第五十九話:三つ目の前
あいつに会ってから、すでに一月経っている。だが、まだ情報が上手く整理できていない。
俺たちはあの時、あの場所にて別れた。
あいつらと別れて、俺は正直、流れるままに行動した。必死だった。あいつらの成功を祈ってはいたが、状況はまるきり分からなかった。
だから、過去へと行ったとき、登りゆく太陽を見て、二つの可能性を考えた。はっきりしなかったのだ。あいつらに会い、状況を確かめたいと思った。だが、あいつらに会う前に、俺はこの世界が、さらに複雑な状況におかれていることに気づいた。
頭がどうにかなりそうだった。意味がわからない。とりあえず、時の歯車をとる必要があった。
チコと会って、いくらか情報の交換ができた。気がつけば海岸にいたらしきチコも、最初は何がなんだか分からなかったらしい。海岸では、なぜかメアリーがいて、彼女の前には、ピカチュウがいた。見覚えのないそいつは、メアリーとチームを組み、探検隊を始めたらしい。
訳がわからない。彼女もそう言っていた。
だが、彼女は独自に文献をあさり、ある可能性を調べていたらしい。その可能性について聞かされたとき、俺もそれだと思った。
おそらく、恐ろしい敵が背後にいる。
俺達が今まで敵だと思っていた者たち、そいつらを影で操っていたような、恐ろしい敵が。正体すらも分からないが、確実にいる。そして今も、そいつの計画は進行しているのだろう。
なら、俺達はどうすれば良いのか。
チコが出してきた提案は、根本的には同じだった。俺は時の歯車を集め続け、チコは背後の敵について探る。
接触は、月が満ち、そしてまた欠けた日の翌日の朝。その日に俺達は会うことに決めていた。今の月の調子だと、おそらく、接触の日は数日後になる。
次の時の歯車は、霧の湖。前の二つとはちがい、今度は番人としてユクシーがいる。奴の目を掻い潜りながら時の歯車を得るのが正攻法。…やってのける自信はあるが、チコのやつは、次の接触まで待ってほしいと言った。急ぐべきだと思ってはいたが、チコの考えに俺も乗ることにした。
さざ波の、音が聞こえる。
サメハダ岩の中は、相変わらず涼しいままだ。 追っ手の足音も聞こえてこない。
俺は藁の毛布にくるまって、ひっそりと眠りを迎えた。