1.Fault
今週の成果はフレンドリィショップ強盗1人、空き巣2人と万引き犯5人。
それともう一つ。
「だあああああっ、また逃げられた!」
月光の僅かに差し込むコガネの裏路地に、男の悔しがる声が響いた。後ろから追ってきたもう一人の男が冷徹に言い放つ。
「何度同じ失敗を繰り返せば君は気が済むんだ? ユウマ」
「んだとハルキィ! もとはと言えばお前のせいだろうが! だいたいお前はいつもいつも」
「そうやってすぐ感情的になるからコソ泥の一人捕まえられないんだろう。原因は君――」
「みずでっぽう、お願い」
男二人が喧嘩寸前にまでヒートアップしているところに少女の凛とした声が響いたかと思えば、次の瞬間にはそこは水浸しになっていた。みずでっぽうを命じた少女が1体のランターンを伴って二人の男に近づく。紫の長髪が風になびいて揺れた。
「まったく……大の大人が二人して何やってるんですか。いい加減頭を冷やしてください」
「……冷えたのは頭だけじゃねえんだが。どーすんだこれ」
荒っぽい口調のほう――ユウマが、自分の濡れた服を摘まみながらぼやく。
「止めてくれたことには感謝するが、差し出がましい真似はやめておけ。巻き込まれても僕は知らないぞ」
厳格な口調のほう――ハルキは地面に落ちたメガネの泥を払いつつ、少女を鋭い目で見据えて警告する。
それを聞いた少女はため息をひとつ漏らし、れいとうビームよりも冷たくミサイルばりよりも刺さる一言を躊躇いなく放ってよこした。
とびっきりの侮蔑を含めた声と、ありったけの侮蔑を込めた目で。
「警察のメンツは台無しですね。喧嘩ばかりで盗人一人捕まえられないお二人のせいで」
「……ぐっ」
「……」
そう。もう一つの成果とは、この14、5歳とみられる、一人の少女のことだ。