最初の宝玉、最初の扉
「ヒョウガが…勇者?」
「そうじゃ。古文書にはそう書かれておった…。ヒョウガよ…世界を救っておくれ…」
「ちょっ…いきなり言われても何をすればいいのか…」
「これを集めるのじゃ」
ヒョウガはわけがわからないという顔をしている。するとヌルがどこからともなく白い宝玉を取り出した。
「これをこの街のあちこちにある台座に納めれば次の宝玉へと導く扉が狭間の塔のいちばん上に現れるのじゃ。」
ヌルはこの街のシンボルの塔をさしながら続けて言う。
「…わかりました。できる限り頑張ります!」
「おお! よく言ってくれた。この宝玉は大聖堂にある台座に納めるのじゃ。」
「はい!」
ヒョウガはヌルから白の宝玉を受け取った。
「ヒョウガ。私も連れていって! 弟を捜す手がかりを掴みたいの!」
「なんかの縁だ。俺も連れていってくれ。頼む」
モモとクロは必死に頼んでいる。弟を捜すために…。クロはヒョウガ1人じゃ心配なのかついて行きたいみたいだ。
「いいよ。よろしくね。クロ、モモ。」
そんな2人にヒョウガはいいよと言った。ひとりじゃ心細いとヒョウガは思っていたから。
「聖堂は街の北にあるからの。ちなみにワシの家は塔の近くじゃ。帰って古文書の解読をせんとな…」
そう言ってヌルは尾びれを揺らしながら戻っていった。
「私達は大聖堂に行きましょ」
「そうだな。」
そうしてヒョウガ達3人は大聖堂へと向かうことになった。
大聖堂
大聖堂の大広間に台座はあった。その前には誰かがいるみたいだ。献花を整えている。よく見るとモモと同じ種族のエーフィだ。
「あの…」
「誰ですかな?」
「…僕はヒョウガです。」
ヒョウガに続きモモとクロも挨拶した。そして宝玉を納めることも話した。
「そうでしたか…さっきの揺れは滅亡への第一歩ですか…どうぞ台座に宝玉を納めください。私はクリス・チュン。ここの神父です。」
一通りの事情を話すと神父のエーフィ、クリスは納得し、それから恭しくヒョウガ達に頭を下げこう言った。
「ここにおけばいいのかな? 」
ヒョウガは台座に白の宝玉を納めた。するとまばゆい光が宝玉から溢れ…しばらくするとおさまった。
「これで扉が現れたはず…行きましょう!」
「クリスさん。ありがとうございました!」
そうヒョウガは言うとモモとクロと共に狭間の塔へ向かった。
「あなたがたの旅に幸多かれ…と祈っております」
誰もいなくなった大聖堂の大広間にはクリスのその声のみが響いた。
狭間の塔
「おお…きたか」
ヒョウガ達が狭間の塔の頂上に来るとヌルは待っていたかのようにそこにいた。ヌルの近くには赤い扉があった。
「ヌル。この扉がそうなんだね?」
ヒョウガは赤い扉を見て言う。
「そうじゃ…この扉が別の世界へと繋がっておるんじゃよ。1度入ったらここには戻ってこれんかもしれん。」
「まじかよ…」
ヌルの言葉にクロが呆気にとられたようだ。
「だが、戻ってこれるようにこれをやろう」
ヌルは青い玉をヒョウガに渡した。
「これ…は?」
「これはあなぬけのたま。普通のものとは違って何回使っても壊れない。どんな場所でも使えばここに戻ってこられる優れものじゃよ」
「科学の力ってすげー!」
クロは驚きのあまりそう言った。あなぬけのたまは扉の先の世界からこの街に戻ってこれるという優れものだ。
「それじゃ行ってきます!」
「レッツゴー!」
「気をつけるんじゃぞ!」
ヌルの声を聞きつつヒョウガ達は赤の扉の先へと向かうのでした。