第五十三話 ゴロツキの街 パイラ
エレキ平原に向かうカケルたち。その頃ショウたちはゴロツキの集まる街、そして、天空都市へ向かう飛行船が出ているパイラに到着した。
「みんな〜! 早く早く〜!」
「おい、そんな走るなって!」
マルがいきなり走り出した。そんなに走ったって飛行船は逃げないのに。
「わかってr…ぐぇっ…!」
「言うてる側から……」
「だ、大丈夫なんですかね……」
オレが言ってる側からマルは何かに激突した。フーコは呆れた声色で溜息をついた。ホルンはマルが激突したその何かを見て言った。そう……マルが激突したのはいかにも悪そうなザングースだった。
「……ってーなこのやろう!」
「ご、ごめんなさいおじちゃん!」
気が短いのかザングースは声を荒げた。マルは咄嗟に謝った。しかしなあ……まだそれなりに若そうに見えるのにおじちゃんって……それは火に油を注ぐようなもんだろ……!
「おじちゃんだとぉ!? この若くて美形なザクスカ様をおじちゃん呼ばわりしやがって! うぬぬぬ…! 許せんッ!」
「し、ショウっ!」
「……って、えっ!?」
ザングース……もといザクスカが牙を剥いてマルを睨むと彼はすぐにオレの後ろに隠れた。おいやめてくれオレは何もしてないぞ。
「そこのコリンクとテールナー、それにナエトルはそのペンギンの連れだな?」
「ま、まぁ……。」
「認めたくねーけど……。」
「酷いよショウー!」
「冗談だってば!」
「僕省かれてる。」
某カントーライバルみたいなことを言ってなんとか誤魔化そうとする。カイは不満気に尻尾を揺らす。
こんなことをしている間にザクスカは間合いを詰めてくる。
「てめぇら! ギタンギタンのボッコボコにしてやんよ! ブレイククロー!」
「避けるんや! ショウ!」
ザクスカの爪がオレの頭の上に降りかかる。早い…避けられないっ! そんな時、かばうようにオレとザクスカの間に割って入ってきた人がいた。
「守る……ッ!」
「な、なんだ貴様ッ! 邪魔をするな!」
茶色とクリーム色のしましま模様で胴が長いポケモン……。これは……?
「街の門番として喧嘩を止める。不意打ち!」
目にも留まらぬ速さでザクスカに突撃し地面に倒す。ザクスカもすぐに立ち上がり再び攻撃態勢に入った。
「ダーク…クロー!」
「……。」
紫色のオーラを爪から二の腕にかけて纏いオオタチの方に疾走してくる。そのザクスカの姿はまるで何かに取り憑かれ戦うことだけを考える戦闘マシンのようだ。
「うォおおウオおおお!!」
「無駄だ。おんがえし!」
雄叫びをあげ走って向かってくるザクスカにオオタチは冷静に言い放ち、彼の脇腹を尻尾で叩きつけた。すると彼は吹っ飛び後ろに積んであった樽にぶつかり倒れた。
周りからはいつ集まったのかわからない人たちの歓声が飛んできていた。
「おまえら、ちょっと来い。」
「は、はいっ。」
オオタチに腕を引っ張られて観衆の輪を抜け近くの宿に入ったのだった。
「先程は災難だったな。」
「お強いんですね。」
オオタチが溜息混じりに言うとホルンが褒め称えるように彼に言った。
「いや、俺は門番としての仕事をしたまでさ。門の近くで喧嘩を起こされちゃたまらないしな。あっと…俺はマサっていうんだ。一つしかないパイラの門の番をしている。」
「オレはショウ、探検隊ルーチェ・デル・ソーレのリーダーです。」
「ウチは副リーダーのフーコ。よろしゅう。」
「ボクはマルだよ。よろしく!」
「僕はホルン。よろしくね。」
「僕はカイだよ。」
「ああ、よろしく。」
オオタチはマサと名乗った。オレたちも名乗ると彼はにこやかに笑った。
「こんな街に探検隊が来たんだ。飛行船に乗りに来たか地下遺跡の調査かのどっちかだろう?」
「そ、そ、そそうや…そうやで。」
「オレたちは飛行船に乗りに来たんだ。」
だいたいはお見通しといった風にマサはウインクをした。フーコがなぜか少しあたふたして答えからオレが補足した。
「チケットはあるのか……? 盗られてないよな?」
「はい、ちゃんとあります。」
チケットを5枚ひらひらさせてマサに見せた。
「そうか。ならいい。この街は犯罪件数ナンバーワンだからな。ギルドもないし念のためだ。気をつけろよ。」
「はい。」
「不安だな。俺が飛行船着場まで送ってやろうか? 門番は別のやつに任せておいたし。」
「それじゃ…お願いします。」
「ああ。」
マサは心配そうな顔を崩さずに言った。
マサが付いてきてくれたおかげで無事に飛行船着場に到着できた。チケットも見せたからすぐに飛行船に乗れる。
「ありがとうございました。」
「いやいや、よかった何もなくて。」
「では、またお会い…」
「別れる前に一つ言っておくことがある。ショウ、耳を貸せ。」
なんだと思いながらマサに近づいた。
「先程のザングースのような奴には気をつけろよ。紫のオーラを纏った人には要注意だ。あとで他の4人にも行っておけ。」
それだけ言うといそいそとマサは帰っていった。
「一体何だったの?」
「飛行船そろそろ出るって〜! 急いで〜!」
入口からもう乗り込んでいたマルが叫んだ。
「詳しいことは飛行船内で!」
「うん! 了解!」
オレはそう言うと走ってマルの方に向かった。フーコとホルンとカイは頷いてついてきた。天空都市はどんな場所なのか心を躍らせながら。