第三十九話 遠征前夜
side ショウ
遠征メンバーに選ばれた…と言うよりギルドメンバー全員で遠征に行くことができた…それだけで今感動している。今は夕方だけど夜は眠れるだろうか…。それは多分みんな同じだ。フーコはさっきからガルーラの倉庫で荷物の整理をしてるし、カケルも買い物に相当時間をかけている。ジーナスは準備をさっさと済ませて特訓をしに行き残りのメンバーも落ち着きがないようだ。ヴィントとラルカの2人は落ち着いてはいるが色々と準備に忙しそうである。そろそろギルドに戻ろうかな。
「みんなギルドに戻るよ」
「うん? もう? わかったよ」
「わかったわ!」
とりあえずチームのメンバーを連れてギルドに戻った。
ギルド地下一階
「それではグループわけをしよう。ドクローズさんとサンセットさんは単独でお願いします。」
「承知しました、ククククッ」
「わかりました。」
ドロンとリオンが答えた。
「それではまず…ヒナ、ルル、デイボイム。4人はトゲ山の南を通るルートだ。」
「お前たち! あまり足を引っ張るなよ!」
「あなたには言われたくないですわ!」
ヒナとボイムはあまり仲良くないのか言い争いをしている。ルルとデイは苦労しそうだ。
「次はダリス、グヘイ、リン、ララ。オレンの森とリンゴの森を抜けるルートだ。」
「いいチームだ。」
「頑張りましょう」
このチームは特に問題なさそうな感じがする。ダリスがサボリ魔なのがなんだが…。
「次は…ハープ、ライム、ヒノ、マル。緑の草原を通りコロコロ洞窟を通るルートだ。」
「飯の心配はいらないね!」
「おい…」
マルはほんとちゃっかりしている。その様子にハープは呆れている。
「次っ! ビータにジーナス、カケルにラクサスさん。」
「僕はここかあ…」
「よろしくでゲス。」
ラクサスは納得したように頷きビータは丁寧に挨拶をした。カケルたちとも別の班か…。
「最後、カレハさん、グレイさん。ショウにチコ、フーコ、フィンにホルン、ヴィントにラルカ。ここにレインさん。」
「10人とか多くないか?」
「その分道は険しいのだ。」
「10人は海沿いのルートだ。沿岸の岩場を抜けツノ山を通るルートだ。」
トリルの話によると岩場はデコボコで歩きづらく、山は敵が強いらしい。それによって人数を増やしたらしい。
「親方様は…私とでよろしいですね?」
「えーっ! トリルと一緒? そんなのつまんない!」
「これも作戦のうちなんです。我慢してください。よろしいですね??」
「…ケチ……」
フリルのケチと言う言葉に耳すら貸さないトリル。さっきの冗談(全話参照)の仕返しなのだろうか。
「それでは以上で説明会は終わり! 夕食まで自由にしてていいよ。また準備をしたいやつはしててもいいし特訓しててもいいよ! ただし! 夕食までにはきっちり戻ってくるように! 解散!」
トリルが自由時間をくれた。フーコとチコは部屋にトレジャーバッグを置きに戻りジーナスはやはり特訓にマルとヒノはビータやハープと話し込んでいるし。どうしようかなと悩んでいると、レインがこっちにやってきて言った。
「ショウ。海岸へ散歩に行かないか?」
「行きます。」
オレはとりあえずレインと海岸に行くことにした。
「すまないな。むりやり連れ出したりして。」
「オレも暇だったから別によかったです。」
「ショウ。君に会わせたい人がいるんだ。」
「会わせたいひと?」
「ああ…彼は海岸で待っているはずだ。急ごう。彼は忙しい人だからな」
レインとオレはギルドの階段を駆け下りカフェの横を通り海岸に向かう。
海岸
海岸に着くとそこには橙色?の身体のポケモンがいた。
「待たせたね、ザッタ。」
「いやいや…ボクはたいして待ってないよ。ん?」
ザッタはオレに気づき声をかけてきた。
「君とは初めましてだね。ボクはザッタ・チェザーレ。種族はカイリューさ。」
「彼は情報屋なんだよ。トリルよりも遥かに情報を持つ。」
「オレはショウ。探検隊ポケダンズのリーダーだよ」
「君が…そうなんだ。」
「ザッタ。お話はそれくらいにして…情報を教えてもらえないだろうか? 沿岸の岩場とツノ山の情報を。」
「うん。構わないよ。うーん…それならオレンの実とモモンの実とカゴの実を2個ずつでいいよ。」
「はい。」
レインはザッタが言う通りの報酬の木の実を渡す。お金じゃなくて木の実なんだ。変わっている。木の実を受け取ったザッタは情報を話す。
「沿岸の岩場の近くに最近海賊が出るんだ。」
「海賊?」
「うん。かなりのならず者の集まりでね…お尋ね者もたくさん仲間にいてね。あちこちで幼い子供を誘拐して奴隷にしていたり港町を襲撃したりしてるんだ。殺害することも多くてね…保安官達も手を焼いているみたいだよ。」
「それはひどいな…私らも気をつけなければ…」
「頭領はシザリガー。目的の為には手段を選ばず残忍なことで有名なお尋ね者さ。子分には悪タイプのポケモンと…捕らえた奴隷が目立つね。」
「なんかおっかないなあ…」
「出会ったら一巻の終わり…かもね。ボクの情報はこれだけ。それじゃあね」
ザッタは一通り話すと何処かへと飛んで行った。オレは正直怖くてたまらない。仲間が傷つくかも知れないと思うと……。
レインはそんなショウを見て心配したのかこう口を開いた。
「大丈夫。怖がることはない。私がついている。だから1人で悩むことはない。」
オレはレインの言葉に胸を打たれた。そうだ…オレは1人じゃない。
「とりあえずギルドに戻ろう。夕食ももうすぐのはずだ。」
レインがそう言った。オレははっとして海岸線を見るともう陽が沈もうとしていた。戻ろうギルドへ…。
夕食のあと…オレは結局ザッタの情報をみんなに話さなかった。いや、話せなかった。海賊が必ず出るとは限らないし…そして何よりも…みんなの笑顔を崩したくない。とりあえず…今はこのままで…。
フーコがオレの顔を見ている。
「どうしたん? 何かあったの?」
「いや、何も。」
「そっか…なんか悩んでたように見えたし…」
「ん? そう? ごめんな心配かけて。」
「あまり悩みすぎると明日に響くよ? 早う寝よ?」
「うん。そうだな。」
フーコの言う通りだ。このことはまた明日考えればいいや。とりあえずは寝なきゃな。
そうしてショウは意識を手放し夢の中へと行ったのだった。