第二十七話 水源の谷
side ヴィント
オレ達Bチーム、カケル、チコ、ヒノ、ジーナスは水源の谷に向かうことにした。
水源の谷は水が絶えず湧き出す谷ことで有名な谷だ。そこから河に水は流れている。今回の依頼はそこの源泉の水を汲んできて欲しいという内容だ。ここの水は病気によく効き美味しい水と有名でかなりな量汲まれているらしい。そのためなのか最近湧き出る水が減っているそうだ。
そして今回のもう一つの依頼はそこの水を取りに行った人が戻らないから捜してきて欲しいとの依頼だ。種族はエレブー、名前はバレーだそうだ。
水源の谷
「綺麗な水だね…」
「ほんと透き通っていて…料理にも使うと味が良くなりそうです。」
河の流れを見てチコとヒノが楽しそうに話している。ヒノは料理人を目指しているらしい。
「なあヴィント」
「なんだジーナス?」
「このダンジョンならさ…俺とヒノよりホルンとフィンとマル連れてきた方が良かったんじゃないか?」
ヴィントは一瞬固まったが、すぐに元に戻ってこう言った。
「まあ…鍛錬になるしいいだろ。それに水は美味しいみたいだしな。」
「そうだけどよ…」
「みんなー行くぞー!」
「はーい!」
この先に何があるのかわからない…人が戻ってこないのだから慎重に行かなければな。
敵をなぎ払いつつ、しばらく進むと河の上流までやってきた。
「もうそろそろ源泉のはずだよ。ここまでエレブーは見なかったからこの先にいるんじゃないかな」
確かにカケルのいうとおりここまできてエレブーとは遭遇しなかった。だからこの先にいる可能性は高い。
「マッハパンチ! 全く…視界が悪いせいでなかなか攻撃が当たらない。」
「木が多いからね…仕方ないね」
「邪魔なら切ればいい! きりさく!」
「ちっ…燃やせれば楽なんだがなあ」
「さすがに燃やしたらダメでしょ。葉っぱカッター!」
オレとチコで木の枝やくさむらを薙ぎ払ってさらに進む。敵と全く遭遇しないのが不気味なくらいだ。
ガサガサガサガサッ!
どこからかこんな音が聞こえてきた。だんだん近づいてきている。
「誰か来る! 気をつけろ!」
「わかった!」
「ばれちゃったかー…」
そこに現れたのは耳の黒い部分がギザギザで背中に剣を背負っているピカチュウだ。剣を持っている点ではオレの友人のピカチュウ___ラルに少し似てはいるが…。
「お前たち強そうだから…勝負しようよ!」
「そんな時間は…」
「いいぜ! 受けて立つ!」
依頼の途中だということをわすれているのかジーナスは勝負をすることを勝手に決めちまった。
「ジーナス…相変わらずですね…」
「さすがに呆れるわ」
チコとヒノはジーナスのことを昔から知っているらしい。ジーナスはどうやらバトル脳なのかもしれない。
「それじゃ、まとめてかかっておいでよ」
「不利じゃないのか? 」
「1人じゃ相手にならないでしょ? さあ、はじめようか…」
相手のピカチュウは余裕の笑みを浮かべている。相当の手練れに違いない。
「先んずれば人を制す! マッハパンチ!」
「アイアンテール!」
「くっ…いてて…」
「なーんだ…口だけ達者で力はないの? …物足りないね。それじゃ僕の番! 十万ボルトッ!」
「ジーナス! 危ないっ! 指をふる!」
「防がれた!」
指をふる は運任せの技。それで守るを引き当てるとは…カケルはすごいな。さてとオレも攻撃にうつるかな! 葉っぱを既成して剣にした。相手が剣ならこちらも剣だ。
「きりさく!」
「葉っぱカッター乱舞!」
「無駄無駄……。黒雷乱舞!」
背中にあった剣を抜いてヴィントの剣やチコの葉っぱカッターを切り刻んだ。
「あははははっ! これが人の腕とかだったら真っ赤で綺麗なのに! 」
背筋が凍るような言葉。こいつは強い…直感的にそう思った。その時ヒノが話しかけてきた。
「ヴィント。」
「なんだヒノ?」
「あのピカチュウ___ラクサス・ブレイム。昔は暗殺を生業としていて『裁きの悪魔』という二つ名を持つ人だった気がします。」
「なっ…暗殺者がなぜオレらを?」
「いや? ただの腕試しだよ。フリルって人に『遠征が近いんだけど弟子たちの力がよくわからないから測ってきて!』って頼まれたんだよ」
ラクサスのその答えにオレは驚いた。ヒノ達も驚きを隠せないようだ。フリルは何を考えているのやら。そしてさらにピカチュウはこう続けた。
「いかにも僕はラクサス・ブレイム。だけど、今回は暗殺の仕事じゃなくて遠征の為の技の指南役としてよばるているんだよね」
「指南役?」
「そう。とりあえずかかってきなよ」
「待ってくれ! 今依頼中なんだが。」
「そうなの? なら僕も手伝うとするかな。だって遠征までギルドでお世話になるからね」
ラクサス・ブレイムというピカチュウが加わり引き続きエレブーの捜索に戻った。
エレブーを捜しつつ歩いてきたがついに源泉まできてしまったようだ。水が湧き出ている。
「ねぇ…あそこ、誰かいるよ!」
「ほんとだ!」
カケルが指をさす先には依頼人のエレブーらしき黄色と黒の縞模様のポケモンとそれを取り囲む3人のポケモンがいた。
「かなり衰弱しているな…」
そのポケモンの1人はそう言った。
「ああ…フラワナ。何かいい方法はないのか」
「落ちつけリシューカ。私のトレジャーバッグの中にオボンとリンゴがあったはずだ。…すぐに二つをすり潰して泉の水と一緒に飲ませるのだ。ミズハ」
「はいよっと。汲んでくる。」
「…でさっきからこっちを見ている方たち。私らに何か用か?」
「うん。そのエレブーを助けに来たんだ。あと泉の水を汲みに。」
フラワナはこっちに気づいていたみたいだ。カケルが普通に答える。
「そうか…。もしや君たちは探検隊か?」
「そうです。」
「うむ。でもその前にエレブーを回復させないとダメだ。君たちも水を汲むのを手伝ってくれ。」
フラワナにそう言われオレたちは手伝うことになったのだった。