第二十四話 臭すぎる! どくガススペシャルコンボ!
side ショウ
リンゴの森の一番深いところまで来れたようだ。目の前には大きな樹がありその気には大きく美味しそうなリンゴがなっていた。
「うん。あれはセカイイチで間違いないね」
「本当に!」
「うん」
「いくつか持ってかえってボクも食べたい!」
「でも…どうやってとるの? あんなに高くあるのに…」
「あの…」
「どうした? フィン。」
「樹の上に誰かいるんじゃないかな?」
「えっ?」
フィンはいきなりそう言った。オレは驚き樹をよくみてみると…少し揺れている。風にしては不自然な揺れ方をしているし人がいるのだろうか…?
「ククククッ…ばれちまっちゃあしょうがねぇな」
「お前らは…!?」
「ドクローズ惨状!」
ドクローズは樹の上から降りてきた。
「おい! 作者! 字が違うぞ!」
気にするな。
「おい、何を言ってんだ?」
「なんでもねぇよ! それよりお前達…来るのが遅かったな。へへっ」
「俺達はここでセカイイチを食べながら来るのを待ってたんだぜ」
待ち伏せか…暇人なんだな…フリルは人選ミスしただろ…。それにしてもタチが悪いなこいつらは。
「来るのが遅かったから食い過ぎちまったぜ…」
「ショウ。アイツらセカイイチを食べたって言ってるけどまだいくつか樹に残ってる。アイツらを倒してセカイイチを持ち帰るよ!」
「ああ…そのつもりだ」
「ククククッ…オレ様達を倒すだと? 失礼なヤツらだな。オレ様はお前達の仕事に協力してやろうと考えていたんだぞ」
「えっ? (怪しいわね…)」
「そうなの?」
「さっきどうやってセカイイチを取るかって言ったよな? そんなの簡単なことだ。見てろ。ずつき!」
「あっ! セカイイチが!」
「ほら、簡単だろ? さぁセカイイチを拾って早く戻るがいい。ククククッ」
「ケッ」
「へへっ」
「わーい! ありがとう!」
「絶対罠だよね…」
「僕もそう思います」
「相手は臭い。だったら…ホルン。_______と_______を使えば…」
「なるほど…。フィン、グッドアイデアだよ! でも間に合うかなあ…」
3人の不敵な笑み。怪しすぎる。それをよそにマルはセカイイチを取ろうとしているし、フィンはホルンとひそひそ話をしている。
「…また何か企んでいるんでしょ?」
「アタシ達は騙されないよ!」
「えっ?」
マルは目を丸くしている。マルは騙されていたみたいだ。
「驚いた…騙されないとはね」
「つまらないぜ…」
「やっぱりか」
まあコイツらの考えそうなことだよな。不意打ちとかね。
「ククククッ…引っかからなかったのは少々残念だがそれでお前達はどうするというのだ?」
「そんなの決まってる! お前達を倒してセカイイチを持ち帰る!」
「ほう…今日はやけに威勢がいいな…はじめはビビってたというのに…ククククッ」
「あ、あの時は怯んじゃったし…今も怖いけど…もう負けないよ!」
マルが勇気を振り絞りそう答えた。
「…よかろうお前達のその勇気に免じてオレ様達も本気で相手してやろう。」
「みんな…気をつけろ!何か仕掛けてくる!」
「ククククッ…果たして…果たしてお前達にこの攻撃が耐えられるのかな? オレ様とクリスの…どくガススペシャルコンボを!」
と、同時にドロンとクリスはどくガスをふきだす。
「うぐわあ…くさい」
「く、くさすぎる……」
「うぐう…」
「きゃー!!」
マルにカケルそれにチコとフーコとヒノは臭さで悶絶している。オレは誰かに引っ張られて穴の中へ落ちていた。
「酷い目にあいました…」
「みんな平気?」
「助かった…ホルンありがとな」
「どういたしまして…まあフィンが考えたんですけどね」
「フィンが?」
「うん。私、あの人たちはくさいにおいで攻撃してくるだろう…と思ってそれなら地面に潜ってやり過ごすしかないかな…と思ったんだ。それで、ホルンはあなをほるとアロマセラピーを使えるみたいだったからね…結果的にその技を使ってどくガススペシャルコンボを防げたってことだよ」
なるほどな。フィンはあの時そんなことを…。
「ホルン! ウチらも助けてよ!」
「すみません…間に合いませんでした」
「あそこに1人残ってる…」
ヒノが指差した先にズバットのロースが倒れていた。そしてすっと起き上がるなり…
「しまった! 逃げ遅れた! 脱出!」
と言ってそそくさと逃げていった。
「お互いヤラレチャッタね…」
「しかしホント強烈な臭いだったな」
「まだ臭ってますね…そうです! セカイイチは!」
「!! 全部ベトベタフードになってる!」
ヒノが慌てて尋ねるが時すでに遅くすべてベトベタフードになっていた。
「アイツらが食べたんかな? ううっ…ないものはしゃーないか…」
フーコががっかりしている。帰ったらトリルとフリルに何か言われ、遠征に行けなくなるのが嫌なのだろう。
「あ〜あ…くせぇくせぇ…なんだよこの臭さは!」
その声と共にどこからともなく現れたのはヒコザルという種族のポケモンだった。
「ジーナス!」
「おおホルン! それにマル。チコにフーコとヒノも!」
「久しぶり〜」
「えっと…誰?」
「俺はジーナス。ここで修行をしている。お前は?」
「オレはショウ。フーコ達と探検隊をしている。こっちにいるのが仲間のフィンと弟のカケルだ。」
「そうか…フーコ。探検隊にか」
ジーナスと呼ばれるヒコザルとマルたちは知り合いらしい。どうやら昔一緒に暮らしていたらしい。
「ショウ。そろそろ帰らんと…」
「僕はジーナスとしばらく話してから帰ります」
「そうか…じゃあなジーナス、ホルン」
「またな」
セカイイチを取ってこれなかったことでオレたちは無言でキルドまで帰るのだった。
ギルド
「ええーっ!? 失敗しちゃったのーっ!? 本当に? マジ? わわわっ、どどど、どうしよう!!? 本当にどーしよう!!?」
「仕方がなかっt…」
「おだまりっ!」
「だってドロン達が…」
「言い訳は聞きたくないよっ!!」
「くっ…」
「…………」
トリルはものすごく怒っている。オレたちの話に耳を傾けることすらしない。よほどフリルが怖いのだろう。
「…仕方がない…お前達は今日は夕飯抜き!」
「そんな殺生な!」
「大切な仕事ができなかったんだ…それくらい我慢しな」
「ううっ…」
夕飯抜きと言われマルは涙目だ。
「泣きたいのはこっちだよ! ワタシはこれから今回のことを親方様に報告しないといけないんだよ!」
ここで一旦トリルが沈黙する。それから、
「それを聞いた親方様はきっと…うわあああああああああああ!!!
と翼をはばたかせて暴れる。
そしてさらにオレ達にこう告げた。
「親方様には夕飯の後に報告しに行く。その時にはポケダンズ全員来るように! 親方様のアレを喰らうのが…ワタシだけだというのはあまりにも不公平だからな! 必ず来るように! わかったね!」
そのあとみんなが夕飯を食べているのを後ろの方で見ているという罰をうけ親方様の部屋に。かわいそうなことにこれにはヴィントも巻き込まれている。
「やあっ!! 君たちセカイイチを持ってきてくれたんだね! ありがとう!」
「そ、その…それがですね…大変言いにくいのですが…」
「ん? どうかしたの?」
「実はその…このものたちがセカイイチを取ってくるのに失敗しましてですね…つまり、その…」
「いいよ。わかったよ。大丈夫。失敗は誰にでもあるよ。くじけないくじけない」
やっぱり親方なだけあって心が広いな…と思ったが…。
「それで…セカイイチはどこなの?」
なんと全然トリルの話を聞いていなかったのだ。
「ですから…そのー…セカイイチが取ってくるのを失敗したワケですから…つまりそのー…セカイイチの…セカイイチの収穫はゼロ…ということに…」
「……え”……」
「なのでセカイイチはひとつも取れなかった…つまり親方様にも当分セカイイチを食べるのを我慢していただかないといけない……ということなんですね! あはっ、あはははっ、あははははははははははは! あはははははははははは! あははは…は……」
ついにトリルが壊れてしまった。
フリルは今にも泣きそうな顔をしている。
「……親方様……親方様?」
「ぐすん………うるっ…うるうるっ…」
「泣き出しそうだよっ!」
トリルがフリルの異変に気付き、マルがさわぎだす。
「うるうるうるうるうるっ!」
「わーっ! い、いかん!」
「うううっ…ううううっ…」
ゴゴゴゴ…
なんだ? この音は?
「部屋が…!」
「揺れてる…?」
「うあ…うあああ…」
「お前達! 耳を塞ぐんだ!」
「ど、どうして!?」
「いいからはやく!」
「わ、わかった!」
それにしてもでかい泣き声だ。鼓膜が破けそうだ。フーコもフィンも耳をおさえている。
「ウアアアア…」
「ひえーっ…」
「ビエエエエ…」
「ひゃーっ…」
「ごめんください。セカイイチを届けに参りました」
その声がすると音がやんだ。その声の主はなんとスカタンクのドロンだった。もちろんクリスとロースも一緒だ。
そしてオレたちを脇に退かすとフリルの前にセカイイチを置いた。
「え?」
「ほら。本物のセカイイチです。お近づきの印にどうぞ。」
「僕のために取ってきてくれたの? ありがとう! わーい! 友達友達!」
「あ、ありがとうございました。あなた様のおかげで私ども助かりました。ほらっ!お前たちもぼーっとしてないで頭を下げな!」
「お礼を言うぞ。リンゴの森でオレたちを邪魔してまでセカイイチを取ってきてくださりありがとうございましたぁ!」
コイツに頭を下げるのは屈辱的だから少しだけ嫌味を言ってやった。しかし、ドロンは気にすることなくこう続けた。
「…ククククッ。いや、ギルドで世話になっているんです。助け合うのは当然のことです」
「なんとすばらな方でしょう! あなた様のようなお方と一緒に遠征できるとは本当に心強いです!」
トリル…騙されてるぞ…しかもすばらって…。
「いえいえ。それは私たちもです。本当に遠征が楽しみです。今日はもう遅いのでもう休みます。ではまた明日…ククククッ」
「ありがとう! おやすみ! 友達! 友達!」
ポケダンズの弟子部屋
「結局やられっぱなしだったね…」
「おなかすいたー…」
「仕方ないです…私のバッグのリンゴを食べて…明日に備えて寝ましょう。」
「ゴメン…ヴィント。巻き込んじゃって…」
「これくらい平気さ…。それにしてもドクローズのやつら…一体なんのためにこんなことを…」
トレジャーバッグの中のリンゴを食べ、みんなと会話しながら今日を振り返る。酷い目にあった。でも遠征に行きたいし頑張っていこう…。