第九話 救助要請
「起きろ!急げ!早くしろ!」
ボイムの馬鹿でかい声で目を覚ます。今日はかなり焦った声だ。
「ボイム…おはよう。なにかあったの?」
「起きたか!すまんな日が登らないうちから…実はな…西の山岳地帯というダンジョンで吹雪による遭難者が出たんだ」
「吹雪!?この季節に?」
「ああ…この季節は普段は雪は降らない。だから油断して遭難したのだろう。とにかーく!いつもの朝礼のとこに行け!事態は一刻を争うからな!」
ボイムはそれだけ言うと部屋から出ていった。
「はい!起きろみんな!」
「な、なんです?まだ夜中ですよ?」
ヒノが起きた。少し顔をしかめている。やっぱまだ夜中だからな
「ごめん!でも急いで来いって!」
「わ、わかりました!マル!チコ!大変です!」
「フーコ!カケル!起きろ緊急事態だ!」
「な、なんなん?どないしたん?」
「どーしたの…にーちゃん」
フーコとカケルはすぐに起きてくれた。
「……」
「寒い…」
マルとチコは起きたがマルはまだ寝ぼけてる。チコは毛布をかぶって起きた
「全員起きたみたいだね。早く行こう!」
「せ、せやね」
「急ぎましょう!」
いつもの朝礼の場所にくると眠そうな顔をしたトリルやヒナたちギルドメンバー全員が集まっていた。
「…あー…朝早く日が登る前からすまないと思う…ジバコイル保安官から緊急の依頼が入った…」
部屋は篝火の光しかなく暗い中集会が始まる。トリルはかなり眠そうだ。
「どんな依頼なんだ?ヘイヘイ」
いつも元気なヘインも眠いのか声のトーンがいつもより低い。
「西の山岳地帯で猛吹雪による遭難者を救助してくれ…とのことだ」
ボイムが言ってた一刻を争う事態ってこれなのか。
「西の山岳地帯…ってここからそう遠くないな」
「ああ…だからこのギルドにこの依頼がきた。今から救助へ向かう者とギルドに残る者を発表する。呼ばれたら前に出るように…」
「まず…ボイム、ヒナ。」
「ワタシですか…」
「ワシか…」
「ボイムはこの救助依頼のリーダーだ。それから…ルル、ライム、ビータ」
「頑張るか〜」
「大丈夫かな…」
「眠いでゲス…」
3人とも不安そうだ。
「最後…ショウ、フーコ」
「なっ…オレとフーコ!?」
まさか呼ばれるとは…!
「そうだ。チコは寒さに弱いしヒノとカケルがいないとマルは何をしでかすか…他のみんなはギルドで待機。遭難者を保護する準備だ…では解散。」
「ショウ…フーコ頑張ってね!」
「…すみません。お役に立てず…」
「気にすんな。ヒノはここでやるべきことをやればいいんだよ」
「…そうですね。」
「ヒノ。あまりオレに気を遣うことはないよ」
「わかりました」
「それじゃ…行ってくるよ」
「ヒノ。マルが何かしでかさないか要注意ね」
「そうだねチコ。私たちはできることをやりますか。2人とも気をつけて…」
「おう!行こうフーコ!」
「う、うんっ!」
ギルドから出て水飲み場で他のメンバーは集まっていた。
「あっ!来ましたわ!」
「どうしたんですか?」
「西の山岳地帯までは団体行動する方がいいと思ってな」
「まだ暗いからね〜。あと…夜のダンジョンは危ないからね」
なるほど。夜のダンジョンは危険らしいからね。
「この依頼はワシがリーダーを任された。それじゃ地図を出してくれ」
「はいよ…っと」
「西の山岳地帯は…磯の洞窟の少し先にある。海を渡るのが早いが…生憎荒波で船は出せないみたいだ。だから静かな川を渡り枯草平原を通って向かうことにしよう。それでいいな?」
ボイムはそう言いながら地図を指差した。
「それがいいと思いますわ」
「そうだね〜」
ヒナとルルは賛成した。ビータとライムも頷いた。
「よし!この救助は急がないとまずいからな。行くぞ!」
「おおーっ!」
静かな川を渡り枯草平原を越えて西の山岳地帯付近に到着した。雪がちらちらと降っている。
「さ、寒いですわ…」
「大丈夫ヒナ?」
草タイプのヒナにはこの雪は辛いだろう。ルルも心配している。
「辛そうだな。ライム、ビータ、テント張って救護場所を作っておいてくれ。ワシは一旦ギルドに連絡する。ルルは内容をみんなに説明しておいてくれ」
「はい!それじゃ説明するね。この山に遭難者が7名いるそうだよ。種族を言うね。ヒメグマ、リングマ、ヤナップ、ヒヤップ、キルリア、チョロネコよ。」
「そんなにいるんでゲスね…」
「ああ…早く助けに行かないとな。それじゃメンバーをまずは…ワシとビータは東の登山道から登る。それから…ショウとフーコ。オマエたちは南の登山道から登って遭難者を探してくれ。ライムとルル、ヒナは待機だ。」
「ワタシも行きますわ!」
「ヒナ…いや…ここで待っててくれ」
「なぜですの?」
「ここは氷タイプや飛行タイプ、虫タイプのポケモンが多い。ワシらが5時間待っても下りて来なかったら捜しにきてくれ。おまけに…このダンジョンの中ではなぜかバッジが使えないんだ。通信機能は使えるみたいだが…だから麓にも人がいた方がいい」
ボイムにしては珍しく冷静に言った。ビータも続けて
「ヒナ…心配することはないでゲス。あっしたちは必ず戻ってくるでゲス!」
と言う。
「…わかりましたわ」
ヒナも納得したみたいだ。
「それじゃガルーラ像準備してから行くぞ。ショウとフーコ。気をつけろよ」
「ボイムとビータもね!」
「ショウ!行こう。遭難者を助けに!」
あっ…そうだ。寒いしアレが役立つかもしれないな。倉庫から引き出すか…
「ちょっと待ってくれフーコ」
「何か忘れ物?」
「はい防寒具。マフラーだけどな」
オレがフーコに渡したのは黄色のマフラー。フーコの身体の色に合うように編んだんだよなー。
「あ、ありがとう!あったかいわ」
「そうか。苦労して編んだ甲斐があったなー」
「これショウが編んだん?」
「ん?意外か?そうだよ」
フーコは目を丸くして驚いてる。えっ?コリンクでどうやって編んだかって?それは企業秘密だよ!教えないぜ!フーコは顔を赤くしているなあ…熱か?
「…うれしいなあ」
「喜んでくれてよかったぜ。顔赤いぜ?どうした?」
「な、なんでもないよっ…!」
「そうか?まあ、これで少しは寒さを防げるといいんだが…じゃあ行こうか!」
「そうね」
オレたちは遭難者を救うために山へ登る。絶対全員助ける…!
「あいつらはいなくなったか…。雪崩かぁ…ここの時ももうやばいかもなぁ…」
ショウとフーコが登っていった後…そう呟いたのはヌマクローだった。