第五十一話 ヨノワール
遠征から戻ったオレたちにはまたいつもの修行の生活が待っていた。助っ人に来ていたサンライズの四人はしばらくトレジャータウンに滞在するらしい。レインとラクサスは疲れを取りに温泉に行った。カレハとグレイはトレジャータウンに家があるらしくそこに帰っていった。
「今日も仕事にかかるよ♪」
「おおーっ!!」
「久しぶりだからがんばろ!」
「おお、やる気があることはいいことだ♪ そこでお前たちにお願いが…」
いつもの朝礼が終わって今日も依頼を頑張ってこなそう…そんな時にトリルが呼び止めた。その声はボイムの声によって掻き消された。
「なにっ!? 足型がわからない!? 」
「だって〜…わからないものはわからなうよう……」
デイが不貞腐れたような声でボイムに反論した。
「どうしたんだ?」
「足型のわからないポケモンが来ているんだ。」
トリルが聞くとボイムはそう言った。そしてオレたちの方を向いてこう続けた。
「こいつらみたいな素人ならまだわかるんだがな…」
「ちょっと待て! オレとカケルの足型わからなかったじゃないかよ…」
「知らんな」
ボイムが冷たく言う。なんてやつ…。その時デイの声が聞こえてきた。
「ええーっと…お名前は? ヨノワールのレイクさん? 親方様に会いに来たんですか? 少々お待ちください。」
「ヨノワールのレイクだって!?」
「あの有名な!?」
「レイクって何者なんだろ…」
聞いたことないな…そう思っているとヒノがオレに耳打ちした。
「最近有名になった探検家ですよ。彗星の如く現れて様々な結果を残したそうです。なんといっても特徴的なのは私たちみたいにチームを持たず単独で行動するところです。」
「1人でか?」
「そうです。よほど腕に自信があるんでしょう。」
そこで話は打ち切られてギルドメンバー全員でレイクを迎えることになった。
「来てくれてありがとー♪ 友達♪ 友達♪」
「いえいえ、こちらも名高いプクリンのギルドにこれて光栄です。」
「なあ、ボイム。親方様っていつもあんな感じなのか?」
ジーナスが首を傾げている。
「ああ。親方様はいつもこんな感じだ。レイクさんとは初対面のはずだがな。誰であろうが関係ない。」
「今回の冒険は大失敗。何もわからなかったよ〜。」
失敗したといいつつもどこかトリルは楽しそうだ。霧の湖の楽しい記憶があるからなのかな。
「そうですか…プクリンのギルドが霧の湖に挑戦すると聞いたのでその成果を聞こうと思ったのですが…」
「ごめんね〜。何もわからなくて。」
「これも何かのご縁、しばらくこの街に滞在するのでたまにここのギルドに顔を出してもいいでしょうか?」
「もちろん大歓迎だよ! ここには色々な探検家達が出入りしてるから。と、いうことでみんな、ヨノワールさんがしばらくトレジャータウンにいるけど…あまり迷惑かけないようにお願いね?」
「間違ってでもサインとかねだらないように! わかったな。」
「一番あなたがもらいそう…」
トリル……お前が一番サインもらいそうだよ。その心を読み取ったかのようにシュエルは小さく呟いた。
「いやいや、サインくらいお安い御用ですよ。私の知識などつたないものですが皆さんの役に立てたら嬉しいです。」
「それじゃ、解散!」
トリルがそう声をかけるとみんながそれぞれの持ち場へ散っていった。
「ああ、お前達はこっちに来なさい。話がある。」
「ちょっと待ってくれ!話を整理させてくれ!」
「ああ…」
「オレたちポケダンズに探検隊連盟から特命の依頼がきた…ってこと?」
「そうだ」
「ちょっと待ってよ!ボクたちまだゴールドランクだよ?依頼の内容は?」
「ランクは関係ない。探検隊連盟の会長が決めたことだからな。お前達は会長に気に入られたのだ。内容は空に浮かぶ街__天空都市へ潜入して行方不明の探検隊を探してくるという依頼だ。あともう一つ。その探検隊が探していた天空都市にあるお宝を見つけてくるという依頼だ。」
「どんなお宝なの?」
「金色の星の形をした宝石だ」
「へぇー…それはそれは…」
「ねぇねぇ! それって見つけたらボクのものにしていいの!?」
「ダメだ。依頼主にしっかり渡すんだ。」
「トリル。」
「ん? なんだ?」
フーコがトリルに話しかける。トリルは眉をひそめて言った。
「チーム名変えたいんだけど。」
「ああ。どうするんだ?」
「ちょっ…ボクが考え…」
「ショウ、頼んでもいいかな?」
「もちろん。」
マルが口を挟もうとしたが有無を言わさずにフーコはオレに頼んできた。さてさてどんな名前がいいかな…。
ふと、カケルの手がオレの尻尾に触れた。
その時、ショウの脳裏にある記憶浮かんできた。
〜記憶の中〜
「太陽の光のことを昔の言葉でルーチェ・デル・ソーレと言うんだ。」
「ルーチェ・デル・ソーレ?」
「そうだ。これは太陽の光という意味を持つ言葉。太陽の光は昔、万人を照らしてきたのだ。だからこの世界を変えるためにも……」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
い、今のはなんだったのかな…? この声は…オレの声…それと…。グラードン像に触った時に見えた声と同じ…?
それにしても太陽の光か…いいかもしれない。
「ルーチェ・デル・ソーレなんてどう? 太陽の光って意味なんだけど…」
「それ…すごくいいね! それにしよ!」
「ウチもいいと思うよ」
「それじゃ、これで再登録しておく♪ 今日は準備をしっかりして特命依頼に備えてくれ。あと…カイも参加できるから声をかけたらどうだろうか。」
カイか…。初めて会った時はまだオレたちより幼く見えたけど…進化して立派になったからな。連れて行きたいな。
「フーコ、カイにも声をかけよう。」
「もちろんや! カイに会いに行こう。」
「カイってどこにいるの?」
「ん? 海岸じゃないか?」
トリルが言った通り、海岸に来てみるとカイが砂浜で技を出していた。
「アクアテール! 」
水をまとった尻尾を岩に叩きつける。砕けはしないが少しだけ凹んだように見えた。
「カイ!」
「みんな…どうしてここに?」
「あんたを探しに来たんよ。」
カイが驚いて目を見開いてオレの方を見た。
それからトリルからの内容を話した。天空都市に行き行方不明者を探すこと。そこのお宝を探して持ち帰ることを。
「だから頼む…! 依頼に一緒に来てくれ!」
「僕で良ければいくよ。助けてもらったし、役に立ちたいし。」
オレが頼むと、彼はそう答えた。
「それじゃ、カイ。ギルドに戻ろうよ!」
「その前に依頼の準備しなくちゃな。」
トレジャータウンに依頼のために準備をして明日に備えることにした。かなりの遠出になりそうだ。
ショウたちが準備を終えて戻ってきた。その日の夜。ギルドの前で怪しげに立つ、3人の影。
「アニキ〜…遠征ではかなりやられちまいましたね…」
「クククッ…プクリンはどうしてあんなに強いんだ。正直悔しいぜ…クククッ…クククッ…うううっ…」
アニキと呼ばれたポケモンは涙声でそうこぼす。
「こうなりゃ、憂さ晴らしだ。ショウたちに仕返ししようぜ!」
「なるほどそれは名案! 帰って悪巧みだ。」
3つの影はギルドから離れていく。その影法師がショウたちに災いをもたらすことは誰も知らない。