第十八話 神は言っている…ここで死ぬ運命(さだめ)ではないと…
滝壺の洞窟奥底
「わあ〜!みてよ!ショウ!宝石がキラキラ光ってるよ!」
「あそこに大きな宝石がありますよ?」
「本当だ!」
「凄いわ…こんな大きな宝石…見たことない…」
「ものすごいお宝だね」
「これを持って帰ろう!」
マルは宝石を引き抜こうとした。
「うーん!よいしょ!はあはあ…ダメだ…抜けないよ…」
「マルだからじゃないの?」
「違うよっ!ほんと固いんだよ!ショウ!交代!」
半ば強引に交代させられたけど引き抜いてみるか…
「うおっ…か、固いなこれはっ!動きそうもないぜ…」
「ショウもダメか…でも諦めちゃダメだ!ボクもう一回やってみるよ!」
マルが懸命に宝石を引き抜こうとしているけど抜けそうにもないな…
ま、また…目眩か…
洞窟の奥についたポケモンが宝石を押した。すると水が流れてきてそのポケモンは流された。
今の映像は…
「抜けない…。そうだ!引いてダメなら…」
「おい!やめっ!」
「押してみろってね!ソイヤッ!」
カチッと音がなり地響きが鳴る。もうダメだ…お終いだ…。
「あれれ?どうしたんだろう?」
「に、逃げるよっ!」
「ショウさん!?」
「水だ…間に合わなそうだね…自然詠唱!つるのムチ!」
「カレハさん!何をっ!」
「流されてもみんなとはぐれないようにするためです!」
カレハの耳がつるになっていてそれにオレたちは掴まる。
「これで流されてもはぐれる心配はないでs」
ここでオレたちは水にながされた。無事を祈るだけだ。
間欠泉から噴き出されて水にダイブ…。運がいいのか悪いのか…。
「あれ?ここは?」
「君たち大丈夫?君たち上から落ちてきたのよ?ビックリしたわ!」
「ここはどこ?」
「ここは温泉よ」
「お、温泉!?」
「そう。温泉じゃ。」
心配そうに見つめるヒメグマにフーコが聞くと奥にいたコータスが答えた。
「ワシはコウと言う者じゃ…ここの管理をしておるよ。ここの温泉は肩こりによく効くんで多くの人が訪れるんじゃよ。おぬしら地図を持っとるかの?」
「うん。あるよ」
「広げてみなされ。ほれ。ここじゃよ…ここが温泉じゃ」
地図を広げたショウにコウは指し示す。
「そうなのね…って滝から随分流されたのね」
「なんと!そんなところから流されてきたのか!?それは大変じゃったのう。温泉でゆっくり疲れを取ってから帰りなされ」
コウは笑みを浮かべながらそう言った。
「そうするよ!みんなありがとう!」
「とりあえずみんないるかチコ?」
「いるみたいよ。グレイがここに…」
「無事なら良かった」
とはなしているとグレイが目を覚ました。
「目を覚ましたんですね!」
「ここは温泉だよ。」
「ええ…ショウ、チコ。」
「カレハのおかげよねあそこでつるのムチは出せなかったよ…普通は。
ところでなんで水が流れて来たのかな?」
「ああ…あれは奥にあった大きな水晶をマルが押したからだよ。」
「ショウは物を触るとたまに未来や過去の物事が見えるのよ!きっと!」
「自分が見たい時に見れたらいいのだがな…」
「それは多分時空の叫びっていう能力じゃないかな。あまり言いふらさないほうがいいけどね。特殊な能力だから…嫌な予感もする。だから信頼できる人にだけ話しなさい。それと…ショウ、あなたもしかして…」
グレイは少し考え込んでから口を開いた。
「どうするのショウ?」
「話すしかないだろチコ…グレイさん。お話があります。」
この人なら信用できる。そう思う。だから…話そう。
「あたしとカレハに敬語は使わなくてもいいわよ。」
グレイは笑みを浮かべ、くすぐったさそうに言った。敬語を使われるのに慣れていないのだろう。
それじゃ話すとするか。
「そうですか…では、ええと…オレとカケルはポケモンじゃない…人間なんだ。」
「えっ?」
グレイは驚きを隠しきれないようだ。みんなもそうだったからな…。
残っている記憶は自分が人間だったことと名前と一般常識ぐらいだった。それでトレジャータウンの海岸に倒れていたところをチコ達に助けられたということを話した。
「へぇー…そうだったのね。あたしも聞いたことがないな…人間がポケモンになるなんて…」
「私は聞いたことあるけど…」
そこで口を挟んだのはカレハだった。
「え?カレハ?」
「他にも事例があったの?」
「うん。2年くらい前の東大陸の隕石衝突未遂事件は知ってる?」
どうやら他にも事例はあったらしい
「いや、知らないな…」
「その事件はある救助隊によって解決されたの。その救助隊のリーダーが元人間らしいよ。」
どうやら東大陸に元ニンゲンのポケモンがいるみたいだ。
「その救助隊のチーム名とかわかるカレハ?」
「ええと…たしかーポケモンズだったかな。」
カレハは少し間をおいてから言った。
「覚えとこ!」
「ショウ、チコ!帰ろうよ!」
「マルが呼んでるし帰りますか!」
「そうね」
マルが呼んでいる。フーコとカケルがまだのんびりしたいと顔に書いてあったが、日がずいぶん傾いてきたので、オレ達はトレジャータウンへの帰路についたのだった。
それにしても長い1日だった。帰ったらトリルに報告しないとな。
ギルド地下一階
「ポケダンズの皆さんありがとうございました!」
「ありがとね!」
「カレハ、グレイ。オレ達はギルドで修行してるからまた来ればいつでも会えるぜ!」
「できれば勘弁ね…マルのせいで結構ひどい目にあったし…」
「まあそれはさておき…」
グレイがマルと冒険なんて勘弁と思っているようだが、カレハはあまり気にしていないようだ。
「依頼のお礼です!600ポケと復活の種8個ですよ!非公式ですしギルドにはとられませんよ。私達もトレジャータウンに居るのでたまに会えたらいいですね。では!」
「おう!またな!」
最後に『ギルドにはナイショだよ』と○ルダの伝説でお馴染みの台詞をカレハは言い、グレイと帰っていった。
グレイとカレハからお礼をもらったそのあとギルドの地下2階にきた。
「ふむふむ…なるほどな」
トリルに滝の調査結果を報告した。
「残念ながら宝石を取ってくることは出来なかったけどね」
「いやいやいやいやいやいや!!そんなことないよ!これは大発見だよ!」
「本当!?」
「本当だ!あの滝の裏が洞窟になってるなんて今まで誰も知らなかったわけだし♪」
「そっか大発見かあ!!」
「やったね!フーコ!」
みんなが喜ぶ中、オレはあの目眩のときのポケモンの影を思い出していた。どこかでみたような…見覚えはあるんだが…間違いない…あれはフリルだ!
「この発見は凄い!はやく親方様に知らせなくては」
「ちょっといいか?」
「ん?どうしたん?」
「親方ってあの滝に行ってことがあるんじゃないか?」
「いやいやいやいやいやいや!!それはあり得ない!あり得ませんぞww!」
「論者はお帰りください」
「それだったら調べてこいなんて…言わないはずなんだがなあ…」
「一応ってこともあるし…頼むよ!」
「そこまで言うなら…確認してみる。(しかしせっかくの手柄なのに…変な奴だな…今更だが…。また妙な奴を弟子にしちゃったなぁ…)」
…トリルの心の声が丸聞こえ。妙な奴で悪かったな!
「どないしたん?」
「いやいやいやいやいやいや!!」
「慌て過ぎ…」
フーコがどうしたのか聞くとあわてて翼をバサバサさせた。そして____
「とにかく!今から確認してみるから…そこで待ってるんだぞ!」
と言い親方様の部屋に入ろうとした。まだトリルに聞きたいことはある。
「もう一つ!」
「なんだい!」
「ヒノの具合はどうなん?」
「ああ…ヒノは一晩寝ればよくなるよ。それじゃ聞いてくる」
ヒノはとりあえずすぐによくなるみたい…よかった。
10分後
「それで…どうだったの?」
「親方様に聞いたらしばらく悩んで…そのあと『思い出♪思い出♪たあーーーーーっ!!』…とかやってそれで…『ああ!よく考えたら僕行ったことあるかも!』…とおっしゃった。」
「ざ、残念…」
「ショウの思った通り…滝壺の洞窟には既に行ってたみたいだな」
「はあ〜そっか…」
「ガーン…」
「新しい場所を見つけたと思ったのに…」
「こんなことだったらフリルも最初から言ってくれればよかったのに…」
「親方様はフェアリータイプだからな……ワタシにも何を考えてるのかいまいちよくわからないのだ。まあ残念だったな。明日からまたがんばってくれ!」
「ううっ…」
トリルは陽気に笑うと上の階へ上がっていった。
何も見つからなかったのは悔しいけど明日からまた頑張ろう。
弟子部屋
冒険で疲れたのかもうマルとフーコとチコは寝ている。ヒノは1日寝ていたのだろう。うっすらと体毛が湿っているようだ。
「なんか疲れたな…」
「色々あったね今日は」
「でも楽しかったな」
「うん…」
「もう寝るか…」
「そうだね…おやすみ」
カケルに声をかけて寝ようと思ったがなかなか眠れないので一日を振り返ることにした。
今日は大変な1日だった。ワクワクドキドキした。水に流される時はヒヤヒヤしたけど楽しかったなぁ…。
「おい…起きてる奴いるか?」
「な、なんです?」
いきなりトリルが部屋に来た。
「親方様がお呼びだ」
起きていたオレとカケルは親方様の部屋に連れて行かれた。
親方様の部屋
「親方様。チームポケダンズのショウとカケルを連れてきました。」
フリルからは返事はない。
「親方様…親方様?」
何この既視感は…
「やあっ!!君たち今日は大変だったね!」
やはりか…いきなり振り向いた。
「ま、まあ…」
「でも君たちの活躍はちゃんとみてるから安心してね!それで…これからが本題なんだけど…近々遠征をする予定があるんだよ!」
「え、遠征?」
「ギルドをあげて遠くまで探検に行くんだ。当然ご近所を探検するのとは訳が違うから…準備もそれなりにして行く。ギルドの中からメンバーを選んで遠征するんだ。」
「へぇ〜!」
「いつもなら新弟子は遠征メンバーに入れたりしないんだけど…君たちすごい頑張ってるじゃない!?だから今回は特別に君たちも遠征メンバーの候補に入れることにしたんだよ!」
フリルは頑張りを見てくれていたようだ。
「本当か!?」
「こらこら!本当だがまだメンバーにすると決まったわけじゃないからな。遠征までにはまだ時間がある。それまでにいい働きをしなければ…メンバーには選ばれないからな」
トリルはあくまで釘を刺す。
「僕は君たちなら『大丈夫だ!問題ない!』と信じてるよ!がんばってね !!」
「ふ、フラグ…でも頑張ろう!遠征だよ!メンバーに選ばれるように頑張ろう!」
「ああ!」
フリルがフラグみたいなことを言ったけど気にしない…だってもう眠いし……おやすみ。