第二十五話 おもいやるこころ
翌朝
「みいーつ! みんな元気で明るいギルド!」
「みんなっ! 今日も仕事にかかるよっ!」
「おおーっ!」
いつものように朝礼が終わる。はあ…おなかすいたなあ…。
「ああ、お前たち。」
「なんだ?」
「お前たちは遠征メンバーに選ばれるの諦めた方がいいぞ」
トリルはこんなことをいきなり言う。
「な、なんでよ!」
「やはり昨日の事が大きいのだ。親方様は何を考えてるかわからないがそうとうはらわたが煮えくり返っているに違いない。だからメンバー発表の時は期待しないでくれよ。じゃあな」
トリルはそれだけ言うと階段をのぼり、去っていった。そんなことを言われると…やる気がもう起きないよ。
「…そんなこと言われたらもう…ウチ、やる気が出ないよ……」
フーコも俺と同じことを考えていたようだ。
「…おーい…」
「ん? どこからか声がするよ?」
「こっちこっちー…」
「こっちでゲスよー…」
声がする方を見るとヒナ、リン、ライム、ビータがいた。
「どうしたの?」
「グヘイ以外の誰にも見られていませんね」
「こっちに来るでゲス」
そういって連れてこられたのは自分達の部屋だ。
「どうしたのほんとに?」
「おなか、すいてますでしょ?」
「どうぞ食べてください」
「い、いただきまーす!」
ライムはオレたち8人の前にそれぞれリンゴを置いた。おなかがかなり減っていたからあっという間に全部食べ終わった。
「みんなで昨日の夕飯を少しずつ残しておいたんでゲス」
「ありがとう! 生き返ったよ!」
「でも…ウチらは遠征のメンバーには選ばれないだろうってトリルが…」
「諦めたらそこで終わりですわ!」
「でもさ…仮に僕たちが選ばれたとしたらこのなかから誰かが行けなくなるんだよ? それでもいいの?」
「よくないですわ。でも…その時はその時。今度は選ばれた人を応援すればいいですわ」
「みんな、ショウ達とも遠征に行きたいんですよ」
ヒナ達の想いがオレ達に伝わってくる。優しい先輩達の想いに思わずうるっとくる。
「うん…みんなありがとう!」
「最後まで諦めないでやれるだけのことをやってみるよ!」
「元気出していきましょう!」
「ありがとう…」
「今日も頑張るよ!」
「おーっ!」
ギルドのみんなの思いやりを受けて少し心が温かくなったショウ達。彼らは遠征メンバーに選ばれるため気持ちを新たに今日も依頼をこなしに向かう…。