第二十話 悪臭にはご用心!
翌朝
怪談大会のせいで寝るのが遅くななったせいでオレは寝坊しかけてボイム怒鳴られながらなんとかおきて朝礼に出る…。
「え〜…というわけでそのはるか東にあるといわれる湖には…未知の部分がいまだ隠されており…それらを解明すべく…我がギルドもしばらくぶりに遠征に繰り出そうと考えている」
遠征…か。昨日親方が言っていたやつか。
「遠征…か。久々だな」
「遠征でゲスか!?」
「本当久しぶりですね!遠征するのは!」
ハープとヒナが反応し、ビータは驚きの声を上げた。
「でも…そういうことは…」
「またこのなかからメンバーを選ぶってことだな?」
「そのとおり!」
トリルはそう言ってからさらに続ける。
「出発は数日後。その数日間の間にこの中から精鋭を選び出し…そのメンバーで遠征に出かける。みんな遠征隊に選ばれるよう頑張ってくれ!」
「きゃー!なんか燃えてきましたわ!!」
「あっしはまだ遠征に行ったことが無いんで是非行きたいでゲス!」
「私も行きたいです」
「なんとか頑張ってメンバーに選ばれようぜ!」
「それではみんな今日も仕事にかかるよ!」
「おおーーーーーっ!!」
「頑張りましょう!ボイムさん!」
「ああ!頑張ろうなデイ!」
号令の後、みんなは意気揚々とそれぞれの持ち場に散ってゆく。
「ショウ!ボクらも頑張ろうね!」
「ああ!そうだな!」
オレたちも負けずに依頼をこなそうと地下一階に。
ギルド地下一階に登り依頼の掲示板のほうを見ると珍しく2人の先客がいた。
「あれ?あれは?」
「ああーっ!」
「お、お前達は!?」
フーコが誰だろうと目を凝らしているとズバットとドガースの2匹がこっちを見て声をあげた。
「あの2人は…誰だっけ?」
その言葉にズバットとドガースがずっこける。
「覚えてないのかよ!!」
「そっちの女狐の遺跡の欠片を奪っただろうが!!」
「あー!思い出した!」
「なんでここにいるんだよ」
オレは気になって聞いてみる。
「ケッ。俺たちは探検隊なんだぜ?」
「へへっ。探検隊が掲示板の前にいて何がおかしいんだよ?」
「ええ〜っ!違和感しかないよ!」
マルがツッコミを入れるが2人の表情は変わらない。
「…少しやり方は悪どいがな!そういうお前達こそなんでここにいるんだよ?」
保安官に通報したいなあ…。やり方悪どいとか探検隊としてちょっと…。
「ウチらも探検隊になりたくて…このギルドで修行してるんよ。」
「ええ〜っ!」
「探検隊になりたいだってぇ〜〜!?」
大袈裟にドガースのロースとズバットのクリスは驚く。
「何がおかしいのよ!」
「ちょっとお前ら来い」
「な、何よ!」
ロースとクリスはフーコとチコとマルを押して壁際に追いやりこう続けた。
「悪いことは言わねぇ。探検隊は諦めろ。」
「理由は?」
「だってお前ら臆病じゃないかお前らみたいな3匹の弱虫には探検隊は無理だぜ」
「マルはともかくウチとチコは自分に負けんように修行しとるつもりよ。今もギルドの遠征メンバーに選ばれるよう頑張ってるんよ!」
「こいつらに言わない方が…」
「ほう。遠征があるのか」
「へへっ。でも頑張ればいいってもんじゃないぜ。実力がなければ遠征隊には選ばれないんだろ?結局のところは実力だよ。じ・つ・りょ・く」
「偉そうにして…」
「マル…」
「実力とか言うけどさお2人はどうなんだよ!ボクに負けるほど弱かったじゃないか!」
マルはそういった。弱い相手にはやけに強気だ。
「ケッ。あの時は兄貴がいなかったからさ」
「は?兄貴?」
「へへっ。そうだ」
「わが探検隊ドクローズは全部で3匹。」
「臭そうな名前ですね」
ヒノが顔をしかめながら言った。
「うるせー!リーダー…つまり兄貴がものすごい実力の持ち主」
「はっきり言ってしまうとものすごく強いのだ」
「つまり兄貴がいないとお前らはただのゴミってわけか」
「あ、兄貴さえいればお前ら6人も一捻りだ!」
「おっ!噂をすればこの匂い!いや臭い!」
「臭い?」
「そういえばくさい臭いが近づいてるような…」
「兄貴のお出ましだ」
梯子からおりてきたのはスカタンクだ。
「どけ!邪魔だ!毒ガス!」
「ショウ!ヒノ!」
「うぐっ…なんなん!?この臭いは…」
フーコはあまりの臭さに顔を歪める。
「きゃー!なんかオナラくさいですわ!」
「あっしがしたんじゃないでゲスよ〜!」
「ヘイヘイ!じゃあ誰がしたんだよ!」
「そこにいるスカンクだな。あーあくさい奴が来たよ」
ヒナとビータ、ヘイン、ライムが騒ぎだした。そしてこっちをみている。
「どけ!お前らもさっきの奴みたいに張り倒されたいのか!?」
「ちっ…」
スカタンクに恐れをなしてフーコとチコは道をあけた。
「あ〜お客様困ります!あ〜お客様困ります困ります!」
増築係のライムがスカタンクに注意しに行くが…
「うるさい!邪魔だ!」
「うぐっ!」
簡単に辻斬りで飛ばされてしまう。
「流石兄貴!」
「やっぱつえーや!」
「それよりなんか金になりそうな仕事はあったか?」
「いやゴミみたいな依頼しかなかったんですが…」
「それより耳寄りな話しが…」
ロースがスカタンクに耳打ちする。
「何?このギルドで遠征?そいつぁうまそうな話しだな」
「でしょー!」
「早速帰って悪だくみだ!いくぞ!」
「「へい!」」
「特攻がぐーんとあがった!」
「いちいちうるせぇ!」
「オメーら!見せもんじゃないぜ!」
「店にもんじゃがないのか?」
「違う!!」
へんなツッコミをいれたのは下から上がってきたギルド料理長のハープだ。
「じゃあな弱虫君達」
「大丈夫?ショウ!ヒノ!」
「くさい…」
「私は平気です…早く換気してください」
「換気換気!」
ライムやヒナたちが窓を開け放つ。
「しっかし…乱暴な奴らだったね……。ウチは…アイツを前にして戦う勇気が出なかったよ…。ショウとヒノがやられたのに…情けないわ…やっぱ…ウチも弱虫なんかな…」
フーコが落ち込んでいる。元気を出してもらいたい一心で彼女を励ます。
「弱虫なんかじゃないぜ!フーコ。お前は強いじゃんか!オレ達がそれはよく知ってる。チコもマルもそうだ。だから落ち込むな!」
「ううっ…ショウ!ありがと…」
「ほら…泣いてないで今日も仕事こなそうぜ?なっ?」
「うん!」
フーコは涙を拭いて元気に立ち上がった。
それから依頼に向かう準備としてトレジャータウンまで行こうと十字路にきた。すると、そこの曲がり角にソーナノとソーナンスいて、看板の近くに立っていた。そして彼らはオレ達を見るなり、
「パッチールのカフェ!今日Openナノ!寄って行って欲しいナノ!」
と、声をかけてきた。宣伝だろう。カフェかー…いいな。一応みんなにも聞くか。
「せっかくだし寄ろうかみんな?」
「異議なしー」
「6名様ごあんな〜い!ナノ」
「ソ〜ナンス!!」
そして店の中に。お客さんにパチリスやヘラクロス、それにバリヤードにオクタンがいる。賑わってるなー。
「いらっしゃいませ〜。手前オーナーのパッチールのツールですぅ。そしてソーナノのミクロとソーナンスのセンスです。」
パッチールという種族上なのかフラフラしている。
「ミクロナノ!」
「ソォーナンスッ!!」
ナノなのかミクロなのかややこしくてわからないし、センスに至っては訳がわからない。
「あなた方もお客様にご挨拶を〜」
「はーい!」
こんなメンバーだから残りの従業員も変人だろうと思った。しかし違った。
近づいてきたのはシャワーズと巷で唯一王と呼ばれているブースターだ。
「私はアクア。この店の従業員です。以後お見知りおきを」
「俺はスター。同じく従業員でアクアの弟だ。まあ…よろしく。」
アクアとスターはお辞儀をしてそれからまた仕事に戻っていった。
それからツールからドリンクスタンドとビッグトレジャーについて話を聞いた。
ドリンクスタンドはツールが腕によりをかけて食材をドリンクにするサービス。ビッグトレジャーはリサイクルで助け合う…だいたいそんなかんじだろうか?
「何をドリンクしようかなー」
「青いグミにしようっと!」
「アタシは若草グミを!」
みんなそれぞれ好きなグミを選んでツールのところに行った。
ん?あれ?入り口のところに眼鏡をかけたマリルがいる。 あ…あのままじゃ壁にぶつかる!
「おーい! 危ない!そっちは壁だよ!」
俺は急いでマリルのもとへ駆け寄る。
「え? あっ…ありがとう」
「大丈夫か?」
「うん。ところでここは?」
「ここはパッチールのカフェだよ。よければ一緒にドリンクでも飲もうよ」
「お金…ないよ?」
マリルは不安そうな顔をしている。
「ここはグミとかを渡してジュースにしてもらうお店なんだって。だから無料だよ。」
「そうなんだ。」
オレとマリルはイスに座った。
「オレはショウ。種族はコリンクだ。君の名前は?」
「私はフィン。よろしくね」
「よろしく。」
「そういえばさっき壁にぶつかりそうになっていたけど…大丈夫?」
「うん…慣れたから…眼鏡をかけてもなぜか見やすさが変わらないの。視力が悪いから文字もよく読めないからみんなに迷惑かけちゃうし…」
フィンは悲しそうに言った。
「それなら…オレ達の探検隊に入らないか? オレ達がフィンを助けてあげる」
「た、探検隊?? それはなにをするの?」
「困ってる人を助けたり、未知の場所を探検したりするんだ。どうかな…?」
「いいよ…。私でも役に立てることがあれば……」
フィンは少し悩んでから答えた。
「じゃあ…これからよろしくなフィン!」
「うん!」
フィンとオレは握手をした。それから他のメンバーがフィンと話してから、リンに仲間の申請をして簡単な依頼に向かった。