一つ目の宝玉
その頃…宮殿の王の間で…
「ふふふ…キナイよ。追い詰めたぞ。」
「逃がしてはくれんようだな。仕方ない…国王直々に戦わせてもらう!」
「それを待っていた! キナイ! お前を潰す!」
「やれるもんならやってみろよ…ブレイズ!」
王の間で対峙しているのはキナイというリザードンとブレイズと呼ばれるバシャーモだ。キナイは両腕に宝石をつけている。マッハは右腕に宝石をつけている。そして2人は同時に言った。
「「行くぞ! メガ進化!」」
メガ進化のパワーに宮殿の砂埃が舞う。それが晴れると同時にブレイズは技を繰り出した。
「雷パンチ!」
「甘いんだよ…ドラゴンクロー!」
「うっ…くそっ! 龍王形態かよ!」
キナイはブレイズの雷パンチを龍の爪で容易く打ち返す。
龍王形態…巷ではメガリザードンXと呼ばれているやつだ。
「やっぱりメガ進化が二つあると分が悪いな…」
「のんびりしていて平気かな? 燕返し!」
「まあいいか。まもる!」
「まだまだ! 燕返し!」
「遅い! チェックメイトだ! 馬鹿力!」
ブレイズの馬鹿力がキナイに命中。キナイはそのまま落ちた。
「加速……忘れていた。」
「もらっていくぞ。赤の宝玉を!」
ブレイズが赤の宝玉を取りに奥へ行こうとするとキナイは突然笑いはじめた。
「ふっ…ふふふっ…」
「な、何がおかしい!」
「俺はただの足止め役。王子さえ逃がせれば…」
そう言うとキナイは力尽きた。ブレイズは苛立ちを隠せずに舌打ちをして王の間から出たのだった。赤の宝玉は王子が持っている…マッハは王子を倒しに向かう。
ブレイズがいなくなった王の間に誰かが現れた。それにキナイは声をかけた。
「甘いな…あいつは。ところでシノビよ。ツヅラは逃がせたか?」
「ええ。ミヤビとコヨミの所へ…」
「なら良かった…」
「キナイ殿! キナイ殿! 寝ているだけですか…」
シノビと呼ばれたのはゲッコウガ。シノビはツヅラが逃がせたと聞いて安心して寝てしまったキナイに呆れていた。
走り続けてヒョウガ達はようやく宮殿に辿りついた。
「ヒョウガ! あそこに!」
モモが指さす方にはデンリュウ_______おそらくミヤビだろう。誰かをかばうようにして戦っている。
「飛び膝蹴り!」
バシャーモ_______ブレイズが飛び膝蹴りをデンリュウに決めた。苦悶の表情を浮かべデンリュウは血を吐いて倒れた。
「ツヅラ様…すみませぬ…ぐっ…」
「ちょろいな。さあ、王子。宝玉を渡しな!」
「誰が渡すか! これは勇者が取りに来る物だ。」
「俺が勇者だったとしたらどうする?」
「……。」
「今だっ! いただこう!」
「……」
ブレイズが赤い宝玉を取ろうとツヅラに触れた瞬間、消えた。
「ど、どこだ!?」
「ここだ! あなをほる!」
「ぐっ…このガキ…!! 許さん! ブレイブバード!」
どうやら影分身をして撹乱しそれで穴を掘って攻撃したのだろう。ブレイズは頭から湯気を出して起こっている。
「危ない! 助けに行こう!」
「うん!」
コトをミヤビの方に向かわせてヒョウガ達3人はツヅラとブレイズの方に向かう。
ツヅラの前にクロは身を投げ出しブレイブバードを受けた。
「ちっ! 邪魔するな!」
「サイコキネシス!」
クロに飛び膝蹴りをしようとしたがモモのサイコキネシスで飛ばされた。ボロボロになった彼は言った。
「…俺はブレイズ・マッハ。この借りは次に返すからな! さらばだ!」
ブレイズと名乗るバシャーモは突風の如く去っていった。
「ありがとう…君たちは?」
リザードの彼は言った。ヒョウガ達は自己紹介すると納得したように頷いた。
「そうか君が…勇者か。僕は大和 葛籠。ここの国の王子だよ。」
「王子!?」
「うん。それで君にこの宝玉を授けようと思う。王の間まで行こう。ミヤビは平気か?」
「コトがみています。」
「こ、コトが!?」
このリザードはツヅラといってこの国の王子らしい。コトのことを聞くと彼女の方に走っていく。
「コト! 大丈夫だった?」
「ええ。ヒョウガさん達が助けてくれましたから。」
「良かった…ところでミヤビは?」
先程のブレイズとの戦いで血を吐いたミヤビをツヅラは不安そうにみながらコトに聞いた。
「もう…ダメかもしれません……」
「えっ……? 」
「おい…勝手に……殺すんじゃない。まだ……まだ…死んでない…最期に王に会わせて欲しい」
その言葉を聞きヒョウガ、クロ、モモ、コト、ツヅラはミヤビを運んで王の間へと運ぶ。
瀕死のミヤビを王の間まで運んで連れていくとそこにはリザードンとゲッコウガがいた。そしてミヤビを見るなり駆け寄ってきた。
「ミヤビ!」
「ミヤビ殿!」
「ついに…勇者が来たんですよ。もっと喜んでください! 私は王子を守ることができた…それだけで…。キナイ様、勇者に宝玉を渡して……」
掠れた声でミヤビはそう言うと生き絶えた。その顔はとても安らかだった。
「そうか…グレイシアの君が勇者か。」
キナイはヒョウガ達を一瞥するとそう言った。
「はい。」
「私がこの国の王。大和 喜内だ。そして、隣にいるのがゲッコウガの月光 忍だ。」
リザードンのキナイはヒョウガの目をまっすぐ見つめて言った。
ゲッコウガのシノビはゆっくりお辞儀をした。
「さあ、ヒョウガよ。受け取るがいい。」
そう言ってキナイは赤い宝玉をヒョウガに渡した。ヒョウガは恭しくそれを受け取った。
(これで1つ目だ)
そうヒョウガは心の中で思った。
「ミヤビの死は無駄にはしない…これから国を作り直していく…。ミヤビよ……安らかに眠れ………」
そうキナイは言いました。
宝玉を手にした3人はミヤビの死に哀しみながらもボーダーシティに戻るのでした。