第十六話 初めての探検
sideショウ
今日はすんなり起きれて目覚めが良かった何かいいことがあるに違いない。そんなことを思いながら朝礼に向かった。
「えー…今日はみんなに伝えたいことがある。ここから遠く北東にいったその奥にキザキの森という場所があるのだが…そのキザキの森の時が…どうやら止まってしまったらしいのだ…。」
開口一番トリルが話したことにギルドメンバーは騒然とする。
「えっ!?」
「な、なんだと!?」
「なんですって!?」
「時が止まっただってヘイヘイ!!」
「ほんとなんですか?」
デイ、ボイム、ヒナ、へイン、ライムと驚きの声を上げる。
「そうだ…。時が止まったキザキの森は…風も無く雲も動かず葉っぱについた水滴も落ちず…ただその場でたたずむのみ。そう。キザキの森は時間そのものが停止してしまったらしいのだ。」
「時間が…止まってしまったのか…。」
「でも…いったいどうしてそんなことになったんでしょうか? …!!…ま、まさか!?」
「そう。そのまさかだ。キザキの森の時が何故止まったのか…それは…キザキの森にある時の歯車が…何者かによって盗まれたからだ。」
「なっ…」
「ええ〜〜〜!?」
「ぬっ、盗まれた??」
「時の歯車がか?」
「それで時間も止まったのかよ!ヘイヘイ!」
「そんな噂を聞いたこともありましたけど…」
「ほんとだったのねぇ」
「しかし信じられん!時の歯車を盗む奴がいるなんてよっ!」
リンは何処かで聴いたみたいだが、ララは目を見開いているし、ボイムは声を大にして怒っている。
「みんな静かに!既にジバコイル保安官が調査に乗り出している。時の歯車を盗む者がいること自体信じられないのかだが…盗まれたからには他の時の歯車も危ないのかもしれん。不審な者を見かけたらすぐに知らせてくれ言っていた。だからみんなも何か気がついたら知らせてくれ。以上だ。それではみんなっ、今日も仕事にかかるよ!」
「おおーーーーーっ!!」
トリルが神妙な顔をして最後に話して今日の朝礼は終わった。親方のフリルは何の反応も示さなかった。多分何時もの通り寝ているのだろうか。
なんかいいことがあると思ったんだがなあ…。
「ああ…お前達。お前達はこっちに来なさい。」
いきなりトリルが呼び出した。
「お前達。だいぶ仕事に慣れてきたな。特にこの間ソウムや三猿を捕まえたのは見事だったぞ!」
「あ、ありがとうございます!」
「そこで!今日はいよいよ探検隊らしい仕事をやってもらうよ。」
やっぱりいいことあるじゃん!
「ほ、本当に!?よっしゃぁ!」
「不思議な地図を出してくれ」
「よいしょ」
「ここがトレジャータウンだ。そして今回調査して欲しい場所はここ…ホラッ、ここに滝が流れてるだろう?一見普通の滝に見えるのだが…この滝には何か秘密があるのではないかとの情報が入った」
「流石は情報屋…」
トリルの情報収集におどろく。
「そこでお前達にこの滝に何があるのか調査してきて欲しいのだ。以上だ。今回の仕事わかったかな?」
「理解した!」
「よし!では滝の調査しっかりな。頼んだぞ!」
「初めての探検隊の仕事だよ!ワクワクするね!」
マルはワクワクが止まらないみたいだ。何かしでかさないといいけど…。
「ああ!みんなっ!頑張るぞ!」
「おおーーっ!」
「くしゅんっ!私は風邪を引いたので…休みますね」
みんなが掛け声を上げる中、ヒノは大きなくしゃみをした。
「ヒノ。平気か?」
「まあ…なんとか…」
なんとか…と言ってるけどかなり辛そうだ。ヒノは先日のアルバイトで体調を崩したのだろう。かわいそうだけどギルドで休んでもらうしかない…。
「ヒノはワタシたちで看病しておくからな。お前達は滝の調査…頼んだぞ!」
「はい!ヒノ…行って来るよ!」
「お土産話してくださいね」
「任せとけ!」
ギルド地下一階
「あっ!ショウさん!フーコさん!」
「あれ?あんなとこにリンが…」
カウンターの所にリンがいた。
「どうしたん?」
「私今日からここで編成所を始めることにしたんです」
「編成所?」
「はい。フーコさんたちは仲間が欲しいとかって思ったことありませんか?」
「仲間?うん。仲間は欲しいかな。ウチら6人の他にも仲間がいれば…ダンジョンを冒険するのにも助かるし」
「だったら!仲間を増やしましょう!」
「ど、どうやって?」
「今からポケダンズに友情のベルを鳴らします!いきますよ!えいっ!!」
リンは友情のベルを鳴らした。
「これでポケダンズにも仲間が出来るようになりましたよ!」
「ほ、本当?」
「はい。これからはダンジョンで他のポケモンと戦っていると…たまに友情が芽生え…そのポケモンが仲間になってくれると思います。」
「あ、ありがとう!リン!やったねショウ!仲間が増えるよ!」
「よかったな」
リンの編成所を後にしショウたちは滝へと向かう。
秘密の滝
「ここが…秘密があるという滝か」
「うわっ!!」
「マル!大丈夫か?」
「うん。水の勢いがすごいよ!ショウも滝のそばまで行ってごらん」
「危ないよショウ!」
「逝ってくる」
「字が違うよー!」
おお…ほんとに勢いすげーな。今にもふきとばされそうだ…って
「うわっ!」
「すごいでしょ?」
「だから危ないって…」
「この滝に打たれたらバラバラになっちゃうかもね!」
マルが死亡フラグを建てました。滝って…フーコが効果抜群だろ…炎タイプだろ?
「それにしてもこんなに勢いがあるとは思わなかったよ」
「いったいどこから調べたらいいんやろか…」
フーコたちが悩んでいる間ショウはまた目眩に襲われていた。
(これは…前にもあった…あの目眩か…。)
ショウの脳裏に浮かんだ夢…それはあるポケモンが滝の中に突っ込んで行きその奥に洞窟が…
(またか…何か見えた。今のはいったい?なんだ?)
「どうしたのショウ?」
カケルがオレの異変を察知したのか声をかけてきた。
「実はな…かくかくしかじか…」
「ええ〜〜〜〜っ!?」
「さっきまた夢のようなものを見て…」
「今度は1人のポケモンが滝に突っ込んで行ったんだって!?」
「ああ…この滝の裏側は洞窟になってる」
「うーん…」
「滝の勢いはこのとおり凄いし…仮に裏側に何もなかったら…ウチらそんなとこに突っ込んで行ったら…そこで死ぬわよ?」
少し間をあけてフーコはオレに尋ねる。
「………。それでショウはどう思ってるん?この滝の奥に洞窟があると思ってるんか?」
「ああ…オレはそう思う」
「わかったわ。ウチはショウを信じるわ!ショウを信じる!」
「ボクも。ショウについていくよ!」
「アタシも!」
「こ、怖いけど…ボクも…」
「マル!勇気をだすのよ!中途半端にぶつかったらどっちみち大怪我するんだし…思い切りぶつかるわよ!」
みんなが信じてくれた。やっぱり仲間っていいな。
「勇気を見せてよ!マル!それじゃいつまでもヘタレよ!」
「勇気を振り絞るんだ!」
「うん!」
「フーコいいか?」
「あんな水くらい平気よ!」
「よし!いくぞみんなっ!3…2……1………それっ!!」
オレたちは滝へと突っ込む。そして滝を抜けて…コロコロと地面を転がる。
「イタタタタ…平気か?みんな」
「ここは…ここは…ココアで一服。」
「ボケてる場合か!」
てかどこにココアもってたんだよ。
「どうやら洞窟みたいだよ」
「やったね!」
「ショウは正しかったんやな!行こう!洞窟の奥へ!探検開始よ!」
フーコの掛け声で洞窟の奥へと進む。
しばらくして______
「なんか動き回ったからお腹空いたな。マル、リンゴあるか?」
「もちろん!」
マルはリンゴを探すがなかなか見つからないみたいだ。
「マル!リンゴやピーピーマックスの入ったトレジャーバックはどうしたの?」
見かねたチコが声をかけた。なんとなく…なんとなくだが…嫌な予感がする。
「わわ忘れた…」
「どこに!?」
「ギルドの弟子部屋に!」
「ギルドの弟子部屋ね…なら仕方な…はあ?!何やってんのよ!くぁwせdrftgyふじこlp…」
チコが言葉にできない奇声をあげている。これはやばいかもな。
「腹減ったー…まだ入ったばかりだけどさ…」
つい、言葉がこぼれてしまう。
「まあまあ…チコ、フーコ、ショウ落ちついて…初めての探検だから慌ててたんだし大目に…」
「甘いわよカケル!それだからいつまでもマルは…」
カケルが仲裁に入るがチコは止まらない。こんな時に敵が来たらまずいぞ……。
その時。
「す、すみませーん」
との声とともに後ろからつつかれた。
「な、なんだ?敵か?!」
「敵なら悠長に話しかけたりしないわよ!」
敵かと思い体制を整える。 が、その必要はなさそうだ。話しかけてきたのは2人のイーブイだ。片方は普通の毛並みなのだがもう片方は茶色い毛が多い気がするな。
「違いますよ…!探検隊かな…と思ってちょっとお願いしようかなと…」
と、茶色い毛が多い方が答える。
「あ?ああ…そうなのか?すまん。オレはショウ。見ての通りコリンクだ。あと探検隊ポケダンズリーダーだよ。」
「ショウ!誰なのこの2人は?」
「私はカレハといいます。種族はイーブイです。それで隣にいるのが…」
「同じくイーブイのグレイよ。よろしくね!」
チコがこっちに声をかけてきた。イーブイ2人はすんなりと挨拶をする。
「ウチはフォッコのフーコよ!」
「ボクはポッチャマのマルだよー!」
「アタシはチコリータのチコです。」
「ボクはゴンベのカケルです。こちらこそよろしくね。」
フーコ、チコ、マル、カケルと自己紹介をした。
「お腹空いてるんでしょ?」
「え?なんでわかるの?」
カレハの問いにマルが不思議そうに答える。
「あんなわかりやすく言い合ってれば嫌でもわかるわよ…」
「そんなに大きな声だったウチら?」
「うん」
グレイが呆れた顔をして答えた。まあ、洞窟に響いてたからな…。
「それっ!りーふぶれーど!」
カレハはトレジャーバッグから大きいリンゴを取り出し上に投げリーフブレードで切り刻む。
「はい。セカイイチですよ。」
そう言いながらカレハはセカイイチを何食わぬ顔で6頭分してオレたちポに渡し、
「グレイ!残りはあげるね?」
とグレイに渡した。
「いただきまーす!!」
とても甘くてうまい!なんと言うか…みずみずしくて…。とりあえず口では言い表せないほど美味しいリンゴだ。
「あ、それでお願いって?」
カレハがさっき言いかけたお願いのことをきいてみる。
「奥まで行きたいんです!探検しに来たので…2人じゃ心細くて…」
どうやらオレたちと同じく滝の秘密を調べに来たみたいだ。
「それじゃ、カレハさん、グレイさん、一緒に行きますか!いいよね?みんな?」
「「「「いいよー!」」」」
「「ありがとうございます!」」
カレハとグレイがしばらくチームに参加した。依頼人を安全に場所まで送り届けるのも探検隊の立派な仕事だ。
さあ、洞窟の奥まで探検だ!