10.Disposal
「で、また取り逃がしてしまったわけね」
「……」
アオイに睨まれる、ハルキとユウマ。ユウマがぼそりと、
「それならチヒロも同罪じゃねえのかよ……」
「あの子には、ヒナちゃんの身の回りのことについて立て込んでいるから。それにあなたたちって私に説教されるためにいるようなものじゃない?」
歯を見せて笑うアオイに、呆れ声でハルキが、
「随分と理不尽ですね」
「ま、3割冗談だから。それよりも――」
7割本気なのかよ、とツッコミを浴びせようとする二人に、アオイは質問を投げかけた。
「で、どう? これからもやっぱりコンビ組んで煙の怪盗を追う? 望むなら別々の部署に配属してもいいわよ? なんだかんだ言って二人とも優秀だから、もしそうなら引き取りたいっていう部署は名乗り出てるし」
いきなりの提案に、戸惑う二人。
二人の視線が交差するが、今回は火花は散らなかった。
そして。
「まあ、思い切りの悪いハルキのことだ。他の部署に移るにしてもどうせグズグズするんだろうし、本当は嫌だが組んでやってもいいぜ?」
「こちらのセリフだな。目をつぶったまま突進するケンタロスのような君には僕のような枷が必要だろう。嫌で堪らないが、仕方ないから組んでやる」
「んだとぉ!?」
「やるか!?」
結局睨み合うことになる二人を見て、アオイが苦笑交じりに、
「やっぱり二人を組ませて、正解だったのかしらね」
と呟いた。
ヒナとチヒロは、ヒナが今までいた孤児院を後にした。
ここから出るということで、最後の別れを言いに来たのだった。
「ねえヒナちゃん、やっぱり寂しい?」
チヒロが車を運転しながら、助手席のヒナに問いかける。
しばらくの逡巡を思わせる間の後に、
「ちょっと、さみしいかも。今までお世話になったことは間違いないから。――でも、思い残すことはもうない、かな」
「でもね、たまには顔を出してあげなよ? 他の子が寂しそうな顔をしていたのは、たぶん演技じゃないはずだからね」
「……うん!」
吹っ切れた様子で、ヒナは力強い返事をした。