第五十五話 セコム・セキュリティ
「ユー達のチームの名前は?」
「ルーチェ・デル・ソーレです。」
こうなってしまった以上仕方ない。なるようになれ! オレが探検隊の名前を言うとセコムは手の一つを顎に当てて悩み始めた。
「ルーチェデルソーレ?? パッとしない……それならミーがいい名前をつけてあげよう!」
「やったーー!!」
「なんやこの人達……。」
「物凄くいい名前がつかない気がする。」
眉間に皺を寄せてセコムは言った。マルは無邪気に喜んでいる。まあ、それと対照的にフーコとホルンは顔をしかめているけど。人達にはマルも含まれているのだろう。
「ユー達のチームの名前は……ライトニングなんてどうだ?」
「かっこいい〜!!」
「ど、どこがだぁ〜!?」
ルーチェデルソーレのは太陽の光という意味。ライトニングは光り輝くって意味だったような。ということは……意味はほとんど変わってない! マルがかっこいいって言うけどオレにはわかりません。チーム名の意味を知ってるセコムにも驚きだ。
「それじゃ、登録する。おーい! 紫蘭、シラン!」
彼が叫ぶと、扉が開き、銀縁眼鏡をかけたコジョンドが入ってきた。
「はい、オーナー。お呼びでしょうか。」
「一体キミはどこに行っていたんだい? まあ、いい。彼らが新しいファイターだ。案内してあげたまえ」
「はい。わかりました。あなたたち、ついてきなさい。」
せかせかとシランは早足でセコムの部屋を出ていく。それを追っていくのも大変でオレたちは全員小走りだった。最初に連れてこられたのは金ピカのドアの前だった。
「ここはチャンピオンの部屋です。今はちょっとクセがあるが…見てみなさい。」
シランはドアを開けて中に入った。マルがそそくさとそれに続き、オレ達全員も入っていった。
その部屋は全部金ピカで眩しくて、オレは何回も瞬きをしてしまう。
「わあ…すご〜い!」
「ウチはちょっとなあ……」
「それは私も同感です。チャンピオンになればこの部屋の模様替えもできるのでご心配なく。」
マルは目をキラキラと輝かせてうっとりしているが、フーコは顔をひきつらせている。シランも同じような顔をしているが、多分オレも顔が引きつっているだろう。
「さて、そろそろいいでしょう。あなた達は2部リーグから始めていただきます。案内します。ついて来なさい。」
すたすたとシランは歩いていくから追いかけるのが大変で、マルは迷子になりかけて半分涙目になっていた。
「2部リーグの控え室はここです。」
「あまり綺麗じゃないな。」
むわっと広がる汗の匂い。薄黒い壁と床。壁も床も塗装が剥がれ落ちており、ロッカーは幾つか壊れている。
「試合登録はこのボタンを押せばできます。登録されたら係の者が来ますので、それまで待機していなさい。試合登録の際、オーナーが条件を出すので、それには従うように。汚いのが嫌なら早く1部リーグに上がれるよう精進しなさい。それでは。死なない程度に頑張りなさい。」
シランは淡々と試合登録の説明をすると足早に去って行った。
「なんか冷たい人だなあ」
「おうおう、新入り。」
「新入りかあ…久しいなあ、あいつが冷たいのは元々だぜ。」
「あっ、俺はボロドー。名前の通り……こういうことが得意だぜ。」
ゾロアークのボドローはバッジをオレに投げた。ふと見るとマルの探検隊バッジがなくなっていた。隣にいるのはクリムガンでグリムと名乗った。しばらく消息不明の探検隊について2人に探りを入れていると……。
『ユー達の初戦の相手はショダイゴサンケーズだ。ユー達は4人まで試合に出られるぞ。普通に戦ったんじゃつまらないから、ミーが条件を出そう。今回の条件はアイテムを使うな。アイテムに頼っていたんじゃ試合が面白くないからな。それじゃ頑張ってくれたまえ。』
セコムの声がぷつりと切れるとフーコが叫んだ。
「何勝手に試合登録してんねん!!」
「だってここのボタン押したかったんだもん!」
「マルのあほーー!!!」
いつの間にかにマルが試合登録をしていた。耳の毛を逆立てフーコは叫ぶ。それは耳から火が出そうな勢いで。マルはそれに負けずに声を張り上げた。それよりも他のチームのネーミングセンスからやっぱりセコムはネーミングセンスが皆無なのだろう。
「ま、まあ…頑張れよ。」
マルとフーコが叫ぶ中、グリムは苦々しげな笑顔でオレ達を送り出した。