橙宝玉の試練
「それじゃ…バトルスタート!」
シオンの一言でヒショウとホテリは礼をした。ヒョウガとセハルも礼を返した。2対2の試合が始まろうとしている。
「容赦はしないぞ! とびげり!」
「こ、こごえるかぜ!」
ヒショウが軽やかに飛びヒョウガに迫る。ヒョウガは慌てて冷気を風に乗せて飛ばし、その間に飛び蹴りの命中範囲から脱出した。
「今だ、ホテリ!」
「ああ! ほのおのキバ!」
「俺を忘れてもらっちゃ困るよ! でんげきは!」
ヒショウが着地しながらホテリに声をかける。彼女は既にヒョウガへ炎を纏った牙で噛み付こうとしていた。すかさずセハルがでんげきはを繰り出しホテリを遠ざける。
「ありがとうセハル…助かったよ。」
「これくらい夜飯前さ。さあ、2人を倒してメシを食おうぜ!」
「ああ!」
「さてと……かげぶんしん!」
「な、なにっ!?」
セハルが素早く動き影分身をしてヒショウとホテリを囲んだ。2人は背後を互いに預けて態勢をとる。
「どこからだ……?」
「かぎわける…イカ焼きの匂い…!? そこだ! ふいうち!」
「うぐぅ…!」
ホテリの不意打ちが決まりセハルが吹っ飛ばされる。イカ焼きの匂いが仇になってしまったようだ。
「なんとかなったか……あとは……!」
「なんだか寒気がする……! まさか!」
ホテリがセハルにダメージが入っているのを確認して、ヒョウガに攻撃しようと探すとヒショウの真後ろにれいとうビームを溜めたヒョウガが待ち構えている。
「そのまさかだ!! れいとうビーム!」
「くっ、ここまでか!?」
「ヒショウ!」
ヒショウは氷の眩しさに目を瞑った。だけど彼は凍らなかった。ホテリが彼の前に立って塞いだからだ。ホテリは氷漬けになって戦闘不能になってシオンの部下たちに場外へと出された。
残るはヒショウ1人。勝てるかもしれない。ヒョウガはそう考えていた。
「ホテリ……。」
ヒショウは小さく呟いた。そして彼の身体が白い光に包まれて変身した。
「アイタタ…グラエナの方は倒したけど……厄介な方が残ったね〜…」
傷をお腹を押さえながらセハルがやってきた。
「ホテリの分も……俺が戦うぞ……! さあ! 俺を倒してみろ!」
ヒショウはそう言うと軽やかにヒョウガに近寄り拳を突き出す。ヒョウガは避けるだけで精一杯という顔をしている。
「爆裂拳!」
「うおっと!」
「錯乱拳!」
「攻撃が速すぎて当たりそうだ……」
「今助ける! でんじは!」
目にも留まらぬ速さでパンチが繰り出されている中、ヒョウガはなんとか避けている。息も絶え絶えになりながら。セハルがすかさずでんじはをヒショウへ繰り出す。
「うっ……」
命中したのか彼の腕や脚はピクピクと痙攣したかのようになり動きが鈍くなり片膝をつく。
「決めるぞ!」
「ああ!」
セハルがでんげきはを溜めて、ヒョウガはれいとうビームを溜める。2人の全力が合わさってヒショウへ繰り出される。
「いっけぇえええええ!!!!」
ヒショウは吹っ飛ばされて倒れた。シオンが前に出てきて首を振った。そして微笑んで言った。
「勇者よ…おめでとう。よく倒したわね。」
「か、勝ったんだ…僕達は……。」
「えぇ! 凄いことよ! 私の従者の2人を倒すなんて!」
「2人とも強かったよ……いてて…」
セハルが鳩尾を押さえながらしゃがみこむ。鳩尾は少し赤くなっている。ヒショウとホテリのコンビの攻撃をもろに受けてそれでも立ち上がっていた。無理もない。
「とりあえず応急処置をするわね。」
「あ、ありがとなー!」
「ありがとうございます。」
「それでは……」
セハルとヒョウガの応急処置を終わらせ、威厳のある声でシオンが言う。
「勇者ヒョウガ、セハルよ。そなたたちにトワイライトランドの宝……橙の宝玉を授けます。再び平和が訪れることを……私は願ってます。」
ヒョウガは橙の宝玉をぎゅっと握りしめた。そして「ありがとうございます」と言った。
『これからあの穴は広がるわ。それまでになんとかして宝玉を集めるのよ。』シオンの言葉を胸に刻みヒョウガ達はボーダーシティに戻るのだった。