第五十四話 天空都市
時代を越えて 54 天空都市
飛行船に乗って一時間。ようやく天空都市が見えてきた。空に浮かぶその街は時間が経つにつれて大きくなる。
そして、到着した。マルが一目散に降りようとするのを制して、マサから聞いた話をした。紫色のオーラを纏うポケモン…あのザングースのようなポケモンに気をつけるということを。
「わかってる。注意しないとだね。」
「せやな。」
ホルンとフーコは眉間に皺を寄せ、頷いて答えた。だけどマルは……。
「そんなにいるわけじゃないから大丈夫だよ〜!」
「そう言ってるとやられちゃうよ?」
マルの言ってることは確かに一理あるけども念には念を入れておかないと痛い目に遭うだろう。それを心配したのかホルンは言った。
「大丈夫、大丈夫〜! ボクは大丈夫!!」
「ほんとになんもないとええんやけどなあ……。」
マルの言葉に不安が残る。その時飛行船のアナウンスが入った。
「この飛行船は後5分で折り返し、パイラタウンへと参ります。ご乗車になってお待ちください。」
「は、早く降りよう!」
急いで飛行船を降りるとそこには噴水広場があり、近くには露店が一つ。そして闘技場が目の前にどーんと建っている。今回の依頼はこの闘技場に潜入し行方不明に探検隊を探すことが一つ。もう一つは探検隊が探していたお宝の入手だ。最後にその探検隊が目撃されたのがこの闘技場だと通信でトリルに教えてもらった。探検隊のポケモンの種族はマニューラとユキメノコ。名前はラセツとヒサメと言うそうだ。
そこのオーナーのセコム・セキュリティというカイリキーが語るにはラセツはスノウキャットという名前でファイターとして闘技場で活躍していたのだが、突然失踪したというのだ。その後、ヒサメはラセツを探している時にいなくなったので同じく失踪したのではないかと考えているそうだ。
失踪したにもかかわらず街の住民は誰一人ラセツとヒサメを見ていない。このことから探検隊連盟長はこの闘技場にこだわっているそうだ。だからオレ達はセコムには探検隊ということは伏せてここに潜入することにしたんだ。
「ねぇ、ちょっと…」
「どうしたんだ? カイ。」
「探検隊バッジ…外しておいた方がいいんじゃないかな。」
カイは目を細めてバッジを見ている。
「えー? いいじゃん付けっぱなしでも〜!」
潜入捜査だからバレたらまずいのにマルは全くわからないのか、それとも愛着があって外せないのかのどちらかなのかマルは嫌がった。
「見えないところにつけるからさあ…」
彼は続けて言う。
「あんたねぇ……いいから外そうよ」
「バレたら一巻の終わりだよ?」
フーコが眉を顰め、ホルンが心配そうな顔をした。マルは心配いらないとばかりに胸を張る。
「つけててもいいけと気をつけろよ……?」
「もっちろ〜ん!」
不安しかない……。とりあえず闘技場へ行ってみようか。
想像以上の喧騒だ。試合でもしているのか盛り上がっている。しかし、フロントには人がほとんどいない。
「あらあら。どうしたのかしら?」
フロントにいたタブンネが笑顔で近づいてきた。カイは少しだけたじろいだ。
「あの……ウチら、選手になりたいんです!」
「へぇ……? それならセコムさんのところに案内しますかね。」
タブンネはにっこりと微笑みオレ達の前に立った。この人の喋り方は穏やかなんだけどどこか怖さを感じる。
「セコムさーん! 入りますね〜!」
「はいはーい!」
中から陽気な声が聞こえてきた。タブンネが扉を開けるとそこにはカイリキーが席に着いていた。
「ユー達は探検隊?」
「そうだよー!」
「(おいいいいいい!!!)」
オレは心の中でマルにツッコミを入れた。ついさっきセコムに探検隊の身分を隠そうと決めたばかりなのにこうも早く破られるとは……。
「そう。それなら早速ユー達の選手登録をしようか。」
そう言って彼は名簿を開いた。