どくけし
「どうして僕をだましたんだよ!」
声を上げたところで、この事態が好転するわけではない。
草むらでのビードルとの戦闘を終えた後のオタチは、ひどくぐったりしている。呼びかけても揺さぶっても応じてくれる様子がない。眠ったようにじっと動かず、閉じた瞼は開く様子がない。取り急ぎ携帯電話で家にコールしたら叔父が出て、5分後にはすぐに駆けつけてきた。
最寄りのポケモンセンターまで並走する叔父に怒りをぶつければ、
「あの言葉を真に受けるなんて誰が思うかよ!」
苛立ちを含んだ声色でそう返された。二日前くらいから僕の住んでる街でのフィールドワークだとかで、その間家に泊めてくれと言って居座っていた大学教授。毎晩お酒を飲んでは僕に絡んでくるので、正直鬱陶しい叔父ではあったが、気さくで人当たりの良いその性格から嫌いになれなかった。お小遣いもくれるし。
「フレンドリィショップでそんなもの売ってるなんて知らなかったわ俺は……」
自分の研究室でキズぐすりなどは調製できてしまうために、フレンドリィショップなどによることはない叔父にとって、今しがたオタチに飲ませたものがショップに置いてあることなど、確かに知りようもなかっただろう。
けれどこればかりは、叔父の言い方が悪いのだ。
「おじさん、昨晩言ってたじゃないか! 『酒は人生の消毒剤だ』って! 『消毒』だからどく状態のポケモンが治るって思っちゃうじゃないか!」