11.Start
カントーのとある邸宅。広いバルコニーは煙に包まれ、ぷかぷかと浮かぶドガース達から執拗に攻撃が放たれる。とにかく数が多く、捌き切れないでいた。
「ちっ、多いな!」
攻撃を外してしまったヘルガーに次の指示を与えつつ、ユウマが毒づく。
「ユウマと僕で片付ける。君は2階へ上がってくれ。そちらから侵入されるかもしれない」
ウィンディに攻撃を躱す指示を出しつつ、ハルキが一人の女性に言う。
「分かった!」
指示を出された女性が駆け出す。階段に到達したあたりでボールを投げ、
「クロバット、きりばらい!」
ドガースの出した煙が、クロバットの忙しない翼の動きで晴れていく。視界が良好になったおかげで、ユウマのヘルガーとハルキのウィンディがドガースに対して正確に攻撃を当てられるようになった。それを確認し、階段を駆け上がる。
ほとんど直感で一つのドアを開け、もう一つのボールを投げる。
「ランターン、でんじは!」
「マタドガス、まもるだ」
飛散したガラスの上に立つ誰かに対してでんじはを放つよう女性が指示するのと同時に、そこに男の声が割り込んだ。相手を一時的に拘束できる電気の波は、マタドガスの作り出した透明な膜に遮られて方々に散る。その邸宅への侵入者を取り押さえることに失敗しながらも、女性はその顔に力強い笑みを浮かべた。
侵入者も同じくだった。
「フフフ、よく私が侵入する場所を当ててみせたな。感服だよ」
「それほどでもないけど。分かりやすいし」
「ハッハッハッ! 流石は噂に名高いコガネ署のホープだな」
「喧嘩ばかりでロクに成果を上げられないけれど、腕は確かな先輩たちのもとで警官になるためにみっちりしごいてもらったから。――さて、」
お互いがお互いに、指を突きつけ合う。
「煙の怪盗! 器物損壊、住居侵入、公務執行妨害の容疑で逮捕する! 今日こそお縄に付いてもらいます!」
「いいだろう、私を捕まえてみるがいい! コガネ署の新人、ヒナ巡査!」
物語の終わりは、巣立ちの時。
そして、新たな物語の始まり。