね。じゃあねカクレオンさん」
「今後もカクレオン商店をご贔屓に」
カクレオン商店を出る頃にはだいぶ風も穏やかになっていた。
「なあチコ」
「何? フーコ。」
「久々にサメハダ岩に行かない?」
「あ、賛成!どうなってるかな?行こ!」
サメハダ岩はギルドに入るまでに住んでいた場所なの。アタシとフーコとマルにヒノ。他にも2人一緒に暮らしてたんだ______
後編へ続く?