1 迷いに迷ったその先で
迷いの森だなんて、名前だけでしょ。
入り口と出口は絶対あるって話だから、まあ大丈夫だよね。
・・・甘かったボクを許してください。
光が差し込む獣道を、ボクはゆっくりと、これからどうなるんだろうと絶望しながら、いやむしろ絶望に思考停止しながら、歩いていた。
冒険したかったんだ。
まだ早いって、救助隊や探検隊にならなきゃいけないって。そう、思ってたけど。
だめだよ。
そんなので、どきどきやわくわくは押さえられないんだ。
でもだめでした早かったです救助隊や探検隊になんなきゃいけなかったですすみません。
「うん・・・ここどこだろ。」
すこし広い場所に出た。
真っ昼間の光が踊っていようが、生い茂る木々の奥は真っ暗。
ボクの心も真っ暗。
目線を遠くに泳がせる。
誰かいないかなー、なんて思って・・・。
・・・思って・・・。
「ーーー!!」
いたー!
倒れてるけど!
・・・倒れてるけど?
って倒れてるーーー!!!
* * *
「あ・・・起きた!君倒れてたんだよ。大丈夫?」
目をさました。
はじめに見えたのは、ひたすら自己主張してくるはっきりとした空の青だった。
その中にひときわ目立つ青が一つ。
いや、一匹といった方が正しいか。
なぜなら、それがリオルだっから―――。
「ってリオル!?」
「わ!ど、どうしたの?急に起き上がって!」
しゃべってる・・・!?
私の手持ちにしゃべるリオルはいな・・・。
そこまで考え、私はハッと気がついた。
私の・・・手持ち?
どのこを持ってたっけ。
種族はなんだっけ。
誰と戦った?
誰に勝ったパーティ?誰に負けたパーティ?
誰だっけ。
ふと、空の青がにじんでみえにくくった。
ほっぺたを水がおちていって、でも、なぜか思い出せ無くって。
「どうしたの・・・!?涙なんか!」
リオルの声が遠くに聞こえる。
ああ。
誰だっけ、私。
「あ・・・ああ、怖かった?よね。君、イーブイでしょ?知らない場所で倒れたんだもんねぇ・・・。」
リオルにそう言われて、我にかえった。
その言葉を聞いて、私が人間でなくなっていることを知った。
イー・・・ブイ?
「ボクはカエン!火炎のカエンだよ。ほら、勇ましくて、堂々とした!」
リオル、もといカエンは、パッと笑顔を咲かせて、自己紹介。
これは私も名乗らなきゃ失礼だよね。待ってるし。
「・・・シズク・・・。かな?」
「なんで疑問系?」
うっ、いたいとこつかれた!
まだ名前聞いただけだけど。
まあ、事情が話せるポケモン、カエンしかいなさそうだし・・・。
―――私が、もと人間だって事。