第二話 夕暮れ時の海岸で
???
(ここは…どこだろう。
だめだ…意識が…。)
「うーん。どうしよう。」
「やっぱり不気味ね。」
と、ある日の夕方、プクリン型のテントの前を2人のポケモンがうろうろしていた。
「よし。今日こそこのギルドに弟子入りするわよ!」
「おーい!」
そこにもう1人のポケモンがやってくる。
「げっ…マル。」
「置いてくなんてひどいよー!チコ、フーコ!」
マルと呼ばれたポッチャマがぼやく。
チコリータのチコとフォッコのフーコは少し驚いている。
「どうすんのよ…」
「なんでマルがくるのよ…」
「はあ…結局踏ん切りつかないよ…宝物も持ってきたのに…」
宝物の石の欠片を見つめてフーコは溜息をつく。
「ポケモン発見!ポケモン発見!」
「誰の足型?誰の足型?」
「足型は…」
「うわわわああああああああああああ!!!!」
「見失いました。」
「そうか…またか…」
マルが腰を抜かしている。当然だ。声はギルドの前にある格子からきこえてきたからだ。足型が見えなくなって格子からは声がきこえてこなくなる。
「はあ…かえろチコ、マル…」
「そ、そうだね…はあはあ…」
「マルビビリ過ぎ。せっかくだし海岸で夕日でも見ようよ。」
「そうね。グッドアイデアだよチコ!」
「うん!」
3人が居なくなったギルドの前…ギルドの真横にあるトーテムポールの後ろから怪しげな2人組のポケモンが姿を現す。
「おい。ロース見たか?さっきの女狐が持ってた石ころ。」
「おうよクリス。あれは価値があるかもだな。」
「狙うか?」
「狙うぞ。」
ロースと呼ばれたズバットとクリスと呼ばれたドガースがフーコ達の向かった海岸へ向かう。
海岸
海岸には夕日と泡の綺麗な光景になっている。
「はあ…やっぱりここに来ると落ち着くよ。来てよかったわ…」
「チコもそう思うん?ウチもだよ。」
「綺麗だねー本当にー!あれれ?」
マルが何かを見つけたようだ。
どうしたん?マル。
「いや…あそこにいるの…ヒノアラシのヒノじゃない?」
刹那、チコの眼つきが変わりヒノに向かって走り出す。
「ヒノー!!」
「わっ!チコ!」
「あーあー…」
チコがヒノに飛びかかり彼は倒された。フーコは呆れている。
「ヒノ。ここで何をしてたの?」
「えっとね…あそこに人が倒れてたからちょっと起こそうと思ってね。」
ヒノが指差す先にはコリンクとゴンベが倒れていた。
「仕方ない…ウチも起こしたげるわ。」
「アタシも手伝うよ。」
「ボクも!」
「おーい。起きてくださーい!」
ヒノは既にゴンベを起こしにかかっている。マルもそっちに手伝いにいく。
じゃあウチらはこっちのコリンクを起こしますか。
「ねえ!起きて!起きてってば!!」
「zzz…」
チコはムチで体を揺らすがコリンクは眠っている。
はあ…仕方ないわね。
フーコは溜息をついた。
side コリンク
眠いのにオレの体を揺する奴がいる。誰だよと思い目を開けるとなんとそこにはフォッコとチコリータがいた。しかもでかく感じる。
「おっ!起きたね!」
「ぽ、ポケモンがしゃべったあ?!」
「はあ?なにいってるん?当たり前でしょ?」
「あのなあ…オレはニンゲン…」
「はあ?あんた…何処からどう見てもコリンクよ?」
「へっ?」
…?!!な、なんとっ!青と黒の毛並みに星型の黄色い尻尾…念のため水面に姿を映すけどどう見てもコリンクだ…。どうしてこうなった…。
「なんか怪しいわね…あなた。もしかしてアタシ達を騙そうとしてるんじゃないのー?」
「違うわ!ボケっ!いきなりポケモンになって記憶も無いのに、んなことできるかぁ!」
「そ、そうなの?」
「そうなんだぜ!」
「怪しくないんなら名前教えてもらえる?」
「オレの名前?名前は…」
「もしかして…覚えてない?」
「…いや、覚えてるよ。オレはショウ。師走翔(シワスショウ)だ。」
「アタシはチコリータのチコよ。」
「ウチはフォッコのフーコ。まあよろしゅうな。」
「さっきは疑ってごめんなさい。」
「かまわねぇよ。それであちらさんは?」
と、少し離れたところにいるポケモン達を指差す。3人は気づいたのか近づいてくる。
「ボクはポッチャマのマルだよ!よろしくね!」
「私はヒノアラシのヒノ。よろしくお願いしますね。」
「ボクは師走駆(シワスカケル)。見てのとおりゴンベだよ。」
「ん?カケル!?オレだ!ショウだ!」
こう言ってみるけど俺の今の姿はコリンクだ。分かってくれるか?
「ショウ…なの?」
「そうだぜ。いや〜よかったカケルも居て。」
どうやら分かってくれたようだ。
「あのーお二人はどんな関係で?」
ヒノが不思議そうにみている。説明すっかな。
「ああ…俺たちは双子の兄弟だ。種族は違うけどな。カケルは弟だよ。」
「うん。ショウの弟だよ。…でも、どうしてニンゲンからポケモンになったのかはわからずじまいなんだよね…」
「いいわね?ヒノ、チコ?」
「うん。」
「もちろん。」
「ボクもだよ。」
「マルには聞いてないのに…記憶を無くしてポケモンになったなら行く当てないのね?」
「ああ…」
「それならウチらと探検隊やらない?」
「探検隊?」
「そう。困ってる人を助けたり…未開の地を冒険したり…それに、ウチの宝物の…この遺跡の欠片。これの謎を解くのがウチの夢なんだ。
今日も探検隊になるためにギルドに弟子入りしようと思ったんだけど…勇気がでなくてさ…だからお願いっ!
ウチらと一緒に探検隊やってくれない?」
「カケル。」
「うん。」
「もちろんいいぜ。」
助けてもらったしな。
「よかったですね。チコ、フーコ、マル。」
「ヒノは…?」
「私は少し用事があるのでまた後で」
「わかったわ。バイバイヒノ」
ヒノはこの場を立ち去った。
「遺跡の欠片って不思議な模様だねー…」
「本当にそうだな。」
ドカッ!
あれ?マルが吹っ飛んで…あれはドガースにズバット?
「なにすんだよ!」
「何って…お前に絡みたくてちょっかい出してるのさ。」
「え?」
なんだこいつら?ナンパ師か?
「これはお前のかな?」
「あっ遺跡の欠片!」
いつの間にか遺跡の欠片がドガースに取られていた。なんだ強盗か。呆れた奴らだ。
「マルー…何してんのよ!」
「ウチのもんだよ!返しなさい!」
「返して欲しければ腕ずくでかかってくるんだな。」
「……。」
フーコは怖いのか震えている。
「おや?かかってこないんだな。意外と意気地なしなんだな。」
「行こうぜ。」
「ケッ…そうだな。」
「じゃあの。弱虫くん達。へへっ。」
いきなりマルを突き飛ばした。ドガースとズバットは海岸にある洞窟に入っていった。
「ううっ……ショウ。カケル。ウチの宝物取り返すの手伝って!」
「オレはいいぜ!あいつにはムカついたからな。」
「ボクも。許せない。」
「フーコ…でもあの洞窟は不思議のダンジョンよ?」
「わかってる。」
「…アタシも行くわ。フーコの苦手が多そうだから。」
「助かるわ。マル!あんたのせいでもあるんだからあんたも来なさい。」
「うわああああ!!」
マルは悲鳴を上げた。ヘタレか?まあ、とりあえずあのドガースとズバットからフーコの宝物を取り返す!
海岸の洞窟 B1F
「技どうやって出すんだ?」
「あ…(察し)」
「ググればわかるわよ。」
「んなもんないわ!」
「感覚だよ。か・ん・か・く。」
「…う、うぜぇ…」
マルの野郎め…。
「ショウ落ち着いて…」
「おうよ…。ボケかまさないで教えてくれ…」
「あそこにカラナクシがいる!体当たりぐらいできるでしょショウ?」
「わかったよ!」
「わわ…カラナクシがこっちに気づいた!あっちからはカブトとシェルダーも!」
「チコとカケルはカブトとシェルダーを倒して!フーコはその後方支援!オレはマルとカラナクシを倒す!行くよ!」
「わかった!行くよチコ!カケル!
了解っ!ひっかく!」
カケルは早速シェルダーに向かって走り出す。
「行こうショウ!」
「だな!たいあたり!」
マルとショウも敵に向かう。たいあたりでカラナクシにぶつかり吹っ飛ばす。しかしカラナクシもただではやられない。
「よくも…どろかけをくらえ!」
「みずでっぽう!」
マルの繰り出したみずでっぽうが泥を打ち消し水がカラナクシにあたる…が、
「効かないな!」
「どどどうしよう…!」
(体を集中させて…電気を出すイメージだ…)
「それっ!」
「うばばばばば!!」
カラナクシはショウが出した電撃をくらいダウンした。
「マル。カラナクシは呼び水よ。だから水タイプの技が効かないのよ!」
「そうなんだ〜!」
「探検隊になるんだったら知っときなさいよ…」
「こっちの敵はチコのマジカルリーフで一掃したよ。」
「お疲れチコ!もちろんフーコとカケル…そしてマルも。それじゃ、気を取り直し…いてっ…!」
「あー…言い終わらないうちに転ぶんだから…」
「マル。このタネはなんだ?」
「癒しのタn「爆裂のタネよ。食べると近くにいる敵にダメージが与えることができるわよ。爆風に注意だからだいたいは投げて使うんだけどね。」
「チコ詳しいな。サンキューな!」
「どーいたしまして!」
…見てよ。あそこに。さっきの2人が…
あ…本当だ。何してんだろ…聞き耳立てるか。
「…どうやらあの石でキャッチボールをしてるみたいだ。」
「ボクもやる〜!」
「マル!」
アホかあいつは!!
「仕方ない。行くぞ!」
「ぬ、盗んだものを返してよ!あれはウチにとって大事な宝物なんだ!
マルの前に出てフーコは言う。」
「ほれよ」
「えっ?」
ドガース___クリスが投げてきたものをフーコへ。フーコはよけてその後ろにいたマルに直撃。
「ぶわっ!」
「マル!」
「zzz…」
「…起きろ!!」
「マルの役立たず!」
「睡眠のタネね…仕方ないわ。」
睡眠のタネでマルは寝てしまったみたいだ。そんなマルに罵詈雑言を浴びせるフーコ。
「オレらで奴らを倒そう。」
「ほほう…やれるもんならやってみるんだな。」
「弱虫くん達に負ける気はしないけどな!」
「弱いか強いか証明して見せるよ!
行くぜみんな!」
「へへっ…先手を打つぜ。エアカッター!」
「ケッ…どくガス!」
「相殺するわ!はっぱカッター!」
「甘いぜズバットさんよぉ!電磁波っ!」
「ひのこ!」
さっきのカラナクシ戦でオレは電磁波を一応覚えた。
「みんな離れて!ボクが決める!」
「しゃーないな…チコ、フーコ、下がって!」
「はいはい。」
カケルは何を思いついたんだろ。しかしゴンベに決め技はあるか?カケルを信じよう。
「弱虫チームが!しかも1匹で俺らに勝てるわけねぇーんだよ!エアスラッシュ!」
「同意だぜ!ヘドロ爆弾!」
「馬鹿にするなあ!指をふる!」
「なっ…指をふるだと…」
「カケルは運にかけたのか…さて、その運は?」
「くらえ聖なる炎だっ!」
「ぐおあ!!」
…指をふるで出た技は聖なる炎。とあるポケモンの専用技だがのちのち触れていく。
「さて…欠片を返しなさい!」
「ケッ…こ、こんなもん最初からいらねぇーんだよ!」
黒焦げになったクリスは遺跡の欠片を投げた。
「覚えてろ!」
よくありそうな捨て台詞を言って2人は去っていった。いらないなら取るなよ。
「ふぁあ〜…おはよ。あれ?あの2人は?」
「お前が寝てる間に片付けたよ。」
「むぅ…ボクも戦いたかったなあ。」
「普段は逃げてばかりいるくせに…」
「なんだとぉ?」
「まあまあ。まずは外へ…出ようぜ。」
「そだね」
マルとフーコの喧嘩を抑えて外に出ることにした。
海岸
「…それで改めてお願い。一緒に探検隊やってくれる?一緒ならできそうな気がするんだよ。」
「まあ…さっきもOKしたし。いいぜ。」
「頑張りましょう。」
「これからよろしくね。探検隊になるためにはギルドで修行しないといけないんだ。だからいますぐ近くにあるプクリンのギルドに入門しよう。」
「わかったぜ。いこう!」
これから先どんなことがあるんだ?ワクワクするぜ!
ショウたちはこれが長い長い冒険の始まりとは知らずにギルドに向かうのだった。